「このクエストを受けたいのだが」
「...こちらはSSSのクエストになりますが」
「そんなことは分かっている」と、金のプレートを見せる。
多分この子新人だな。
「...し、失礼しました。それでは受理いたします。いつ出発されますか?」
「今すぐに」
そうして俺はダンジョンに向かい歩き始めるとギルドのおっさんが話しかけてくる。
「おいおい、単独でSSSクエストだぁ?あんた、何者だ?」
「気安く話しかけるな」と、適当にあしらってダンジョンに降りようとすると、「おいおい、その口の聞き方はなんだ?」と言われる。
「...お前も誰に口聞いてるのか分かっているのか?」
【威圧の波動】
俺は正体を隠し、人々は俺を【X】と呼んでいた。
基本的なクエストは街の外にいる低級~中級のモンスター狩りか雑用などなど、もしくはダンジョンにいる上級~超上級のモンスター狩りの二択である。
幼い時から最強だった裏ボス悪役貴族の俺は低級のクエストを受け続け、信用を勝ち取り現在は超上級SSSのクエストも受けられるようになっていた。
そして、現在のクエスト成功確率は100%。つまりは今まで一度も途中帰還も失敗もしたことなどないのだ。
◇
ダンジョンに入るとその暑さに思わず息をするのも辛くなる。
確か火のモンスターだったか?
名前は【業火の龍】だったか。
SSSとランク付けされている時点で、容易く倒せる相手ではない。
最強と言っても無敵ではないのだ。
こちらの存在に気づいた龍が咆哮する。
「ギャオオオオオオオオ!!!」
「...さてとやるか」と、バフ魔法をかけて...その龍に斬りかかるのだった。
◇
「あれ...ラン様は?」と、部屋の前に立つ私にアイン様が話しかける。
「...おぼっちゃまは既に寝ております」
「...そうですか。...珍しいですね。この本をお勧めしようと思っていたのですが...」と、しょんぼりするアイン様。
「その本は私がラン様の部屋に置いておきますね」
「...分かりました。ラン様は...何であんなに優しいのですか?」
「私に聞かれても分かりませんが、ぼっちゃまは基本的に怠惰な人間です。しかし、奴隷市場の人達を助けたり、1人で色々と抱えてしまうお方なのです。もしよければ、そばにいてあげてくれたら私としても嬉しいです」
「...私なんかでよければ」
「えぇ。きっとそのことを伝えたら、おぼっちゃまも喜ぶと思います」
「...はい」と、私に本を渡すとそそくさと去っていっていくのだった。
「...無理だけはしないでくださいね。ぼっちゃま」
◇翌朝
ボロボロの状態で帰宅する。
流石にSSSクエスト、無傷どころか左腕に消えないやけどの呪いをかけられてしまった。
...ったく、厄介だな。
まぁ、痛みはさほどではないがずっと消えないとなるとメンタル的にキツさが残るな。
そうして、自室に向かっているとナーベさんとすれ違う。
「...あら、こんな朝から何をしてるの?」
「あっ、いや!ちょっと寝付けなくて散歩してまして...」
「徘徊...」
「そういう言い方にすると急に怪しくなるんで辞めてくれます?」
「はぁ。まぁ、私には関係ないけど。あなたがどこで何をしてようとね」
「...そうですよね」
2人と違い、ナーベさんは全く俺に靡く感じがしない。
そのまま彼女の横を通り、部屋に向かおうとすると、「腕どうかしたの?」と言われる。
「...あぁ、ちょっとかぶれちゃって」
「そう」
そう嘘をついて部屋のベッドに倒れ込むのだった。