ケイン皇子のお妃候補は多々いる中で、わたくしキャサリンこそがふさわしいと常々思って参りました。
わたくしはケイン皇子のいとこに当たるのですけど、血筋も家柄も申し分なく、どんな相手にもひけをとることはありませんでした。
ところが!
「僕の妻にと思っております」
そう言ってケイン皇子が紹介したのは、ぱっとしない、存在感の薄い、何の取り柄もなさそうな民間出の少女!
がく然とするわたくしに、「キャサリンは皇室のこと詳しいから彼女に教えてやってくれないかい?」と、破顔一笑、極上のスマイルでケイン皇子が頼んできたのです。
あまりのことに頭がくらくらします。
少女ミルディは恐縮しまくってドジばかりやらかします。
着なれないドレスで裾を踏みつけて、テーブルクロスに捕まってしまい、テーブル上の食事が全部床にこぼれてしまう始末。本人は気づいていないけれど、コック長の自信も粉砕して、ドレスに染みをつくったことで何十人もいるお針子たちの長時間の努力も水の泡。
なぜ?
なぜケイン皇子はこんな娘を選んだの?
毎晩枕を涙で濡らしながら日々が過ぎて行く。
「キャサリン様」
皇室の若い娘たちに取り囲まれて、なんでミルディなの!と苦情の嵐。
わたくしはよれよれになりながらケイン皇子に理由を伺った。
「彼女は僕の持ってないものを持っているからさ!」
「ですけど、ケイン様を支えて隣にたつのにふさわしい娘は他に大勢いますのに!」
「僕は一人でなんでも出来る。ミルディは誰かがついていないと駄目なんだ」
「それならなおさら!」
「そういう女性が好みなんだよ」
はあああ?
今になって、こいつ・・・じゃなかった。ケイン皇子のスライム頭を理解したような気がしたわたくしでした。