「キャサリン様」
侍従長が話があるといって呼び出したので、わたくしはやれやれと思いながら縦長顔つるっぱげの前に出向きました。
「ミルディのことなんですが」
「あの娘がまた何かしでかしたの?」
「いえ。ケイン皇子との結婚で持参金を用意できないらしくて」
「それはそうでしょう?民間出の何の後ろ楯も持たない娘ですもの」
「本当にそれでよろしいのか?」
ガタンっ!
突如、椅子をひっくり返して立ち上がる侍従長。
あーびっくりしましたわ!
「誰の目から見ても、ケイン皇子にふさわしいのはキャサリン様ではありませぬか!」
あー、あの人ね。もうどーでも良いのだけれど。
「ミルディを追い出してください!」
「なんでわたくしが?」
それでは完全に悪者ではないの?
わたくしの乙女の部分が泣いていましてよ?
「あなたにしかできません」
そう断言されても・・・
わたくしは、ミルディのもとに行って、侍従長が持参金を用意できないことで立腹している旨を伝えました。
「やっぱり、ケイン皇子との結婚は私には荷が重すぎます!」
ミルディは彼女なりにいろいろ追い詰められていたらしく、わたくしに「どうすれば逃げられますか?」とすがってきました。
「結婚してしまう前に、今のうちに逃げるべきでしょう?」
そう言うと、ミルディは身一つで命からがら皇室から逃げて行きました。
「いびり倒して追い出したね!」
ケイン皇子が血相を変えてやって来ました。
「全く身に覚えありませんわ!」
「侍従長もぐるだ!キャサリンと僕の婚礼を進めるっていってた!」
わたくしだって嫌ですわよ!
「ミルディには僕の子どもが出来ているかもしれないのに‼」
あんた、もう手をだしとったんかぁー!
こっちの話に聞く耳を持たないケイン皇子をほったらかして、わたくしはどうすれば自分もこの寒天頭から逃げられるか必死で考えていました。