ブルース・イーリンとアベルカーナ・モッチンはやきもきとしていた。クロウリーとボンス・カレーの言っていることは将来の
将として感情に流されるのは最も危ないのではあるが、ブルースたちは何も戦場で感情を優先するわけではない。修業時代の2年を模擬戦の様相を見せながら、
そうだからこそ、クロウリーたちはバカ丁寧にブルースたちを説くのであった。だが、得てして、丁寧さが仇になるという経験をしている者は多いはずだ。ブルースたちはブルースたちで意固地になりつつあった。
「ん?
徐々に空気が悪くなっていく
しかしながら、元気のない夕顔のように
「エーリカ。こいつらどうしたんだ? エーリカのおっぱいを揉ませてくれと言い出したところを、けちょんけちょんにこき下ろしたのか??」
「うっさい! 揉むところが無くて悪かったわねっ! そうじゃないわよっ。普段の募兵がなかなか上手くいってないことで、クロウリーたちと言い争いになって、さらにはタケルお兄ちゃんがトドメを刺した形になっただけよっ」
「あっれ!? 結局、俺が悪いってことかっ! そりゃ、ふたりとも済まなかったっ!」
タケルの良いところは、進んで悪人になれるその素質である。エーリカにとっては、かなり面白くないタケルお兄ちゃんの部分である。タケルはなるべく争いごとを避けて通る人物だ。だからこそ、貴族たちとの折衝役として、クロウリーがタケルを指名したのだが、ちゃちゃっと物理の力で解決できることもあるだろうと思ってしまうヤンチャすぎるエーリカであった。
しかしながら、タケルの登場で、あわや一戦も辞さずといった雰囲気は執務室から一気に消え去っていく。タケルはしょげこむブルースたちを宥めつつ、こいつらはこいつらで考えがあるんだから、そこはわかってやれよとクロウリーたちに注意する。ブルースたちはタケルが取り持ってくれたことで、いくばくか心のモヤが晴れることになる。そして、意固地になっていた自分自身にも気づかされることになる。
「そんなに気負うなって。俺のように飄々としてろよ。お前らはエーリカの双璧の騎士なんだぞっ! お前たちが堂々とエーリカの両脇に立ってりゃ、兵数の少なさなんざ、どこ吹く風よっ!」
「そ、そうでござったなっ! 飄々というのはちょっと違う気がするでござるが、エーリカの騎士として恥ずかしくない勇者然とした立ち振舞いを見せねばならぬでござる!」
「うむ。それがしたちは無用な心配をしておったぞ。数は少なくとも、自分たちは皆、精強だと諸将たちに見せつければ良いのだっ! はははっ! それがしは何を迷っていたのだろうかっ!」
ブルースたちは元気を取り戻し、エーリカに恥をかかせぬために、まずは1週間後に開かれる諸将たちが集まる会合で着ていく服をしっかり見繕うと言い出すのであった。その話に乗っかるようにクロウリーとボンスが、カズマ・マグナ殿に相談しておきますと、仲介役を買って出る。
これにて、
クロウリーの右肩にチョコンと乗っているコッシロー・ネヅは、上手いタイミングで入出してきたタケルのことについて、クロウリーに質問するのであった。
「タケルは相変わらずタイミングを見計らうのが上手いのでッチュウ。あいつはあれを天然でやっているのが恐ろしいのでッチュウ」
「計算高いのなら、使いようもあるんですけど、タケル殿はド天然ですからね。タケル殿の顔に女難の相が出まくっているのは、これまた運命なんでしょうね」
「あいつは無自覚なせいで、昔から恋愛フラグを自分から折りまくる傑物なんでッチュウ、とんでもない奴でッチュウ。普通ならヤンデレと化した女性たちに刃物で腹と背中を同時に5カ所くらいぶっ刺されてもおかしくないんでッチュウけどね?」
「そうならないのも、彼の才能なんでしょう。先生たちが知らぬところで、貴族の娘から口説き落としてほしいという熱い視線をもらってないことを願うばかりです」
「貴族の娘ならまだマシなほうでッチュウ。そうなったら、タケルに責任を取らせて、ボクたちは親から軍資金をたんまり拠出してもらえば良いだけの話でッチュウ」
「さすがは真っ黒なコッシローくんです。先生もその手はアリだと思っているんですけど、実際に実行するとなると、その貴族を敵に回す可能性も捨てきれないタケル殿なので……」
大魔導士:クロウリーと、彼の
エーリカは長年の付き合いで、タケルお兄ちゃんに対しての期待値はかなり低い。わざわざクロウリーたちが念を押す必要性は今のところ、無かったのである。
それはさておき、各地で戦う歴戦の将たちを王城に招いての大会合が
「おれっちの見立てじゃ、こっちの服の方が目立つと思うんだがなぁ?」
「息子よ。派手さは確かに必要だ。だが、そこまで行くと悪目立ちになりかねぬ。覇気を纏いつつ、それでいて、野暮さが出ぬようにするのが肝要だ」
エーリカ、セツラ、そして