色々考えた結果、表舞台に立つ上での【X】はアモンに任せることとなった。
俺の正体について知っているのはこの城に攻め込んできたCランカーのギルド員達と十二月の6人のみ。
そこからの情報の漏れもないだろう。
十二月は既にアモンの元で厳重な情報規制をかけているから問題ないし、万が一Cランカーの面々が漏らしたらすぐにその犯人が分かるわけで...そんなリスクは犯さないだろうということでの決定だった。
そうして、俺はセバちゃんに潜入任務をお願いするのであった。
◇とある一室
アインちゃんとリベルは地下で魔法の練習している間に、俺はセバちゃんとナーベを呼んでいた。
ちなみにセバちゃんにはナーベについて、今後、第一妃兼参謀役を勤めてもらうということで、こういった話し合いの場になったと説明していた。
「...つまり、セバスさんをボヘミア国に潜入させるってこと?」
「まぁーそゆこと。目的は城下町の暮らしについての、新しい王...つまりは俺へのヘイトの調査、並びに新たな十二月のメンバーにセバちゃんの悪魔を6人をボヘミア国に運ぶという任務をお願いしたい」
「...なるほど。確かに三将官についてはいまだに不明なまま...。それに他国への警戒を含めて、戦力の増強は必須ですね。しかし、ボヘミア国の平民のヘイトについてはあまり気にしなくても良いかと。貴族が溜め込んでいた資産の大半をばら撒きましたから。生活に困窮しているとは思えませんが」
「いーや、その分配についてだが、一部の人間が独占してるらしいんだよ。はっきり言うと奴隷商人どもがな。そういうのも含めてお願いしたいんだよ。いつだって、紙ペラに書いてある実態と実際に目にした実態に乖離は存在する物だからな。んで、ここに呼んだのはそのお願いと連れて行く6人の悪魔の選定についてだな」
「...なるほど」
「そうですね...候補としてはまずはグシオン(11位)ですかね。敵対している人間の気持ちを友好的なものに変える能力を持っているので、戦場では大いに役立つかと。あとは、バティン(18位)とか...薬草や宝石の知識がありますし、何より悪魔の中で最も愛想がいい。上に立つ物の資質はあるかと」
すると、ナーベと紙に書かれた悪魔の一覧表を見て「それなら、ファラス(31位)もいいかもね。石や薬草の知識にの他に占いや修辞学にも詳しいし、透明人間にさせる能力も普通の兵士に使うだけで必殺級の力を発揮すると思うけど」
「...ファラス...。確かにいいかもな。おっ、流石参謀」
「...あなたに褒められるとなんかちょっとムカつくわね」
「ひどっ!?じゃあ、どうすればいいんだよ」
「あなたは私の肩でも揉んでればいいのよ」
「...話を進めても?」
「「はい...」」
「ファラスは私も賛成です。ガープ(33位)ですかね。戦争を起こすことも平和にすることもできる能力は強力かと。あとはマルコシアス(35位)は悪魔に珍しく嘘はつきませんし、戦術や兵法にも明るいですね」
「...なるほどねー。んじゃ、あと1人か。治癒能力持ちがいると助かるから...おっ、サブナク(43位)とかいいじゃん。築城能力がある上に仲間の傷を癒しつつ、相手の傷の治りを悪くするって、戦場ではめちゃくちゃ有効じゃね?」
「そうね。仲間が全員傷だらけなら戦意を失わせることもできるでしょうし」
「んじゃ、この6人を連れて行ってきてくれ。問題が有りそうなら逐一報告をおね。セバちゃんはひとまず1ヶ月くらいの潜伏でよろ」
「その間、おぼっちゃまのお世話は誰がするのですか?」
「...まぁ、そうだな...メイドさん達に頑張ってもらうよ」
「というか、いい大人が服は脱ぎっぱなし、1日の大半はベッドの上で生活、場合によっては食事を食べさせるなんて...。これを機に少し自立することね」
「うぇえええ!辛辣!!」
「...当たり前でしょ。全く...」
「それでは私は準備に取り掛かります」
「おう。頼むぜ?」
「もちろんです」
そうして、部屋を出ていくセバちゃんであった。
「...一つ聞きたいのだけれど、悪魔に寝首をかかれるなんてことないでしょうね?」
「というと?」
「いくらセバスさんが強いからと言っても、歳が歳でしょ?悪魔は年齢なんてないし、老いるとか弱くなるなんてことはないわけじゃない。となると、いつかその力のバランスが逆転してとか...そういう可能性はないのかしら?」
「あるだろうな。というかそれは、本人が一番理解していると思ってる。昔は俺よりはるかに強かったセバちゃんも俺より少し弱いくらいになってるだろうからな」
「じゃあ、危険じゃないの?悪魔をポンポン出すのって」
「だからこそ、具現化させる悪魔は基本的に10体までと決めてる。十二月についてもあくまで暫定として定めているだけだからな。いい人が見つかればすぐに羊に戻してもらうよ」
「...そう」
「心配か?」
「当たり前でしょ。もし、セバスさんがいなくなったら...ね」