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第49話 揺れ動く心と光る満月の夜空

「話、終わった?」


 駄菓子屋で買い物を終えた暁斗が小高塾のドアを開けて、入って来た。千晃と愛香は、手を繋いで、ラブラブな様子を暁斗に見せてはいけないと慌てて、ごまかした。千晃はホワイトボードでペンも持たずに泳ごうとする仕草をしたり、愛香は、窓際に移動して、窓が閉まっているのに開けたり閉めたりしていた。


「あ、あ、えっと……別に話なんてしてないよ。ねぇ」

「話してたっしょ。俺は分かる」

「……さてね。暁斗の想像力に任せよう」

「え? そういうこと言っちゃう? 膨大なハッタリ妄想しちゃうよ。あーやって、こうやって……」

「はいはい。ご自由にどうぞ。ほら、おはぎ食べるぞ。せっかくだから」

「あ、忘れてた。食べないとかたくなるから」

「……俺も食べる」


 3人は机に袋からおはぎのパックを乗せて割りばしをわって、舌鼓をうった。


「お、案外食べられるわ。甘すぎない」

「うん。そうだよね。ここの結構おいしいって評判なのよ」

「あんこめっちゃ好きだから。飲み物だわ」

「食べるの早すぎ。味わってよ」

「いいでしょうが、別に」


 言葉の端々に暁斗は寂しさを感じた。ここにいない方がいいのかなと察する。

 自分がいない間に何かあったんだろうと勘づいた。愛香の頬が赤くて笑顔が増えたことと、千晃の表情もこわばっていたのが柔らかくなっていること。暁斗は見逃さなかった。


「ごちそうさまでした。んじゃ、俺、帰ります」

「え、送っていくんじゃないのか」

「……何とか帰れますよ。子供じゃないですから」

 暁斗は、ズボンのポケットに手をつっこんで、塾を後にした。


(2人の中に入れるかって……気まずいっつーの)


 背中越しに2人が笑って話してるのが聞こえた。暁斗はもう、ライバルであることをあきらめることにした。

 おはぎを食べながら、愛香と千晃は、しばらく笑いながら外が真っ暗になるまで話をしていた。


 夜空に浮かぶ満月になるのを車に乗るときにチラリと見る。

 なんとなく、ここに来てよかったと愛香はほっと胸をなでおろしていた。

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