「どういうことだよ……」
「何故、こいつが……」
やっとの思いで与えた一撃。
しかし、その先に待っていたのは誰もが予想だにしなかったもの。
シュクルからすぐ近くにいた烈志と彩楓が愕然とする。
すると、その時。
「-左雲!-」
「っ! 総隊長!!」
井後から彩楓に通信が入る。
「-左雲っ! 今すぐ皆をその場から退避させろっ!! こいつが装着しているものが銀と同じ性能ならお前達では分が悪過ぎる!」
「承知いたしまし「左雲ちゃんっ!」 っ!!」
井後との通信中、烈志に呼ばれた彩楓。
彼女はハッとし、前を見ると。
「闘いの最中に、余所見はまずいぞ」
真っ赤な瞳を持つ目が不気味に笑っていた。
「ぐっ!? あぁっ!!」
シュクルの拳が彩楓のエレマ体のコアに直撃。
破損したコアから大量のマナと電子を放出しながら、彩楓は仰け反り、後方に大きく吹き飛ばされる。
「まずいっ!!」
その様子を遠くから見ていた瀧が血相を変え、彩楓の下へ駆けようとした。 だが。
「そうはさせん」
「なっ!?」
今し方離れた位置にいたはずのシュクルが一瞬にして瀧の目の前に現れ。
「”
「なにっ!?」
瀧に向かい手を
そこへ。
「よくも二人をっ!!」
「馬鹿っ! お前っ!!」
反撃に出ようとした烈志がシュクルの背後から襲い掛かろうとするが。
「黙れ」
刹那。
「あああああっ!?」
シュクルは振り返ることもなく、烈志のエレマ体に大きな斬撃痕を付ける。
烈志は叫び声を上げ、何も出来ぬまま膝から崩れ落ち、俯せに倒れ込んだ。
「お、おい。お前ら……」
目の前で烈志が倒れるのをただ見ることしか出来なかった護。
「……誰も守れない楯役か。何を想う」
「っ! てめぇ!!」
そんな護をシュクルは憐れむような目で見つめる。
「そ、そんな……」
烈志、彩楓、瀧。
一瞬にして三人が倒される光景を目の当たりにしたローミッド達が言葉を失う。
「馬鹿な……。確かにあの斬撃は当たったはず……」
致命傷を負わせたと思いきや、平然と立ち続けるシュクルに対しローミッドが茫然としていると。
「斬撃? あぁ、これか」
声を聴いたシュクルがローミッド達のほうを向き、両腕を広げては自身のエレマ体表面に出来た痕を見せつけ。
「”
「――っ!」
たちまちに損傷箇所を直す。
「うそ……だろ…………」
傷など跡形も無く消え去ったエレマ体を見たローミッド達の顔が絶望に染まる。
「それじゃ……これまで私達がしてきたことは……」
「あぁ。 全ては無駄だったというわけだ」
オーロの言葉にシュクルが嘲笑う。
「ここまでの茶番、存分に楽しませてもらった」
「つまり……最初から全て……貴様らの掌の上だったと…………」
ローミッドが声を震わせる。
「当たり前だ。貴様らなど、私の足元にも及ぶわけがない」
シュクルが高らかに笑い。
「そこにいるゲーデュが言っていただろう? ”余興”だと」
侮蔑する。
「貴様ぁぁぁぁあ!!!」
「よせっ! ローミッド!!」
ローミッドは顔を真っ赤にさせ激昂し、シュクルに向かって突進する。
咄嗟にルーナが呼び止めようとするが。
「滑稽」
「グハッ……!」
ローミッドは攻撃を躱され、シュクルからの反撃を喰らうと、一太刀も浴びせられぬまま意識を刈り取られる。
「隊長っ!!」
「よせペーラっ! お前までやられるぞっ!?」
ペーラの悲痛な叫び声が戦場に木霊する。
傍ではルーナがローミッドの下へ駆け寄ろうとするペーラを必死に抑え込む。
その様子を見ていたシュクルが再び嘲笑う。
「ははははははっ! ……ん?」
その時。
「またお前か」
少年が死角からシュクルの首を狙おうとする。
だが。
「っ! 少年さんっ!!」
「ぐっ……! うぅ……」
初撃を躱したシュクルに首を鷲掴みにされ。
「死ね」
「がぁっ……」
バキッという鈍い音がしたと同時、少年は糸が切れた人形のように手足をだらんと下げ、そのまま地面に落下した。
戦場にいる全ての兵士達が絶句し、立ち尽くす。
「皆の者っ!!」
そこへ。
「諦めるでないっ!! 全員でかかれっ! 部隊長達を助けるのだっ!!」
王城からレム王の叫び声が戦場に響き渡る。
「う……うぉぉぉお!!」
兵士達が各々の部隊長を助けようと大声を上げ、一斉にシュクル目掛けて迫ろうとした。
その時だった。
「終わりにしよう」
シュクルが両手を自身のコアの前に当てる。
「っ! みんな来ちゃだめぇ!!」
オーロが皆に向かって叫ぶ。
そして。
「” ヘレス ” ― 破壊 ―」
シュクルが唱えた瞬間。
「っ!!」
戦場の全てを。
大きな爆発が襲った。
-エレマ隊基地本部制御室-
「……荒川」
「…………はい」
「あとは……頼んだ」
「……畏まりました」
エレマ部隊本部制御室 ステータス管理パネル上
「天下 烈志」
「右京 瀧」
「岩上 護」
「左雲 彩楓」
ステータス
【瀕死】