朝、目を覚ますと携帯の電源を入れる。
すふと、無数の着信履歴が残っていた。
「...やりすぎたかな」と、少し反省したがでもやっぱり許せない気持ちの方が勝っていた。
そうして、
「おーっす、真凜様。...って、碧は?」
「え?知らないけど...」
「え?またそっちの部屋に行ってたんじゃないの?」
「...来てないよ?」
「いや、こっちにも居ないけど」
それを言われてようやくことの重大さに気づく。
「...探してくる」
「ちょっ、まずは先生に報告しないと...」
「ごめん。報告は清人くんお願い」と、私はそのまま走って外に出た。
その時ようやく過ちに気がついた。
私がしたこと...それは彼が家族から受けていた仕打ちと同じだ。
無視され続けたあの日々と...。
それも好きな人にそんなことをされたんだ。
私はそんなことをしてしまったのだと。
もう目には涙が溜まっていた。
謝りたい。ごめんなさいと言いたい。もうこんなことしないって言いたい。抱きしめたい。嫌いにならないでって...。大好きだよって...。
私は本当にバカだ。自分のことばっかりで...碧くん。会いたいよ。会いたいよ!大好きだよ!走りながら何度電話をかけても、繋がることはない。
見慣れない場所でマップを使ってひたすら公園を探す。
1つ目も2つ目の公園にも碧くんの姿はない。
上がり続ける息を抑えて私は走り続ける。
無駄に体力があったこととか、無駄に足が早かったことに今更ながら感謝する。
そうして、辿り着いた3つ目の公園のベンチで横になって寝ている碧くんが目に入る。
「...碧くん」
私の声でゆっくり目を開ける碧くん。
「...真凜ちゃん...。ごめん」
「なんで...碧くんが謝るの...?悪いの私だよ...。碧くんがッ...どういうことをされてきたのか知ってたはずなのに...っッ!私はあの人たちと同じことしちゃったのッ!最低だよっ!私は...私はッ!!」
「...違うよ。同じなんかじゃない。だって、こうやって俺を探しにきてくれたじゃん。息を荒くして、泣いて...。すごく嬉しかった」と、疲れた笑顔を浮かべながらそんなことを言うのだった。
私は碧くんを強く抱きしめた。
「もうこんなこと二度としない!だから...だから...」
「ね、真凜ちゃん」
「...?」
すると、私の左手を持ち上げて左手の薬指に指輪をつける。
「...俺と...結婚してください」
1番聞きたかった言葉。
ずっと...言って欲しかった言葉。
その瞬間、さっきとは違う涙が溢れる。
「...はい!」と、私は精一杯可愛らしく笑った。
こうして私は初めてプロポーズをされたのだった。
◇
2人とも先生にめちゃくちゃ怒られた。
「...お前らなぁ...ったく...」
「いいじゃないですか!結果よければ全てよしです!」
「...はぁ。頼むぞ、汐崎」
「「はい」」と、2人で返事をした。
「おいおいおいおい、大丈夫だったか?」
「悪い、心配かけた」
「お前、普段は大人しいのに時々すげー大胆な行動に出るからなー。ったくよー。でも、いい顔してんじゃん」
その後すぐに飛行機に乗って東京に戻った。
クラスメイト9割は熟睡する中、俺と真凜ちゃんだけは起きていた。
すげー眠いはずなのに眠れない。
ドキドキが...止まらない。
すると、俺の手を優しく握りながら真凜ちゃんが「えへへへ」と言ってくる。
なんだこの天使!マジ天使!改めて見ると本当にかわいいな...。
「...寝てもいいんだよ?」
「碧くんこそ寝ていいんだよ?疲れてるでしょ?」
「いや...なんか目が冴えちゃって」
「そう...なんだ...」
「「...」」
嫌じゃない沈黙。
お互いがお互いを意識しているのがすごくわかる。
「...これからもよろしくね?」
「...うん」
すると、耳元に近づいて来て「ね、キスしよ?」と囁く。
「いや...そ、それは流石に...」
「みんな寝てるから大丈夫だよ」
「でも...」
そんな言葉を無視して真凜ちゃんは俺の耳を甘噛みする。
「ちょっ//」
「...えへへへ//」
「...お前らな」
そう言われて振り返るとそこには担任の国岡先生が仁王立ちで立っていたのだった。
「「えへへへへ」」と、笑う俺たちは先生からの嫉妬パンチを喰らうのだった。