「白崎!!」
千晃と愛香の2人の姿を見てすぐに大きな声で暁斗は声を出した。想像以上に大きく声が出て、自分でもびっくりしていた。
「小野寺暁斗か」
千晃は、目を大きく見開いていた。愛香はどう説明すべきかと不安になり、千晃のシャツの裾を握る。その手が震えていた。
「そんな、おびえることでもないだろ」
「そうなんだけど……」
「あの……どうして2人は一緒にいるんですか」
「それはだな……」
「あたしから言うよ」
「あ、ああ。そうか。んじゃ、話しなさい」
急に先生っぽい態度になる。その姿にさらに暁斗の中に不信感が生まれる。
「2人は……つきあってるんですか」
「暁斗くん、実はそのことについてなんだけど」
「知ってるよ。2人が学校にいるときから付き合ってることくらい。全校生徒が知っていたんだ。校長がはっきり言っていたから」
その言葉に愛香と千晃は初耳でびっくりした。
「それは本当か?」
「うん。嘘は言ってない」
「……んじゃあ、その通りだよ。私は学校に通っていた時から千晃先生が好きだった。退学した今でも一緒にいるの」
「まぁ、見ればわかるよね」
不満そうな顔をして、暁斗は自転車のハンドルをぎゅと握る。
「それって、退学すればいいんだ。先生辞めればいいってことになるんだね」
「そ、それは……」
千晃は、青ざめた。かなり胸に刺さる。本当にいいのだろうかと不安になる。現実から逃げてきた。正解か不正解かなんてわからずに今まで突き通してきた気がする。千晃は、ふと自分自身を見つめ直した。
「俺の判断は本当にあっているかはわからない。でも、愛香は俺と一緒にいることを選んだ。俺も愛香と一緒にいることが当たり前だと思っている。それは誰に反対されようとも変わらない」
自信を持って言える。そう信じて言葉を発したが、果たして真実かどうか。本当の自分を失っている気がした。職が安定してないからだろう。
「そ、そうですか。はっきり言うんですね」
「ここは言っておかないな」
「ダメだと思うことを貫くのはすごいなって思います。尊敬します。でも、俺は、千晃先生よりも白崎を困らせるようなことをしない
自信があります」
「……暁斗くん」
「小野寺……それって」
2人は驚きを隠せずにいた。
「そうです。俺は白崎が好きです」
3人が佇む道路の脇をヘッドライトを光らせて、乗用車が走る。街灯のライトがぼんやりと光り始めた。