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第50話 急上昇はむかつくんだよ

「お前らー、学園祭について決めんぞー。とりま、リーダーについてだけど...」というと、「はいはいはい!!私やります!」と真凜ちゃんが立候補する。


「おう、汐崎やってくれるのかー」


「はい!やります!」


 そうして、リーダーになった真凜ちゃんはさっそく黒板の前に行く。


「コホン。まずはジャンルから決めましょう。ステージ発表、出店、教室発表ですが...。私はステージ発表!それも劇をやりたいと思っています!」


「おー、やろうやろー」と、続く清人。


「いんじゃないー?」と、更に加勢する本庄さん。


 流石はあの3人だ。

完全に流れを持って行った。


「劇って具体的に何やるのー?」と、雪菜さんが質問する。


 この時点で劇という点は完全に決まった...はずだった。


「...ちょいまちー。俺は劇とかやりたくないんだけど」と、割り込む。


 そいつの名前は柏崎龍馬かしわざきりょうま

クラス男子カースト1位といった感じの男だ。

まぁ、うちには同率1位みたいなやつが何人かいるがその内の1人だった。


「俺も劇とかはあれかなー」

「私もあんまりやりたくないかな」と、数名のクラスメイトが続く。


「ちなみに龍馬くんは何やりたいの?」


「うーん。まぁ、出店かな」


「なんの出店ー?」


「たこ焼きとか?ほら、劇とかは事前準備も大変だし、俺たち受験生なわけでそんなことに時間使いたくねーし。そもそも、素人がやったところで結局はおままごとっていうか、そういう感じが拭えないじゃん?」


「じゃあ、もしプロがいたとしたらどうする?」


「...プロ?」


 最悪の流れである。


「私の夫は子役をやっていたのです!」と、勝手に紹介される。


「...」


「子役?マジ?でも、山口なんて見たことねーけど」


「基本的には舞台とか少しマイナーな映画をメインでてたからね!けど、実力は本物だから!ね!碧くん!」


「...昔のことだから」


「てことで、劇をやろうと思います!」


「...」


 どうやら、柏崎は俺のことを嫌っているようだ。まぁ、俺が逆の立場でもそう思うだろう。


 クラスのインキャが学校のアイドルと結婚したおかげで、周りからチヤホヤされるというこの現状。そりゃ、イラつくよな。


 それに俺自身、劇をやりたいとも思っていないし。


「ちなみにやりたい劇の候補があるだけど!今日の放課後時間ある人!」


 パラパラと手が上がる。


「俺は劇なら協力する気ないから」という柏崎。


 結局、強引に進めたことで若干クラスに亀裂が入ったまま、HRを終えることになった。


 放課後残ったのは12名。

思っていたよりだいぶ少ない人数である。


 汐崎真凜、汐崎碧、大迫清人、七谷海、本庄千里、沢城雪菜さわしろゆきな尾形玄太おがたげんた西澤浩介にしざわこうすけ、一ノ瀬若いちのせわか溝口瑞希みぞぐちみずき太田菊乃おおたきくの石野陸いしのりく


「半分も残ってくれないとかみんな薄情すぎない!?」(真凜)


「むしろ、12人も残ってくれたことに感謝したほうがいいんじゃない〜?柏崎が言いかたはムカつくけど正論は正論だしね〜」(千里)


「まぁまぁ、今は出来ることをやろうよ!」(若)


「山口が出てた映画の名前を教えてよ。今度見るから」(陸)


「...いや、言わないけど」(碧)


「【冬館の夜】だぜ!」(清人)


「おい、勝手にいうなよ」(碧)


「みんな!好き勝手に話さないで!まずはこの映画を見て!映画の名前は【復讐の花】!」(真凜)

※【第23話:劇】を参照。


 そうして、みんなで映画を見る。

大体1時間半ほどの映画だったが、誰も喋ることなくその映画に夢中になっていた。

作品の映像や演出などはB級という名に相応しいのだが、役者の演技はそこらへんの映画と遜色ないほどであり、ストーリーに関しては名作と言っていいほどのものだった。


 ◇視聴終了


「...すげー、面白かった」(浩介)


「うん。最初はなんか正直ちゃっちー映画だなーって思ってたけど後半は見入っちゃった。すごいね、これ」(雪菜)


 全員からかなりいい反応をもらえたが、残念ながら同時にみんなが思ったことがある。


「...これ、流石にむずくないか?」(清人)


「「「...」」」


 演技の問題だけじゃない。

この1時間半の映画を約25分程度に集約すること、備品や風景の再現...。

いくつもの難関を乗り越える必要がある。


「...ひとまず、配役だけでも決めてみる?」


「とりま主人公【大間来希おおまらいき】は碧くんがやるとして、他はどうしようかなー?」


「同級生の女の子、粟野桂里奈あわのかりな役は真凜ちゃんがいいんじゃない?」


「え?わ、私!?」


「夫婦だしな。多分主人公の次に難しいのがあの役だろうし、演技の指導も必要だろ?」


「んじゃ、犯人役は清人で」


「え!?俺!?って、犯人役はほとんど出番ないよな。うん。ラッキー」


「あとは適当に妹役とか先生役とか...場合によっては一人二役やる感じでいいかな?」


 そうして、なんとなくの配役を決めてその日は解散となった。

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