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人類種の物語 ~すべてが異なる世界~
猫狐冬夜
SF空想科学
2024年09月05日
公開日
25,541文字
連載中
全てが異なる世界、別の現実
そこは地球上の何処なのか、
惑星の上なのかすら語られない
複数の人類種が暮らし、
奇怪な生物が生き、
そんな世界の奇怪な社会に
生まれた少年少女の物語。

世界を疑い、
それを疑う自分の正気をも疑い、
焦燥感と孤独感を感じていた少年は
ある不思議な少女と出会う。

2人は互いの理解者となり、孤独を癒し、
その世界を捨て、新たな世界を、
2人で自由に生きられる世界を
見つける為に歩みだす。

そして...2人は
白き天使に出会うだろう。

異なりで異なる

そろそろ起きるか。

ふと、ぼやけた意識でそう思う。


いつから起きてたかなんて

そんな境界線はない。


青白い光が家の窓を透過して

赤白い色パステルレッドに変わり、

家の中に降り注ぐ。


何故かその綺麗さが

無性に神経を逆撫でする。


何故だろう。

何故、この世界はこの世界なんだろう。


白く細い腕が何かを求め、くうに伸び、

何もつかめずパタりと落ちる。


馬鹿みたいだ。


無意味な思考をするのをやめて、

体を起こし、寝起きの意識で

ぼんやりと家の中を見渡す。


足元には朝食があり、

右には水浴び室シャワールーム

ちょっと前に進んで、

寝床ベッドから降りれば、

外へと繋がる扉がある。

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今日もこの世界か...

何を確認しているのやら。

ほんと、この変な習慣は、

いつからだっけか。


何で自分はここでこうしているんだろう。

何でこんな世界にいるんだろう。

全てに疑問符が付く。


全て自体が唐突な事実に感じ、

今まさに、別の世界から

この世界に出現した気分だ。


全てに対し、

焦燥感が湧く程,疑問符が溢れ、

その事実にすらも疑問符が付き、

現在進行形で疑問符の波に溺れる。


...朝食を食べよう。

美味しいからというか、

空腹だから食べたくなる料理。

料理はいつも決まった時間、

1日に2回,何処からか流れてくる。

料理が流れてくる穴は深い闇でしかない。


今日の朝食は血牛ちーぎゅうの血で

塩辛く味付けされた生野菜料理サラダ

素材の味そのままの死生物シセィブゥツか。

[563842616/1685529097.jpg]

...いつの間にか完食していた。

意識が飛んでいたみたいだ。


まだ食べたい,足りない。

唾液が舌からじんわりと

痛いくらいに染み出るのがわかる。


だけど、この欲求は錯覚で

実際に食べたら気持ち悪くなり

吐いてしまうのだ。


...そうな筈なのだ。


「...今日も学校か」

何かを振り切る様に

1人,無意味な内容の言葉を

誰も聞かない無意味さを兼ねて言葉を呟き、

料理が乗っていたお盆を

料理が出てきた穴に入れる。


穴は壁に空いてて、

1辺22cmの正方形を断面とした、

斜め22.5°程度に傾いた直方体の空間だ。


穴は料理を入れられると

カタカタと床を動かして、

お盆は何処かへと行った。


それを見送った後、

干してある薄服ジャージに着替え,靴を履く。

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ガチャ

扉を開けて外に出ると目に入る

ゆったり流れる川,しょっぱい川。

この川から放たれる青白い光が

この世界を淡く照らす。


川から放たれる光は

川の水深5mより下に無数にある、

川に含まれる塩で光るピケァルムという

直径5cmの球体が光源だ。


この川はこの世界を延々と流れてる。

世界の果てから

ここを通って世界の果てまで。


...本当にそうなのか。

何も確かだと思えない。

夢の中にいる気分だ。

寝ぼけてるのかもしれない。

この妙な気分は1年くらい前から

続いてるんだけど。


そんな事をぼんやり考えながら

自分は歩いてる。

そして、自分以外にも

たくさんの人々が歩いてる。

青白い光に満たされた世界は、

そんな光の中にいる人々は

皆,肌が青白く染まってた。


その光景に目を奪われる。

その光景の何かに恐怖を感じる。

自分はどうしたんだろう。

いつもと何の変りもない今日なのに。

去年、一昨年とずっと前から

こんな毎日を繰り返してきたのに。


あたりを見渡すと

12100110×110㎡の正方形の庭が

川を境界線にして、

マス目状に延々と並んでいる。

気が遠くなる程,延々と

地平線の果てまで並んでいる。


そして、川と庭の境目,川沿いを人々が歩く。

誰もが笑みを浮かべながら

「学校」に向かう。

この光景が世界の果てまで

続いてると考えたら気が狂いそうだ。


だから、下を向いて何も見ない。

だけど、人々の話し声は聞こえる。


「今日も学校で勉強できて嬉しいよ」

若い男の声だ。


楽しそうな声が周りから聞こえる。

この世界は何処までも

楽しそうな声で満たされているのだろう。


そう、皆,笑ってる。

気持ち悪いくらい笑ってる。

この世界でたった1人,自分を除いて。


何が嬉しいんだろうか。

何が楽しいんだろうか。


幸せなんだろうな、幸せなんだよな。

自分は他の人と何も違わないんだから

自分も幸せなんだ。


なのに、どうして、

自分は笑っていないんだろう。


自分は何が他の人と違うんだろう。

...何もわからない。

全部、違う気がする。

根っこから違うのかもしれない。


異物になった気分だ。

自分はここにいるべきなのだろうか?

ここ以外の場所など何もないのに、

そう思ってしまう。


ふと、学校の奥にある産待院さんたいいんが目に入る。

産待院は腹に寄生獣が巣食った女性が

3人程で療養する施設だ。


でも、それはただの情報だ。

知識としては何も知っていない。

実感、実体験として知っている事ではない。


この世界について知る事の多くが情報なら

人から聞いた、高人こうとから聞いた、

教えられただけの事なら

自分はこの世界を

何も知ってないんじゃないか。


そんな事を考えながら歩いてると、

いつの間にか学校に着いていた。


最近は考え事ばかりしてて、

いつの間にか時間が経ってる事が多い。


そして、その考え事には何の実りもなくて、

虚しさが胸の中に広がり、焦燥感が募る。

1年くらい募って今の自分の心がある。


今のままじゃいけないような気がして、

でも、どうすればいいのかわからなくて、

今のままじゃいけないのかどうかも

いくら考えたってわからない。


あと、何年か思いが募れば、

何かが変わるのだろうか。

自分か世界か。



それにしても、この学校は

今更ながら大きい建物だ。

まぁ、約1331人も

通ってるのだから当然か。


校門の前で見る灰色の石コンクリートでできた学校に

沢山の人々が入っていく光景は

何処か不気味だ。


そして、自分もその一部となる、迎合する。

自分はこの大地の表面の表面の上で

無数に存在する

うごめく塵の1つに過ぎない。


そう言えば、

別の,隣の学校は見た事がないな。

隣の学校に通っている人も見た事がない。


このまま一生,見ないのだろう。

まあ、それも当たり前だ。

この学校から隣の学校まで

4.5kmも離れているし、

それに隣の学校に行く人が住んでる地域、

隣の学区に行く理由なんてない。

人はそんな事しないのだ。


起きて学校に行き,帰って,

働いて寝て学校に行く。


そうでない人など、

そうでない日などないのだから。

例外など......ないのだから。

世界は...だから自分も。


世界が狭く感じる。

この世界は酷く広大で酷く狭い。

人生が、この先の未来が

既に終わった出来事の様に感じる。


全て満たされている筈なのに、

どうしようもない絶望感に

吞まれそうになって、

それを意識しないよう振り払う。

自分は考え過ぎてるんだ。


校舎へと無心でスタスタ歩く。

学校には校舎が3つあり、

校舎ごとに通う者の年齢が決められてて、

下級院校舎11~21歳,

上級院校舎22~32歳,

高級院校舎33~43歳となってる。


また、3つの校舎は角で接してて、

その3つの校舎に囲まれる形で中庭がある。

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そういえば、今日は14歳の誕生日だ。


忘れてた。

なんだかどうでもよかったんだ。


14歳...生まれてから1年が14回。

14という数はぴったりだ。

だけど、だからどうしたというのだろう。

ぴったりの数なんて作為的だ。

どうでもいい。


基準とした数,進数とかを変えれば

ぴったりの数なんて

いくらでも作れるじゃないか。


特別なんて、そう思うから特別なんだ。

世界に特別なんてない。

全ては決まっているのだから。


昨日も今日も明日も

同じ様な日々が続くだけだ。

何も変わりはない。

そう世界神が定めたのだから。


自分の教室を探す。

年齢が1つ上がるごとに学級クラスは変わる。

昨日、教師に教えられた

次の学級クラスは下級院4年1組だ。

あぁ、変わるのは数字くらいか。


~扉のない校門を潜り抜け、教室を探す。

色々な教室を通りながら

目的の教室へと向かう。


にしても奇怪な模様だ。

ドロドロの灰色の液体が流れく中,

時間が止まったみたいな床,壁,天井。

床は小さく波打ち、波紋を成し、

壁は今にもタラタラと

垂れていきそうな水滴が無数にあり、

天井からは無数に棘が生えている。

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校舎には廊下がない。

校舎には扉がない。


校舎内は22個の教室と2つの多目的室、

そして、職員室が敷き詰められてて、

隣り合う教室同士は

人が通れる大きさの穴で

繋がっているのだ。

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教室を見つけ、中に入ると、

21人くらいの人がいた。

その内、2人は同じ学級クラス

なった事がない人だけど、

通学の際に何度も見た顔だ。


特に目新しい訳でもない

一般的な人の顔がそこにある。


というか、同じ学校に通う人の顔は

通学の際や校門の前で、

何度も見て見慣れてる。

といっても、教室は薄暗いから

人の顔はよく見えないのだけど。


ちなみに、自分より先に誕生日を迎えて、

教室が変わった同級生クラスメイト

この教室にいるという訳じゃない。

組は2組の内、毎回、

蝶の羽ばたきランダムで決まるのだ。


空いている席に座り、また,ボーっと思う。


1年という単位は、1日という単位は

どんな風に決められたんだろうか。

いつか、学校で教えてもらえる日は、

あるんだろうか?


自分は何もわかっていない。


「おはよう」

不意に挨拶された。

声のした方を向くと

明るい感じの好青年がいた。

明るいとめんどくさいは同義だ。

高身長で単純な性格をした顔。

発達した筋肉と短い髪。

めんどくさそうだ。

同じ学級クラスになった事がない奴か。


トウァ「あぁ、おはよう」

とりあえず、挨拶を返しておく。

そうしなきゃもっと

めんどくさい事になるからだ。


「よろしく。僕の名前はロリセクロ。

初めて同じ学級クラスになったね。

今日の授業は身体測定とかしかなくて、

勉強ができなくて残念だよ」

ロリセクロと名乗るそいつは、

優しげで大きな声で言う。


トウァ「そうだな、よろしく」

てきとうに同意を示して、

「よろしく」と社交辞令をする。


身体測定と病菌検査が行われる日は

毎年,この日だ。自分はたまたま、

その日が誕生日に被っている。


教師がスッと教室に入ってきた。

皆の目が輝く。


その教師は幼人よぅとでも大人おぅとでもない高人こぅと


大人おぅとの自分達からしたら憧れだ。

高い身長,紫色の瞳,茶色の髪,

憧れるに決まってる。


そんな心の声が、

何処か客観的に聞こえた。

そんな心の声が何故か、

他人の声に聞こえた。


高人こぅと

まだ、3年前に11歳で、

大人おぅとになったばかりの自分には、

縁のない話だ。


教師「今日は進級生がいるらしいな。

私の名前を紹介する」

そう言って教師は壁に貼り付けられた、

削れやすい赤白い石板に

赤くて硬い石でカッカと文字を刻む。

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石板が削られて落ちる石板の粉は

石板の下に付けられてる

上半分が切られた筒に溜まる。


そして、その粉は水と混ぜると

粘土の様になり、

それを、石板の削れた部分に

ペタペタと塗れば、

時間と共に乾燥して固まり、

削られた石板は元通りになるのだ。


ただし,その粉は、石板を削る

赤い石の成分を僅かに含んでるので、

長い年月で石板は赤い石へと

置き変わっていく。

これがこの石板の寿命だ。


赤い石は硬いから、

石板が赤い石になったら、

赤い石で削って、

文字を書いたりはできなくなる。


44年、使ってもなくならない、

赤い石の塵だけで

石板は永い時を経て赤い石となるのだ。


前にそうなって撤去された石板。

あの石板が作られたのは

果てしない過去なんだろう。


名前を石板に書き終えて教師が言う。

「私は量関果量りょうかんかりょう教師、

アラロシア・リベラクルだ。

1年間,よろしく頼む」

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教師は自身が担当する学年に

進級した生徒が入った日は

授業を始める時に自己紹介をする。


教師は自分が所属する校舎の中で

5つの学級クラスの授業を担当してるけど、

1つの校舎に学級クラスは22個あり、

進級してきた生徒を自身が

担当した事がない可能性があるからだ。


また、アラロシアと同じ、

授業をする教師は

学級クラスの数と同じ66人で

それ以外に事務作業などの

授業を行う事以外の

仕事をする職員が3人いる。


そして、学校の職員は男性だけだ。


リベラクル「今日は1時限目に身体測定,

2時限目に病菌検査,4時限目に世界機構,

5時限目に代謝効物だ」


生徒達「おぉ!」

高人こぅとに比べて高い声が響く。


この世界について学べる世界機構は

生徒に好評の授業なのだ。


リベラクル「点呼をとる。

セヴァン・イレヴァン,

テレアナ・ロドル,

パニアーリ・ホテプ,

~ルネルシルト・トウァ」


トウァ「はい」



参考画像

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