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第16話 魔法講座

 魔法適正の確認の結果、アインの得意魔法は回復魔法であることが分かった。


 あの世界では攻撃魔法を使っていたが...適正外の魔法を使っていたってことだったのか。


「...回復ですか」


「うむ。そのようじゃな。ちなみにわしは支援魔法系じゃが、回復魔法と支援魔法は相性がいいからの。それなりに教えられることもあるかと思う」


 先生にこのマッドさんを選んだのは正解だったな。

おじいちゃんなだけに知識も豊富だし、現在の状況についても冷静に判断できている。

妙な企てをするようにも見えないし、何よりアインちゃんとの相性はよさそうだ。


 そんな様子を少し離れた位置から眺めていた。


「あっら~、もしかしてアインを取られて元気なくしちゃった~?」と、煽ってくるリベル。


「おう。元気なくなっちまった。てことでフ〇ラして慰めてくれ」


「ば、バッカじゃないの!?!?//」


「...おい、リベル。お前またあの部屋に入ったな?この前は『なにそれ?』とかいってたくせに...。もしかして、リベルってむっつりなの?」


「ち、違うわ!妹たちが隙あればあそこの部屋に行こうとするから...み、見張っていた時に...ちらっと目に入っただけよ...//...それよりいいの?こんな離れちゃって。もし、この状況であの男がアインを人質に取ったらどうするのよ?」


「別に。その時は対処するだけだ。この城内であれば俺はいつでもだれでもヤれる自信があるからな。そういうときのためにあいつら一人一人にセバちゃんの子羊をつけてるんだよ」


「...ふーん。てか、あの羊って何なの?当たり前のように城にいるけど」


「ん?あぁ...悪魔」


「...はい?」


「ソロモン72柱って知ってるだろ?」


「...まぁ、そりゃ知ってるわよ。...ってそういうこと?でも、なんで羊?」


 ソロモン72柱とは、ソロモンが神の名のもとに使役したと言われる72体のことである。

そう、あの羊の中には悪魔が入っているのだ。


「知らないのか?ソロモンの父はダビデ。ダビデは羊飼いだったからな」


「...といっても神の羊なんて呼ばれているのに、その中に悪魔を閉じめているなんてなんとも皮肉な話」


「そうだなー」


 そうして、魔法の使い方を教えたところでその日はお開きとなった。


 アインちゃんとリベルをセバちゃんに任せて俺はマッドを部屋まで送っていた。


「...意外だったな。もう少し抵抗されるかと思った」


「抵抗?我々がそんな立場にないことくらいお主が一番わかっておろう」


「...いやまぁそうなんだけど。ほら、国の情報とかもみんなあっさり吐いたし...」


「今の時代、国のために命を懸けるものなどおらんよ。特にわがボヘミア国は貴族の権力が強い国じゃからな。今回だって、我々が名乗り出なければDランカーであろうと送り込もうとしていたからな。...我々と貴族たちの間に仲間のような絆も、家族のような温かみもない。どこまで行ってもドライな関係なんじゃよ」


「...そういうもんか」


「じゃからこそ、お主には驚かされたわ。貴族にもこういう人がいるんじゃなと...。奴隷を買っている地方貴族と聞いていたからどんな下衆野郎かと思えば...。全員が全員幸せそうにしているなんてな...。我が国の貴族どもに見せつけてやりたいくらいじゃ」


「でも、本当に俺が国に返すと思う?もしかしたら希望を与えて殺すつもりかもよ?」


「そういうことをするようには見えんがな。そうなっても我々には何かを言う資格はない。この幸せな時間を奪おうとした時点でな」


「...なぁ、マッドさんは国に帰りたいか?」


「帰る場所があそこしかないからな」


「じゃあ、もしここで雇いたいって言ったらどうする?アインちゃんの師匠として」


「...光栄な話じゃな」と、半笑いでそういうのだった。



 ◇ボヘミア国 緊急貴族会


「おいおい、あいつらからの連絡はまだかぁ?」


「想定外の戦力の可能性大ですね」


「想定外って...なんだ?殺人奴隷メイドでもいるってか?w」


「...ただいま情報が入りました。無事、城を占拠したとのことです。一度、帰還したいとのことですが、いかがいたしますか?」


「...そうだな。そこにいた人間は全員捉えたのか?」


「そのようです」


「であれば、全員をここに連れてこい。女は遊びつくして男は打ち首だ」


「...かしこまりました。そのように伝えます」

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