◇修学旅行終わりの翌日 土曜日
目を覚ますと枕に涎を垂らしている真凜ちゃんが目の前にいた。
「うへへへへ」と、何かいい夢でも見ているのかへらへらと笑っている。
口に髪の毛が入りそうになっていたので、髪を耳にかけてあげる。
...可愛い。
今までこんなに可愛い子が隣に寝ていたのに、よく理性を保っていたものだ。
すると、片目だけ目が開く。
「うはぁ...あさぁ...?」と言ってからすぐに、涎が垂れていることに気づく真凜ちゃん。
「あっ、あっ!ちょっ...えっ...めっちゃ垂れてる...」
「涎垂らしてる姿も可愛いよ」
「なっ//涎垂らすのは可愛くないから//ま、枕にぐっしょりだよ...」
「その枕ちょうだい」
「な、何するの?」
「匂いを嗅ぐ」
「だ、ダメだから!臭いから!」
「いやいや、真凜ちゃんのヨダレはいい匂いだよ?」
「そんなわけないから!」と、枕を隠そうとする真凜ちゃん。
「おいおい、そんなんで隠したつもりかぁ?」
いやらしい手つきをしながら馬乗りになる。
「や、やめてぇ!」と、はしゃぐ真凜ちゃん。
そうして、枕を取ろうとして体制を崩して俺の手が真凜ちゃんの胸を鷲掴みしてしまう。
「あっ!!//ちょっ...ごめん...」というと、普段ならイタズラ笑みを浮かべそうなものだが、顔を赤くしながら無言で俺を見つめる。
「...」
「...あの...」
「私はいつでも...いいから//家でも...そ、外でも...//」
そうだ、俺たちはもう結婚してるんだ。
そういうことだって...ね。
「...隙あり」と、無防備になった真凜ちゃんの枕を盗んで涎部分を鼻に当てて吸い込む。
「や、やめてぇぇえ!!!」
そんなバカなやりとりを終えて、少しイチャイチャした後に起き上がって朝ごはんを食べる。
「私、SNSやってみたい!」
「...SNS?」
「うん!そう!まぁ、RINEとかもSNSだけど、そういう限定的なものじゃなくて、誰でも見られるようなやつを始めようと思うの!YooTubeとか、TakTokとか!そういうの!どうかな!」
「いいと思うけど...。急にどうしたの?」
「夫婦系のチャンネル見てたらやってみたくなった!それに私たちの関係はもう隠す必要がないわけだし、もっと公に見てもらいたいなーって思って!」
...そんなの始めたらネットでも袋叩きに合う気がする。
「...真凜ちゃん単独のチャンネルじゃダメなの?」
「ダメだよ!私は碧くんと一緒にやりたいの!それに私1人でやって変なファンついたらどうするの!」
それは確かに嫌だ。すごく嫌だ。
「でも、ああいうのって色々揃えないとダメでしょ?機材とか」
「うん!照明とか、カメラとか、あとパソコンももう一台欲しいな。編集のようなやつ!」
「なるほど」
どうやら本気でやりたいらしい。
「てことで、今日は色々と買いに行きましょう!」
「らじゃ」
「...うーん」と、顎に手を当てて何かを考え込む真凜ちゃん。
「どうしたの?」
「いや、普通にデートするのはなんか面白みにかけるというか...折角なら少し趣向をこらしたいなと思って!」
えぇ...。一応お互いが好きだと言ってからの初デートを面白みにかけるって...。
「決めた。今日は...不倫デートしよう」
「...はい?」
◇駅前
先に家を出るように言われ、1人で駅前で待っていると、キョロキョロしながら真凜ちゃんがやってくる。
「ごめん、お待たせ」
「いや、全然待ってないけど...」
「今日は奥さん、実家に戻ってるのよね?」
「お、おう...」
不倫デートっていうのはそういうことか...。
「そう...。それなら良かった。...ねぇ。いつになったら奥さんと別れてくれるの?」と、上目遣いで俺を見つめる。
「...あぁ...ごめん。話はしてるんだけど...」
すると、ポケットから笛を取り出し「ピピー!」と、鳴らす。
駅前の視線を一気に集める。
「ちょいちょいちょいちょい!!//何してんの!?//」
「碧くん!しっかりしてよ!今日の碧くんは奥さんがいるのに超可愛い私と不倫している最低人間の役なの!分かった?私のことは基本『メス豚』と呼ぶこと!」
「嫌だよ!今日は普通にデートしようよ!」
「ダーメ!これは必要なことなの!分かった?次もちゃんと役に入り込んでなかったら...笛鳴らすからね?」
「...えぇ」
どうやら設定上は俺と真凜ちゃんはセフレのような関係で、真凜ちゃんは奥さんと別れて結婚したいと思っているが、俺は一切そんな気はないらしい...。そして、俺はクズS男役、真凜ちゃんは変態ドM女役らしい...。
「それじゃあ、始めって言ったらちゃんと役を入れ込んでね?分かった?」
「...はい」
「それじゃあ...始め!」