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第6話

「悠真!?」


 少し遅れて飛び出して行った悠真を追いかけようとする真彩だったが、


「真彩、興奮すると身体に障る。一旦落ち着け。朔、翔、様子を見て来てくれるか? 恐らく今は、俺や真彩が行くよりもお前らの方が適任だ」


 理仁に止められ、悠真の様子を見に行くのは朔太郎と翔太郎の二人に任せられた。


「……朔太郎くん、翔太郎くん、お願いします……」


 真彩も気にはなるものの、理仁の言う通り、今は自分が行かない方が良いと判断し、改めて二人にお願いした。



「悠真、入るぞ?」


 悠真が逃げ込んだのは朔太郎の部屋。


 朔太郎と翔太郎は返事が返ってこないものの、そのまま室内へ入って行く。


「…………」

「悠真?」


 入って来てもなお悠真は呼びかけに答えず、顔を伏せたまま部屋の隅に座っていた。


 そんな悠真の姿を見た朔太郎と翔太郎は顔を見合せると、


「悠真、何で飛び出して行ったのか、理由を話してくれないか?」


 先に口を開いたのは翔太郎の方で、言いながら優しく頭をポンと撫でた。


 それに身体をピクリと震わせた悠真は、ゆっくりと顔を上げると、


 瞳に涙を溜めながら二人に向かって訴えかけ、


「だって……だって……、赤ちゃんがいたら、ママもパパも、ゆうまのこと、すきじゃ、なくなるでしょ? そんなの、やだぁ……」


 涙を流しながら、翔太郎に抱きついたのだ。


「一体どうしたんだ? 赤ちゃんが出来たからって、パパやママが悠真を嫌いになるはずないだろ?」

「そうだよ、二人は悠真の事をいつだって大切に思ってるだろ? 好きじゃなくなるはずないって」

「でも……っ、こうたくん、いってた……赤ちゃんいると、ママやパパをとられて、いつも一人になるって……」


 そして、悠真のその言葉で二人は何となく状況を理解する。


 どうやら悠真の友達にも兄弟が出来た子がいるようで、その子から兄弟が出来るとパパやママが赤ちゃんにかかり切りになって孤独を感じてしまう事を聞いていたのだと。


 それを聞いた上で翔太郎は、


「……確かに、悠真が不安に思ってる事は分かる。実際、俺もそうだったからな。悠真、俺の話を聞いてくれるか?」


 自身が『兄』という立場である事を踏まえ、過去に悠真と同じ思いをした事があると話した上で、自分の話を聞いてくれと頼むと、


「しょうも、ゆうまと、同じ?」

「ああ、そうだ。俺も朔太郎のお兄ちゃんだからな、朔太郎が生まれた時は、色々と思う事があったんだよ。だから、それを聞いてくれるか?」

「……うん、きく……」


 自分と同じだと分かると悠真は涙を拭いながら翔太郎の話を聞く事にした。

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