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第8話 コスプレまりんちゃん

「ね、昨日みたいにチューしよ?」


「...しません」


「えー!なんで!」と、ソファの上で地団駄を踏む真凛ちゃん。


「あれは事故というか、そうしなきゃいけなかったからしただけと言いますか...」


「私となんて事故じゃないとしたくないってこと!」


「そうじゃないけど...」


「チューしたいチューしたいチューしたいの!...チューがダメならデートしよ?」


「...誰かと会ったらどうするの?」


「モーマンタイ!ちょっと待っててね!」と、走り去っていく真凛ちゃん。


 ◇1時間後


「これなら分かんないでしょ?」


 まるで別人のようになった彼女に思わず言葉を失う。


 いつもの緩い感じではなく、鋭くとがったような姿をした彼女が立っていた。


「いつかこういうコスプレしようと思って買ってたんだけど、まさかこのタイミングでいきるとは...。あれぇ?もしかして、こういう感じの方が好きだったりする?」


「別にそんなんじゃないないけど...」


「碧くんは...変装しなくていっか!てか、面白そうだし、見た目に合わせた喋り方にしよーっと」


 そういうと、一回咳払いするといつもより低い声で「それじゃあ行きましょう。碧くん」と、ドSな笑みを浮かべる。


「ちょっと!」という俺の声も虚しく外にそのまま連れていかれるのだった。


「初デートはどこがいいかしら。水族館とか映画館が定番かしらね」


「定番はそこら辺かな。...てか、くっつきすぎじゃない?」


「勘違いじゃない?いつも通りだと思うけど?」と、さらに胸を肘に当ててくる。


 明らかにわざとやってる...。


「今、エッチなこと考えてるでしょ?本当お猿さんなんだから」


 というか、本当に別人に見えてまるで浮気しちゃってる気分になる...。


「別に考えてないし...」


「本当かしら?」


 そんな風に会話しながらひとまず、駅前に到着した。


「着いたわね。それじゃあ、ここからは碧くんがエスコートしてくれる?」


「何その無茶振り」


「人間はアドリブ力が大切なのよ。台本頼りの人生じゃ色々と困るわよ」


 でも、デートとかしたことねーし。

まともに女の子と遊ぶのだってこれが初めてなのに。


「そ、それじゃあ、とりあえず...ご飯食べに行こっか」


「0点。男なら無理やりラブホテル一択よ」


「どんなヤリチンだよ!」と、思わず駅前で大きなツッコミを入れてしまう。


「...声が大きいわ。まさか夜もそんなテンションで営む気?激しい夜になりそうね」


「...もういいです。とりあえず映画でも見に行こう、真凜ちゃん」


「真凜ちゃん?私の名前はメチャ・カワイイ・マリンよ。フルネームで言ってみなさい」と、そんな会話をしていると後ろから声をかけられる。


「あ、あの...!...山口くん...だよね?//」と、そこに居たのは七谷さんだった。


「あっ...七谷さん...」


「うん...。あの...」と、恐る恐る真凛ちゃんを顔を見ている。


 あ、あっぶねー!!変装しててよかったー!!


「...汐崎さん...ですよね?」


「「え?」」と、2人の声が被ってしまう。


「...汐崎?誰のことかしら?」と、冷や汗をかきながらそんなことを言う真凜ちゃん。


「え...。どうして嘘つくんですか...?」


「嘘なんてついてないわ」


「だって...その指輪...」と、真凛ちゃんの指輪を指差す。


「あっ...」と、素の声が出る真凛ちゃん。


 ◇


「...つまり...汐崎さんの結婚相手が...やまぐ...碧くんってことですか...」


「ま、まぁ...そうなんだよね」


「...結婚...してたんですね...でも苗字変わってないですよね...」と、悲しそうに呟く。


「う、うん...。色々と面倒なことになるから学校にもまだ言ってなくて...」


「...つまり、知ってるのは2人を除いて私だけってことですか...?」


「まぁ、そうなるね...。一応両親は知ってるけど」


 すると、少し俯いたあと、何とも愛らしい笑顔を見せたあと七谷さんはこう言った。


「へぇ...。じゃあ...黙ってる代わりに碧くんを頂けませんか?」


「...はい?」

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