「お帰りなさいませ、おぼっちゃま」
「...おう。セバちゃんか...」
目を覚ますと部屋の掃除をしているセバちゃんが目に入る。
「...朝からご苦労様」
「もう昼ですよ」
「...そっか」
「お疲れのようですね」
「...まぁな。ちゃんとダンジョン攻略は終わったから。またこれでしばらくは安泰だ」
「...お怪我...なさってますよね」
「...多少な。大した傷じゃない」
「...そうですか。あぁ、それとアイン様がぜひこの本をぼっちゃまに勧めたいとのことでした。こちらに置いておきますね」
「...おう」
「お疲れ様でした。今はゆっくりおやすみなさいませ」
◇
「...じゃあ、あの人...は私たちのためにダンジョンに潜ったってこと?」
「...そうね。本当...お人好しなんだから」
「けど、よかったわ。またこうして家族みんなで暮らせるのだもの。感謝しかないわ」
「...そうね」
「それでいつ式をあげるの?」
「はぁ!?//別に私とあいつは...そんなんじゃないから...」
「そんなじゃないって...あなたここに奥さんとして連れてこられたのよね?」
「そ、そうだけど...別にそういう話は聞いてないし...」
「そう。じゃあ今度詳しくお礼を含めて挨拶に行かないとね」
「そ、そういうのは私から伝えるからいいから!」と、慌てるリベルであった。
◇
次に目を覚ますと、隣にはナーベさんが座っていた。
「...びっくりした...」
「...はぁ...。あなたという人を誤解していたようね」
「...何の話ですか?」
「その腕...
「...ばれちゃったか。悪いけど、二人には「いわないわよ。特にリベルのほうにはね。責任感じちゃうかもしれないし。リベルにはダンジョン後の魔力切れとだけ伝えておくし、アインには単なる体調不良と伝えておく。せいぜいその腕を見られないように頑張りなさい」
「...面目ない」
「...今一度聞くわ。なぜ、あなたはこんなことをしているの?」
「...こんなことって?」
「執事やメイドも元奴隷の子ばかりでしょ。どうして、優秀な人ではなく奴隷の子達を集めているの?別にそういう悪趣味な性癖を持っているわけでもなさそうだし」
「...まぁ...なんだろうな。助けたい以外に特にないんだよ。きっと、今も俺の目が届かないところではひどいことが行われているはず。だから、せめて目が届く範囲くらい守ってあげたいだけなんだよ」
「...そう。優しいのね。あなた。けど、残念だけど私はそんな簡単に心を許す気はないわよ」
「...別に大丈夫だ。心を許してくれとは言う気はない。ただ、そばにいて...幸せそうに笑ってくれればな」
すると、俺の手をそっと握るナーベさん。
「...?」
「心は許さないけど、体は許してもいいわ」と、その手を彼女は胸にもっていく。
「ちょい...そういうのは...」
「いいんでしょ。私の好きにして?なら今は黙ってこうしていなさい」
そのまま、俺の腕をまくると優しく炎呪をなでる。
「...神のご加護を」
◇
それから数日は腕の痛みに慣れるまでしばらくベッドで横になっていた。
二人にはただの体調不良と伝えた。
そんな俺にアインは本の読み聞かせをしてくれたり、リベルは料理を食べさせてくれたり、ナーベは...色々としてくれたりと、みんなで俺を支えてくれた。
その甲斐もあり、1週間ほど経過するころにはだいぶ元気になっていた。
もちろん、呪いは消えることはないのでこのまま一生背負っていくのだが...。
その頃一方、あの最強冒険者【X】がまたSSSダンジョンを攻略した話でもちきりになっており、その正体についてある噂が立っていたのだった。