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2.謝意

三人称視点






「シェーメ・オーロ様。カケマ・ソラ様のご到着です」




 場はレグノ王国城内大会議場。


 王城の案内人によって開かれた扉から現れるは、オーロとソラの二人。




 二人は案内人に対し軽く会釈し、中へと入り場内を見渡す。




「やぁ、具合はもう良いのかな? 白金の英雄殿」




 そこには、ローミッド、ペーラ、ルーナ、メルクーリオの四人が既に席に座り、二人を待っていた。




「ローミッドさん! それに皆さんまで。お待たせしてすみません」




 室内へと入った空宙は、すぐに皆に向かって頭を下げる。




「気にせずとも。さ、こちらに」


「ソラさん、どうぞ」


「ありがとうございます」




 ローミッドとオーロに促された空宙は、奥の座席へと向かう。




「失礼します」




 席に座る空宙。 その時。




「あ、あの……どうかされましたか?」




 空宙から見て真向かいに座るルーナと。


 同じく右隣りに座るメルクーリオが、空宙のことを興味ありげに、まじまじと見ていた。




 あまりの視線に空宙が二人に尋ねると。




「いや……。未だにお前が国を救ったやつとは信じられなくてな……」


「あの時……は……私達は……気を失って……いました……から」




 ルーナとメルクーリオは怪訝な面持ちで空宙を眺めながら、返答する。




「同じく私もだ」




 更には。




「目が覚めた時には既に敵の大将はどこにもいなくなっていたし、遠くを見たらオーロが泣きながら君のことを抱いて呼び掛けてからな……。一体全体、何が起きたのかさっぱりだった」




 ローミッドの右隣りに座るペーラも空宙のことを見ては、当時の様子を思い出しながら喋り出す。




「…………」




 そんなペーラの話を聴きながら、ローミッドの左隣りに座るオーロは顔を赤らめ俯く。




「な、なるほど……」




 皆の心境を聞いた空宙はこの状況に納得するものの、周りからの慣れない反応に、少しばかり肩をすぼめてしまう。




「また、あの姿にはなれないのか?」




 そんな空宙に対し、ローミッドが真剣な表情をしながら空宙に白金のエレマ体について尋ねるも。




「それについては……。すみません、俺もよく分かっていないのです。どうしてあの姿になれたのか……。気付いた時にはあの姿になっていたので……」


「そうか……」




 空宙の返答に、ローミッドはほんの少しだけがっかりした表情を浮かべる。




「ご期待に応えられず、すみません」


「いや、気にしなくていい。私も当時は気を失っていて、君の話は目が覚めた後に部下達から聞いたものだったからね。また見れるのならば是非、と思っていただけだ」




 だが、ローミッドは落胆の表情からすぐに朗らかな表情へと変え、空宙に優しく話しかける。




「さて、雑談はこの辺りまでとして……。そろそろお見えになられる頃かな」




 そして、会議場の時計をチラっと見た。




 その時。




「失礼します」




 扉が開かれる音と同時、荘厳な声が会議場内に響き渡る。




「皆様、お待たせいたしました」




 会議場に入ってきたのはレム王とユスティ。


 両名が入ってきたタイミングで、空宙以外の五人が一斉に立ち上がる。




「っ!」




 それを見た空宙は、皆に合わせようと少し遅れて立ち上がる。




「よいよい。皆、畏まらず。特にソラ殿」




 その様子を見たレム王は着席するよう促すと。




「君には改めて礼を言わなければ。この度は、この国、延いてはこの世界の人々を救ってくれてありがとう」




 続けざま、空宙に向けて深くお辞儀をする。




「こ、国王さまっ!? どうかお顔を上げてください!」




 自身に対し一国の王が頭を下げたことに、空宙が大慌てになる。




「俺はただ、みんなを守りたいと思っただけで」


「それでもじゃ。今日、こうして皆に会って話が出来ることも。最愛の妻、大事な配下と語り合うことが出来るのも。君があの魔族を倒してくれたからじゃ……。本当に、ありがとう」


「国王様……」




 レム王の真摯な態度に、空宙はどう言葉を掛けたらいいか戸惑っていると。




「ソラ君。レム王もここまで仰っているのだ。ここは素直に気持ちを受け取ってほしい」




 見兼ねたローミッドが、空宙に一声掛ける。




「わ、分かりました……。ありがとうございます」




 空宙はローミッドの言葉に従い、ぎこちなくもレム王に頭を下げた。




 しかし。




「ですが」


「む?」




 空宙はすぐに頭を上げ。




「まだ闘いは終わったわけではありません。次に来るかもしれない魔族達に対して、一つずつ、今出来ることをしていかなければ」




 一度危機が過ぎ去ったとはいえ、全てが解決したわけではないと、レム王の顔を真っ直ぐと見つめる。




 ――……から……頂いた……最高傑作が……こんな……




 シュクルが死に際に放った言葉。


 気を失う直前その言葉をしっかりと聞いていた空宙は、意識を取り戻した後、この件を皆に伝えるようオーロに話していた。




 




 その恐ろしい事実に気付いた空宙は、今後更なる危険が迫り来る可能性があることを誰よりも危惧していたのだ。




「っ! そうじゃの。ソラ殿の言う通りじゃ。その為に、こうして今日集まったわけじゃ」




 空宙の言葉にハッとさせられたレム王は、すぐに表情を引き締め。




「では……ユスティ。頼んだぞ」




 自身の右腕として傍に仕える者に話を振る。




「はっ」




 それを合図に、ユスティが一歩前に出る。




「皆様、本日は御集りいただき、誠にありがとうございます。これより、軍会議を始めさせて頂きます」




 そしてゆっくりと、一同を見渡したユスティは。




「本日の議題につきまして」




 一度呼吸を整えると。




「エルフ国、”フィヨーツ”で起きた」




 次なる物語の。




「”生命の樹の転生”についてです」




 舞台を告げた。

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