「ほっかいどーーーーー!」
「真凜テンション高すぎw」
「だって、北海道好きなんだもん!けど、やっぱちょっとさむー!!」という真凜ちゃんにカーディガンを渡す。
「...優男...しゅき!」と、抱きつかれる。
「はいはい...」
初日はこのまま旭川のホテルに荷物を預けて、アイヌの歴史や北海道の文化に触れて、あとは旭山動物園に行く流れだったかな。
勝手に歩き回る真凜ちゃんを先生が制しながら、なんとかホテルに到着した。
そうして、各々荷物を置くために各部屋のキーを渡されるのだった。
部屋は2人一組であり、俺の相部屋はもちろん清人だった。
「...ほ、北海道...寒いな」と、勇気を出して話しかけてみる。
「そうだな」
「...」
「...」
今まではいつも清人が主導で話を展開していた。改めて自分がダメ人間だということを悟る。
友達とギクシャクしてしまった時にどうしていいかなんて、清人以外友達がいない俺には分からなかった。
「...今日、夜話あるから」と、言われる。
「え?う、うん...」
少し不安なことを言われ、ホテルの部屋を後にするのだった。
◇
「ぬぬぬ...アイヌの古式舞踊...。『アイヌ古式舞踊は、北海道一円に居住しているアイヌの人達によって伝承されている芸能で、祭祀の祝宴やさまざまな行事に際して踊られる...。』今でいうところの踊ってみた的な?」
「それは違うんじゃないw知らんけどw」
「でも、踊ったり歌ったりは昔から変わってないんだねー。ふむふむ」
「...アイヌの文化に興味津々だねー」と、女子たちがキャッキャしてる中で、1人で何となく眺める。
いきなり来た侵略者に居住地を奪われて、文化だけ残してあげようって...。
こっちに居る人の中でアイヌの血を引いてる人なんてごく一部で、ほとんどは本州から移民だしな。
少しだけ気持ちがわかって同情してしまう。
そんなことより清人からの話か...。
正直、怖すぎて逃げ出したかった。
そんなことを考えていると声をかけられる。
「...あれ?もしかして天使様の旦那さん?」と、声をかけられる。
振り返るとそこには見覚えのあるチャラ男が立っていた。
確か隣のクラスの...
「そうですけど...」
「へぇ。近くで見れば見るほど大した男じゃないなー」と、開口一番挑発される。
「...」と、無視して歩き始めようとすると「ごめんごめんw煽りたかったわけじゃないんだよ!思ったことが口に出ちゃうタイプでさ!あっ、これもよくないか...」
「...なんの用ですか?」
「えっと、友達になりたくて!」
「...結構です。それじゃあ」
「ちょっ!?待って待って!」
「...いや、真凜ちゃ...真凜が目当てなんでしょうけど、バレバレですよ」
「...あはは、ばれちゃったかー...」
そんなハプニングがありながらも、アイヌの文化遺産を巡りを終えて動物園に到着する。
「あざらしー!!太ってるーー!!ね!見て見て!碧くん!」と、可愛らしいアザラシを指差す。
「真凜...。可愛いより先に太ってるが来るの?」と、少し笑いながら突っ込む。
「だって、結構太ってるよ!私はこうならないようにする...。てか、外では真凛呼びなんだね」と、少しニヤニヤしながらそんなことを言う。
嫌なことを突かれたので優しくチョップする。
「あはっw怒られたw」と、舌をお茶らけている。
気を遣っていることが伝わってくる。
本当、こういうところを含めて相変わらず完璧な女の子である。
「...ありがとね」
すると、いきなり頬を引っ張られる。
「もっと笑えーーーー!辛気臭い顔やめろー!」
「ほ、ほへぇん!!」
「そりゃキメ顔してる碧くんも好きだけど!1番は笑ってる碧くんなんだから!」
別にキメ顔をしてるつもりはないが...。
確かに折角修学旅行に来たのに考えても仕方ないことをグダグダと考えてもな...。
「そうだね。折角だし楽しむよ」
「うん!」と、今度は自分の頬を引っ張って笑う真凜ちゃん。
「お魚もいっぱいだねぇ!あっ!ペンギンペンギンペンギーン!」
その言い方だと某CMを思い出すのは俺だけだろうか。
「ペンギンってなんでこんなに可愛いんだろ。フォルムはトップクラスだよね。これで二足歩行とかもはや狙った可愛さだよね」
「でも、鳴き声はあんまり可愛くないよね。なんか警報みたいな声出すし」
「確かに。うーん、そのめちゃくちゃロリ美人だけどすごくハスキーボイスな女の子みたいなギャップ...グッドです👌」
どうやらペンギンの全てが真凜ちゃんの琴線に触れているようだった。
その後はホテルに戻り夕食を食べ、ようやく夜を迎えるのだった。