次は、
ミルク (体液)回収をするかな。
家の前に置いていた
ガラガラ押しながら、
回収箱の所に置いておいた、
例えるなら、腐敗しきった、
濃厚で純白の液体に培養された内臓だ。
白い半透明の、とても薄い皮に包まれた、
ミルクと呼ばれるトロトロの白い液体。
そして、その中にある
それらが
綺麗な
かなり大きく、
縦横4m、高さ2mにもなる。
重い筈なのに、自重で潰れて、
皮膚が破れにくいと同時に伸縮しにくく、
形が変わりにくいからだ。
なので、皮膚は常に、
体液の重さによる強い圧力で
ピンっと張っている。
触ると中に液体が入ってるとは
思えない、固い感触がする。
回収箱の所に着いたので、
家の対角にいる
ここからでもはっきり見える。
家の2.3倍もの体積があるのだ。
そんな
細長い本体 (臓器)が、ぶら下がってる。
本体はまず、1番,上に、
しわくちゃの気持ち悪い塊があって、
そこから、下に白くて細い、
石の様な何かが伸びている。
それにくっつく形で、
袋みたいな何か、細長い管などがある。
別にそれらは見える訳じゃない。
本体は濃厚なミルクに隠れて見えない。
だから、知識として知っているだけだ。
また、穴や穴のある突起がない、
この
老廃物はどう出ていくのかと言うと、
皮膚に
皮膚から老廃物、
尿が
さて、
まず、
すると、機械を通して、
ミルクによって消化されて、
ミルクになるのだ。
そう、
栄養を本体に供給するだけでなく、
食べ物を消化する役目もあり、
そして、この機械にはまだ役目があって、
この機械に付いてる、
固い
川に繋がっている
海水が吸い上げられ、
これは...1KL、
注がなきゃいけないから、
重労働で、11分くらい時間がかかる。
大量の水分が必要なのだ。
もし、水分が不足したら、
体液の濃度、酸度が上昇して、
自分自身を溶かしてしまう。
~
手のひらが痛いし、
大胸筋が筋肉痛になりそうだ。
最後にこの機械を使って、
車輪付き
反対側に向かって、左側に蹴る。
ミルクはドロドロしてるから、
海水を注ぐよりも強い力がいるので
手では動かせなくて、
蹴って動かすしかないのだ。
左側に行ってを繰り返すから
疲れるというよりめんどくさい。
でも、
242Lくらいで、
注ぐ量が1KLの水やりより少ないから、
注ぐのに必要な
水やりより少ないだろう。
にしても...やっぱり、臭いな。
空気と混じり合い、
独特の匂いを巻き散らす。
ミルクは酷く生臭く、
濃厚な匂いがするのだ。
そして、1度,ミルクを
興味本位で少し舐めた事があるけど、
胃液に精液を混ぜた味がした。
勿論、飲んではいない。
精液の味を何で知っているかというと
......興味本位だ。
勿論、飲んではいない。
ミルクを
左側と右側を行ったり来たりする、
めんどくささと、
独特な匂いが嫌だけど、他にも足裏が
痛くなるという点も挙げられる。
2cm程度の厚みがある底の靴では
硬さが足に伝わってくるのだ。
~ミルクを
ミルクの入った、
車輪付き
川沿いの
ミルクは水よりも密度が高いから、
302.5kgくらいの重さがある。
その半分の重さだけど、
重い事に変わりはない。
88kgの人を
44kgの人を
重いし辛いのと同じ話だ。
302.5kgは
幾度も蹴って痛くなった足裏に
かかる負荷としては辛い重さなのだ。
すると、
パカっと割れ、
ヒダヒダした内壁を露出させる事で、
より、たくさんのミルクを摂取する。
キュゥゥっと高い音を出して、
ミルクを吸う。
要は両方、気持ち悪い。
次は、川に釣竿を設置する。
本当は最初にやっておくのだけど、
珍しく忘れていた。
空になった車輪付き
ガラガラと押しながら、
途中で
籠を拾って歩く。
籠と円柱容器は、今日は
もう使わないからしまうのだ。
車輪付き
回収箱の所に置き、
籠は物置に置く。
そして、物置の中にある、
立て掛けられた、
長さ5mの釣竿の真ん中を持ち、
それをそっと横にして、
釣竿を引きずって川へと向かう。
川は物置のすぐ近くだ。
物置の隣にある家が庭の角で、
家と川の幅は2m程度。
6mくらい歩けば川だ。
歩いてるとガリガリとした、
地面を釣竿が削る感触が
手に響き、耳に聞こえる。
やっぱり、釣竿は重いな。
労働は疲れる事が多い。
釣竿を川に持って来て、
川に平行になる様に釣竿を置く。
釣り糸は釣竿に対して
垂直に55本,巻き付いてて、
糸を巻き取ったりする機能はない。
釣竿を横に持って、後ろに歩く事で、
また、この釣竿は
16.5kg程の重さなので、
川に釣竿が落ちてしまう事もない。
そして、この釣竿の1番の特徴は、
釣り糸が
公域では
匂いで察知した生き物が、
その糞を食べ、毒で死に、
毒で死んだその生き物を
教師が言っていた気がする。
しかも、この糞は棘々(トゲトゲ)してて、
吐き戻す事ができない。
だから、この糞を垂らしておくだけで
釣りができるのだ。
~学校から帰ってきて、
14時間が経った。今は25時。
いつもなら、まだ働いてる時間だ。
11歳で
44歳で
例外、現実では見た事のない事象。
なら、例外は現実と言えるのか。
例外が起きた時、
この世界は夢と言っても、
いいんじゃないだろうか。
世界神がいて、
この世界は世界神の設定した、
単純な日常が延々と過ぎる世界で、
世界神の設定していない現象は起きない。
世界神の設定していない思いは思わないし、
世界神の設定していない、
出来事は起きない。
例外という言葉を現実に適用し、
「世界神の設定していない行為,出来事」
という概念を認識している時点で、
自分は普通じゃなくて、
世界と、人々と決定的な
普通の人々はそんな事、
思いつきもしない筈だから。
それとも、皆,思ってても、
口にしてないんだろうか。
世界神の思いと、
世界の在り
世界が、世界神とは別に存在している様な、
ただ単に存在している様な感覚が、
自分の心に芽生えている。
その感覚はとても不思議だ。
世界がただ単に存在していて、
その存在に、在り様に理由がないのは、
変な感じがする。
全てに理由があるという世界観で
生きてきたからだろうか。
普通はこうする。
それ以外の行動を、
人がしているのは見た事がない。
毎日、決まった時間に起き、
決まった時間に学校に行き、
決まった時間に働き、
決まった時間に眠る。
そうでない行動をするのは、
世界と
世界から疎外されてしまう恐怖がある。
そんな事を思うのも、
世界と
ありえない事を考えついてしまう、
自分の異端さにあるんだけど。
何しろ世界は全てな筈なのだから。
他の人は例外の行動なんて、
想像すらしていない筈だ。
だから、既に自分は、
世界から疎外されている。
「ふぅ...」息を吐く。
今は寝る時間なのに、
頭が酷く冴えて、
思考に没頭してしまう。
こんな夜はよくある。
焦燥感に焼かれて、
眠りにつけない夜だ。
実態の掴めない不安に恐怖して、
無意味な思考が頭を流れ、
長い時間が過ぎる夜だ。
いや、今日は
焦燥感に焼かれないし、
不安に恐怖する事もない。
今日、何かが変わる気がするからだ。
彼女が来るよう言った場所に、
彼女が言った時刻に着く為には、
そろそろ、ここを出ないといけない。
不安だ。
学校以外の用事で、
登下校以外の時間で、
庭の外に出た事がない。
だから、人のいない道を知らない。
普通ならそんな道は、
見る筈でも歩く筈でもない。
人のいない道を歩くのは怖い。
それは、まるで世界が、
違うみたいだからだろう。
それでも、迷ってはいない。
庭の外に向かって歩きながら思う。
この庭を出れば、
彼女の約束通り会えば、
何かが決定的に変わるのだろう。
全てに匹敵するくらい、
大きな何かを失うのだろう。
だけど、同じくらい大きな何かを
得られると、与えてくれると思ってる。
信じてる...失うだけじゃないと、彼女を。
それに、彼女がこの時間に、
[縦13横22]という場所に
来るよう言った事は例外的で、
だから、彼女もまた例外的だ。
自分の様に...多分,自分よりも。
きっと、彼女は何か知っている。
彼女は自分よりも、
この世界と異なっている。
だから、期待している。
彼女が今の世界に代わる
何かを与えてくれると。
だから、行く。
客観的に見れば...期待し過ぎというか、
人任せというか、
そんな気もするけども、
勝手でもいいから、彼女を信じたい。
そんな事を思いながら、
1歩、庭から出た。
はぁ、大きく息を吐く。
息の音がやけに大きく聞こえた。
1人の証か。
誰も人がいない道だ。
1人、ここに自分が歩いている。
今、ここに自分がいる。
まるで、遠くから、
自分を観察してるみたいに、
強く、自分を意識する。
そうすると、なんだか、
今まで何回も見てきた、
この風景が、この世界が、
異なって見えて仕方がない。
ほんとうに、夢の中みたいだ。
見慣れた風景が、
荒唐無稽で唐突な存在に見えて仕方ない。
1人、未知の世界に
放り出された気分だ。
恐い。
未知への恐怖だろうか。
孤独への恐怖だろうか。
だけど、自分はこの世界を知りたい。
...いや、そんなのは嘘だ。
ふっ、小さく笑う。