「...なぁ、あの噂知ってるか?」
「噂?あぁ、例の【X】についてか」
「そう。あの超高難易度のダンジョンを単独でクリア...したらしいんだけど。そん時に左腕に炎呪を受けたらしくてな」
「まじかよ。炎呪って一生消えることないんだろ。きっついな...おい。てか、なんでそんなこと知ってんだよ」
「それがダンジョンから帰ってきたやつが見たんだって。左腕に炎呪があったの」
「...けど、つまりそういうことだよな?」
「そう。左腕に炎呪があるやつが【X】ってことだ」
「...」
違う...今はXのことなんかより...ナーベのことだ。
一体どこに行っちまったんだよ...、ナーベ。
◇
目を覚ますと...そこには淫らな格好をしたナーベが寝ていた。
「...スー...スー」
改めてみると...本当にかわいいよな...。うん。すごく可愛い。
思わず頬をつつく。
すると、ゆっくりと目を開けてこう言った。
「普通、そういうって胸を触ったりするんじゃないの?」
「...起きてのかよ」
「起きてるわよ。結局、私に手を出してこないし。私の知っている限り、あの状況で手を出さない男は世界広しと言えどあなたくらいでしょうね」
「俺はそういうのは好きな人同士でしたいの」
「私のこと好きじゃないの?こんなにかわいいのに?私」
「そうだな。そんなに可愛いのに。容姿なんて言うのは人を好きになるうえで第三要素くらいじゃねーの?俺は好きになった人が可愛きゃ、なおラッキーくらいの考えなわけ。つまりは付加価値。絶対要素ではないんだよ。俺の中ではな」
「じゃあ、あなたにとっての絶対要素って何?」
「そんなの決まってんだろ。一緒にいて楽しいと思えるか...。その一択だろ」
「...私といて楽しくないの?」
「そうだな。まぁ、楽しいとは思う。隠し事とかせずにちゃんと話してくれたらな」
「...」
◇
「おぼっちゃま...いつまでゆっくりされているのですか?」
「え?何が?」
「...まさかお忘れではないですよね。本日は貴族会の日ですよ」
「...あっ...やっべー!!!そうだったー!!!なんで教えてくれなかったんだよ!セバちゃん!!」
「数日前にお伝えしておりましたが...」
「毎日言ってよ!俺、忘れっぽいの知ってるでしょ!」
貴族会...それは半年に1回行われる貴族の集まりである。
地方貴族の俺も当然参加しないといけなく、不参加になると貴族の称号もはく奪される大事な会なのである...。
「あっー!!やべー!!」と急いで着替えをするが、「おぼっちゃま...その恰好は前回の貴族会と同じ服装です」
「あー!!みすったー!!!これは!?」
「それは前々回のです...。まさか、新しい服を買っていないのですか?」
「そんな暇あったと思う!?」
「えぇ。ほぼ毎日ゴロゴロしてたので。その時間はあるかと」
「うぎいいいいいいいい!!!正論嫌い!!!!」
そうして、なんとかそれっぽい服装に着替える。
「これって私たちも参加するのかしら?」と、着替えている最中に部屋をのぞきに来る3人。
「っ!!//」と、俺のパンツ姿に赤面するアインちゃん。かわいい。
対照的にどこか苦笑したような顔でパンツ越しの俺の一物を見るリベル。
ナーベは一切表情を崩すことなく何事もないように話しているのだが...。
少しくらいリアクションしてくれてもいいのに...。
「まぁ、一応ナーベには来てもらうかな。リベルとアインちゃんはお留守番ってことで。今後はそういうのにも参加するかもだからドレスとか必要だったら用意するから」
「わかりました」「わかったわ」
「ところで貴族会って何するの?」
「別に。基本的には議会+ただのお茶会って感じだな。一応、議題みたいなのがあってそれぞれ適当に話し合ってその後は高級な茶菓子を楽しみながらあーでもないこーでもないいうだけ。基本的にはくそみたいな会だな」
「クソみたいって...」
「実際そうなんだから仕方ないだろ。俺だってできればあんなとこ行きたくないし。けど、貴族をはく奪されるのは困るからな」
「そう。地方貴族も結構大変なのね」
「まぁな」
こうして俺とナーベは二人で貴族会に出向くのだった。