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第28話 膝枕&耳かき&ゲーム

『...おい。今女の子の声しなかったか?』


「...」


 ◇夏休み10日目


 まだまだ折り返しにもなっていないそんなある日のこと。


「ねぇ!これやろこれ!」と、何やらカードゲーム的なものを見せてくる。


「...ナンジャモンジャ?」


「そ!ナンジャモンジャ!知ってる?」


「聞いたことはあるような...。どんなゲームだっけ?」


① ナンジャモンジャは25種類のキャラクターカードが5枚ずつ、計125枚のカードで構成されている。


②一人ずつ順番に山札からカードを一枚めくり、表向きにして山札の隣りに重ねていくのを繰り返す。


③めくったカードが初めて出るカードなら、めくった人は描かれているナンジャモンジャに名前をつける。次の人も同じようにしてカードをめくり、初めて出るカードであれば名前をつける、というのが基本的な流れである。


④もしめくったカードが初めて出るものでなく、すでに誰かが名前をつけたカードだったら、その名前を叫ぶ。一番早く正確に名前を言えた人が、山札の隣りに積まれたカードをゲット。


⑤もし誰も名前を正確に思い出せない場合は、そのカードにまた新しい名前をつけてゲームを続行します。


⑥こうして山札がなくなったらゲーム終了。最終的に、たくさんのカードを集めた人が勝ちになる。


「ふーん。まぁ、ルールはわかった。そんで?」


「いいね。わかってんじゃーん!それじゃあ罰ゲームの内容を決めよっか!」


「待て待て待て。俺は忘れてないぞ。お母さんが初めて家に来た時、ボケボケな真凜ちゃんをすげー庇って、最後に「俺の勝ちでいいよね」って聞いたら「うんっ」って言ってたよね?あれはどうなったの?」


「...っち、覚えていたか...。まー!それは一旦置いといてー!って...なにその顔。あーはいはいわかりました分かりました。罰はちゃんと受けますよ。それで?碧くんは私にどんな罰を与えるの?」


「え?そ、そう言われると...どうしようかな」


「早くしてくださいねー。私は気の長い方ではないですよー。はーい、3!2!1!「えっと...!その...耳かき...して欲しい」


「...耳かき?」


「...ひ、膝枕で...」


「お、おっぱい枕!?」


「言ってないです。膝枕です」


「ふーん?そういうの好きなんだー?」と、露骨に馬鹿にしたような顔をしてくる。


「...別に。嫌ならいいですけども...。てか、なんでブルマなの?寝癖もすごいし...」


「私だってたまにはゆるーく過ごしたい時だってあるの!」


「...そうですか」


 ブルマってゆるい格好なのか?


「はい!どうぞ!」と、両手を広げて膝に招き入れてくれる真凜ちゃん。


 お言葉に甘えて膝に頭を乗せる。


「耳かき耳かき耳掃除ー。私は掃除屋殺し屋犯罪者ー」


 ...どんな歌だよ。


「はぁーぃ、耳掃除されたい碧くぅーん。始めますよー。...おぉー、結構綺麗ですけどちょこっとだけありますねー」と、ちょうどいい力加減で耳掃除が始まる。


「...んっ、ここ...あっずれた...もうちょいこっちで...あっ!!落ちちゃった...」


 そうして、幸せな時間を過ごしたのちにゲームが始まる。


「さて!ナンジャモンジャ始めようか!てことで、予め罰ゲームとルールを決めよっか!罰ゲームは...そうだなー。今日一日中、相手の命令には絶対服従...でどうかな?」


「...かなり大きく出たね」


「もちろん!私は信じてるよ?もし、私が負けたとしてもそんなにひどいことは命令しないって...」と、目をうるうるさせながらそんなことを言う。


 可愛い...が、騙されるな!

俺は俺のやるべきことをするだけだ!


「追加ルールだけど、もし名前をつけた人がその名前を答えられなかった時は相手のポイントになるってこと。だから、適当な名前をつけると痛い目にあうよって話!」


「お、おう。りょーかいした」


 そうしてデッキがシャッフルされ、まずは俺のターンから始まる。


 出てきたのはスイカの柄をしたカードだった。


「んじゃ、こいつの名前は...スイカ王だな」と、安直な名前をつける。


「うふふ。シンプルだねー。碧くん」


「自分でも覚えられないような名前つけたらそれこそ本末転倒だからね」


「...そうだね」と、嫌な笑みを浮かべる。


 その笑みを意味は直ぐに分かることになる。


 2枚目を捲る真凜ちゃん。

出てきたのは1枚目とは異なるカードだった。


「それじゃあ、この子の名前は... Engel der Dämmerung」


「...はい?」


「だから、Engel der Dämmerungだって!」


 この時ようやく俺は過ちに気がついた。

そうか。この方法があったか...。


「さて、ゲームを始めようか。碧くん」

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