この世界にはあまたの神々が存在していた。
そのあまたの神々から見染められたものだけが地上の支配者として光帝として君臨することができた。
しかし光あるところには必ず闇が存在する。光帝の支配を快く思わない者たちが力を合わせ、光帝を光の座から無理やり引きずり落としてきた。
時には魔物を使役し、光帝の権威を失墜させた。
またある時には悪しき神々が天変地異を起こし、光帝の治世を不安定にさせた。
光帝は徳を体現する存在である。それゆえに天変地異は光帝の不徳が故に起きたとされてしまい、時の光帝は自分が治める国民の手によって、光の座から引きずり落とされた。
しかしながら長い年月を経ても、光帝は地上に暮らす人々を統治するだけの権威と正統性を保ちつづけた。それは善き神々たちが考案した光帝選出システムが人々を納得させるだけのものをしっかりと築いていたおかげであったのだろう。
この世界があまたの神々の手によって創られてから早2千年が経とうとしていた。その2千年間で善き神々も時代に合わせて少しづつ光帝選出システムを改良していった。その節目となる2千目で善き神々はそのシステムに新たな条件を付け加えた。
それは善き神々の使徒となる4人の偉大なる魔法使いたちであった。土・火・水・風のエレメンタルだけでなく光と闇すらもその身に宿る魔術で自在に操ることができる魔法使いたちである。彼らはその力を光帝選出のためだけでなく、光帝を補佐するためにも使った。
この結果に善き神々たちは満足しきっていた。だが、完璧と思えるシステムであったが、やはり神と呼ばれる存在であったとしても、神自体が完璧であったわけではない。それゆえに闇の存在が色濃く地上に現れてしまったのである。
皮肉なことに光と闇のバランスが善き神々の手によって崩れてしまったのである。光帝が素晴らしい人物であればあるほど、闇もまた力をつけざるをえなくなってしまったのだ。この世界が神々によって創られてから2千と4年が過ぎた時代、大きな争乱が地上界で起きることになる。
世界中を巻き込んだ大戦は地上界を大いに疲弊させる。しかしながら月日が経ち、段々と光と闇のバランスが取れていくことにより、地上界は復興への道を歩み始める。そして地上界が創造されてから3千年が経ったとき、地上界はひとと魔物が互いに憎しみを持ち合わせながらもどちらかが一方的に絶滅させられるような状況には陥らない嫌なバランスを構築することになる。
それからさらに400年が経とうとしていた。この物語はそんな光と魔が入り混じる世界でキラキラとした目で夢というには御世辞でもキレイとは言い難く、はっきりと言えば自分の抑えがたい欲をどうにかして満たそうとするひとりの少女の生きざまを赤裸々に綴っていこうと思う。