外見偏差値カンストオーバーの彼女は、愛の言葉を真に受けない
ヤナギメリア
異世界ファンタジー冒険・バトル
2024年09月04日
公開日
1.2万字
完結
魔法も銃も人外も、巨大なる鉄機兵も存在する世界。セズウィック。
転生の律が損なわれ、異世界転生者による託宣がままならない世界でも。生き物は争い。子を産み、育て。教えに集い、教えを守り、たくましく旺盛に生きていた。
そんなある日。マナギ・ペファイストの祖父は、託宣を孫に吐露した。
帰りたい。帰ってコンビニに行きたい。そう漏らしてしまった。
マナギはいつしか青年となり、それでも祖父の託宣を忘れていなかった。
相棒である無口なイケメン神官、クリス。
恋人未満、友達以上。魔法使いのレーナ。
推定外国人、言葉が全く通じない。今日も特別翻訳のツッコミが冴えわたる、タロッキ。
今日もいじわる明日もいじわる。馬のグリン。
好奇心と欲望、ロマンを求め続け、旅の果てに、ついに愚者へと立ち返り、本当にどんなモノにでもなってしまう者たち。
自らの昏む死すら時に欲する、欲深くて、欲深くて、欲深い者たち。
冒険者。彼らは冒険の旅に出る。手始めにざまぁしやがった野郎共に、散々中指おっ立てて、ざまぁしてひっかき回してから。
勘違いから始まる異世界ファンタジー!
ぷろろーぐ【コンビニ回】
爺さんから結局詳しく聞けなかったが、コンビニとは何でも売っているお店の名前らしい。
何でも売っている。素晴らしい事だ。きっと異世界では知らない者も居ない、世界一で、唯一無二の名店なのだろう。
きっかけは、些細なことだった。
俺の祖父は、いわゆる異世界転生者……リインカーと、呼ばれる人種だったらしい。
狂人の類いでなく、一応リインカー医療教会から認定されている本物だ。見せてもらった旅券帳にも、ちゃんと書いてあった。
幼い頃。よくわからない言葉で、よくわからない知識で、よくわからない事をしていて、人助けをして、あまり人と話さない人だった。
彼がある日。一言だけ呟いた。
「帰りたい……帰って、コンビニ行きたい……」
彼は向こうの言葉で、コンビニに来店して、いらっしゃいませ〜と、言われたいだけだった。
俺は心のどこかに、そんなどこにでもある思い出が、きっと心残りになっている。
今日も俺は愛すべきお客様に。……彼女に。
「いらっしゃいませ〜」と、挨拶をしている。