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異なりの生物 子蝟胃夢と始まりの前

トイレ立体放射器シャワーから戻った。

次は、子蝟胃夢スレィムの餌やりと、

ミルク (体液)回収をするかな。


家の前に置いていた円柱容器バケツ

ガラガラ押しながら、

回収箱の所に置いておいた、

軟葉ナゥハ硬塊コゥカイが入った籠を取りに行く。


子蝟胃夢スレィムは不思議な生き物だ。

生物いきものとしては異質な形状をしてる。

例えるなら、腐敗しきった、

濃厚で純白の液体に培養された内臓だ。


白い半透明の、とても薄い皮に包まれた、

ミルクと呼ばれるトロトロの白い液体。

そして、その中にある本体臓器

それらが子蝟胃夢スレィムだ。


子蝟胃夢スレイムの形は、

綺麗な球体を半分に切った形ドーム状で、

かなり大きく、

縦横4m、高さ2mにもなる。


子蝟胃夢スレイムがこんなに大きくて、

重い筈なのに、自重で潰れて、

同心円状に広がらない平べったくならない理由は

皮膚が破れにくいと同時に伸縮しにくく、

形が変わりにくいからだ。


なので、皮膚は常に、

体液の重さによる強い圧力で

ピンっと張っている。

触ると中に液体が入ってるとは

思えない、固い感触がする。


回収箱の所に着いたので、

軟葉ナゥハ硬塊コゥカイが入った籠を右手で持ち、

家の対角にいる子蝟胃夢スレィムの所へと向かう。


子蝟胃夢スレィムは大きいから、

ここからでもはっきり見える。

子蝟胃夢スレィムは家より大きくて、

家の2.3倍もの体積があるのだ。


そんな子蝟胃夢スレィムの頂上には、

細長い本体 (臓器)が、ぶら下がってる。


本体はまず、1番,上に、

しわくちゃの気持ち悪い塊があって、

そこから、下に白くて細い、

石の様な何かが伸びている。


それにくっつく形で、

拍動式送出機ポンプの様に繰り返し動く丸い何か、

袋みたいな何か、細長い管などがある。


別にそれらは見える訳じゃない。

本体は濃厚なミルクに隠れて見えない。

だから、知識として知っているだけだ。


また、穴や穴のある突起がない、

この球体を半分に切った形ドーム状の生物から、

老廃物はどう出ていくのかと言うと、

皮膚に濾過ろか機能があり、

皮膚から老廃物、

尿がにじみ出ているのだ。


さて、子蝟胃夢スレィムの所に着いた。

子蝟胃夢スレィムに餌をやろう。


まず、子蝟胃夢スレィムに繋がっている機械に、

硬塊コゥカィ軟葉ナゥハを投入する。

すると、機械を通して、

子蝟胃夢スレィムにそれらが入る。

子蝟胃夢スレィムの中に入った、

軟葉ナゥハ硬塊コゥカイは数時間もてば、

ミルクによって消化されて、

ミルクになるのだ。


そう、子蝟胃夢スレィムの体液は、

栄養を本体に供給するだけでなく、

食べ物を消化する役目もあり、

子蝟胃夢スレィムのミルクは血液であり胃液だ。


そして、この機械にはまだ役目があって、

この機械に付いてる、

固い角度式切り替え機レバーを引くと、

川に繋がっているくだから、

海水が吸い上げられ、

子蝟胃夢スレィムの中にそそがれる。


これは...1KL、

注がなきゃいけないから、

重労働で、11分くらい時間がかかる。


子蝟胃夢スレィムは、柱肉蟲チュニクチュウとは真逆で、

大量の水分が必要なのだ。


もし、水分が不足したら、

体液の濃度、酸度が上昇して、

自分自身を溶かしてしまう。



子蝟胃夢スレィムに水を注ぎ終える。

手のひらが痛いし、

大胸筋が筋肉痛になりそうだ。



最後にこの機械を使って、

子蝟胃夢スレィムからミルクを吸い出し、

車輪付き円柱型容器バケツに貯めよう。


角度式切り替え機レバーを右側に蹴り、

反対側に向かって、左側に蹴る。


ミルクはドロドロしてるから、

海水を注ぐよりも強い力がいるので

手では動かせなくて、

蹴って動かすしかないのだ。


角度式切り替え機レバーの右側に行って、

左側に行ってを繰り返すから

疲れるというよりめんどくさい。


でも、円柱型容器バケツに注ぐ量は、

242Lくらいで、

注ぐ量が1KLの水やりより少ないから、

注ぐのに必要な動力量エネルギー

水やりより少ないだろう。


にしても...やっぱり、臭いな。

円柱型容器バケツに注がれたミルクは、

空気と混じり合い、

独特の匂いを巻き散らす。

ミルクは酷く生臭く、

濃厚な匂いがするのだ。


そして、1度,ミルクを

興味本位で少し舐めた事があるけど、

胃液に精液を混ぜた味がした。

勿論、飲んではいない。


精液の味を何で知っているかというと

......興味本位だ。

勿論、飲んではいない。


ミルクを円柱容器バケツに注ぐ作業は

左側と右側を行ったり来たりする、

めんどくささと、

独特な匂いが嫌だけど、他にも足裏が

痛くなるという点も挙げられる。


角度式切り替え機レバーは金属製で硬いから

2cm程度の厚みがある底の靴では

硬さが足に伝わってくるのだ。



~ミルクを円柱容器バケツに注ぎ終えた。

ミルクの入った、

車輪付き円柱型容器バケツを押して、

硬塊コゥカィ軟葉ナゥハを栽培してる、

川沿いの植物籠プランターへと向かう。


円柱容器バケツに入ってる量は242Lだけど、

ミルクは水よりも密度が高いから、

302.5kgくらいの重さがある。

柱肉蟲チュニクチュウの餌は605kgくらいだから、

その半分の重さだけど、

重い事に変わりはない。


88kgの人を背負しょって歩く事が可能でも、

44kgの人を背負しょって歩くのは

重いし辛いのと同じ話だ。


302.5kgは角度式切り替え機レバー

幾度も蹴って痛くなった足裏に

かかる負荷としては辛い重さなのだ。


植物籠プランターの所に着いた。

植物籠プランター円柱容器バケツを傾けてミルクを注ぐ。


すると、硬塊コゥカィは球体の形から一転、

パカっと割れ、星形ヒトデ形になって、

ピンク色の、腸壁みたいな

ヒダヒダした内壁を露出させる事で、

より、たくさんのミルクを摂取する。


軟葉ナゥハは、腸壁みたいなヒダヒダした体で、

キュゥゥっと高い音を出して、

ミルクを吸う。


要は両方、気持ち悪い。


次は、川に釣竿を設置する。

本当は最初にやっておくのだけど、

珍しく忘れていた。


空になった車輪付き円柱容器バケツ

ガラガラと押しながら、

途中で子蝟胃夢スレイムの所に置いた、

籠を拾って歩く。

籠と円柱容器は、今日は

もう使わないからしまうのだ。


車輪付き円柱容器バケツ

回収箱の所に置き、

籠は物置に置く。


そして、物置の中にある、

立て掛けられた、

長さ5mの釣竿の真ん中を持ち、

それをそっと横にして、

釣竿を引きずって川へと向かう。


川は物置のすぐ近くだ。

物置の隣にある家が庭の角で、

家と川の幅は2m程度。

6mくらい歩けば川だ。


歩いてるとガリガリとした、

地面を釣竿が削る感触が

手に響き、耳に聞こえる。


やっぱり、釣竿は重いな。

柱肉蟲チュニクチュウの餌も重いし、

子蝟胃夢スレィムに水をあげるのも重労働だし、

労働は疲れる事が多い。


釣竿を川に持って来て、

川に平行になる様に釣竿を置く。


釣り糸は釣竿に対して

垂直に55本,巻き付いてて、

糸を巻き取ったりする機能はない。


死生物シィセブゥツが引っかかったら、

釣竿を横に持って、後ろに歩く事で、

死生物シィセブゥツを釣り(引き)上げるのだ。


また、この釣竿は

16.5kg程の重さなので、

死生物シィセブゥツが引っ張って、

川に釣竿が落ちてしまう事もない。


そして、この釣竿の1番の特徴は、

釣り糸が柱肉蟲チュニクチュウの糞だという事だ。


柱肉蟲チュニクチュウは太さ1mmで千切れにくく、

生物学的熱量カロリーは高いが猛毒の糞をする。


公域では生物学的熱量カロリーの高さを

匂いで察知した生き物が、

その糞を食べ、毒で死に、

毒で死んだその生き物を

柱肉蟲チュニクチュウが食べると

教師が言っていた気がする。


しかも、この糞は棘々(トゲトゲ)してて、

トゲが返しになってるから、

吐き戻す事ができない。


だから、この糞を垂らしておくだけで

釣りができるのだ。



~学校から帰ってきて、

14時間が経った。今は25時。

いつもなら、まだ働いてる時間だ。

11歳で大人おぅとになって、

44歳で高人こぅとになるまでその筈だった。


例外、現実では見た事のない事象。

なら、例外は現実と言えるのか。

例外が起きた時、

この世界は夢と言っても、

いいんじゃないだろうか。


世界神がいて、

この世界は世界神の設定した、

単純な日常が延々と過ぎる世界で、

世界神の設定していない現象は起きない。


世界神の設定していない思いは思わないし、

世界神の設定していない、

出来事は起きない。


例外という言葉を現実に適用し、

「世界神の設定していない行為,出来事」

という概念を認識している時点で、

自分は普通じゃなくて、

世界と、人々と決定的なずれがある。


普通の人々はそんな事、

思いつきもしない筈だから。

それとも、皆,思ってても、

口にしてないんだろうか。


世界神の思いと、

世界の在りようは同一なのに、

世界が、世界神とは別に存在している様な、

ただ単に存在している様な感覚が、

自分の心に芽生えている。


その感覚はとても不思議だ。


世界がただ単に存在していて、

その存在に、在り様に理由がないのは、

変な感じがする。


全てに理由があるという世界観で

生きてきたからだろうか。


普通はこうする。

それ以外の行動を、

人がしているのは見た事がない。


毎日、決まった時間に起き、

決まった時間に学校に行き、

決まった時間に働き、

決まった時間に眠る。


そうでない行動をするのは、

世界とずれ異なっててしまう恐怖がある。

世界から疎外されてしまう恐怖がある。

そんな事を思うのも、

世界とずれる異なるという、

ありえない事を考えついてしまう、

自分の異端さにあるんだけど。

何しろ世界は全てな筈なのだから。


他の人は例外の行動なんて、

想像すらしていない筈だ。


だから、既に自分は、

世界から疎外されている。


「ふぅ...」息を吐く。


今は寝る時間なのに、

頭が酷く冴えて、

思考に没頭してしまう。

こんな夜はよくある。


焦燥感に焼かれて、

眠りにつけない夜だ。

実態の掴めない不安に恐怖して、

無意味な思考が頭を流れ、

長い時間が過ぎる夜だ。


いや、今日は

焦燥感に焼かれないし、

不安に恐怖する事もない。

今日、何かが変わる気がするからだ。


彼女が来るよう言った場所に、

彼女が言った時刻に着く為には、

そろそろ、ここを出ないといけない。


不安だ。

学校以外の用事で、

登下校以外の時間で、

庭の外に出た事がない。


だから、人のいない道を知らない。

普通ならそんな道は、

見る筈でも歩く筈でもない。


人のいない道を歩くのは怖い。

それは、まるで世界が、

違うみたいだからだろう。


それでも、迷ってはいない。


庭の外に向かって歩きながら思う。

この庭を出れば、

彼女の約束通り会えば、

何かが決定的に変わるのだろう。

全てに匹敵するくらい、

大きな何かを失うのだろう。


だけど、同じくらい大きな何かを

得られると、与えてくれると思ってる。

信じてる...失うだけじゃないと、彼女を。


それに、彼女がこの時間に、

[縦13横22]という場所に

来るよう言った事は例外的で、

だから、彼女もまた例外的だ。

自分の様に...多分,自分よりも。


きっと、彼女は何か知っている。

彼女は自分よりも、

この世界と異なっている。


だから、期待している。

彼女が今の世界に代わる

何かを与えてくれると。

だから、行く。


客観的に見れば...期待し過ぎというか、

人任せというか、

そんな気もするけども、

勝手でもいいから、彼女を信じたい。


そんな事を思いながら、

1歩、庭から出た。


はぁ、大きく息を吐く。

息の音がやけに大きく聞こえた。

1人の証か。


誰も人がいない道だ。

1人、ここに自分が歩いている。

今、ここに自分がいる。

まるで、遠くから、

自分を観察してるみたいに、

強く、自分を意識する。


そうすると、なんだか、

今まで何回も見てきた、

この風景が、この世界が、

異なって見えて仕方がない。


ほんとうに、夢の中みたいだ。

見慣れた風景が、

荒唐無稽で唐突な存在に見えて仕方ない。


1人、未知の世界に

放り出された気分だ。


恐い。

未知への恐怖だろうか。

孤独への恐怖だろうか。


だけど、自分はこの世界を知りたい。


...いや、そんなのは嘘だ。

ふっ、小さく笑う。

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