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第2話

「最近学校で風邪が流行ってるって、お知らせのプリントにも書いてあったものね。今行くわ」


 理仁の事も心配だけど、今は悠真を優先しなければならない真彩は気持ちを切り替えて朔太郎の部屋へと向かって行く。


「ママ……」

「大丈夫? 今日は学校休んで病院行こうね」

「びょういん、やだ……」

「でも、辛いの治らないと困るでしょ? 学校にも行けないよ?」

「それもやだ……」

「大丈夫、ママが付いてるから、一緒に行こうね」


 熱があって辛いのと病院に行きたくないと嫌がる悠真を宥める真彩。


 結局病院に行った悠真はウイルス性の風邪で暫く学校を休む事になり、真彩自身も体調が優れないものの原因が分かっている事もあってまだ大丈夫と自分の事は後回しで悠真の看病をしていたのだけど、


(……凄く怠いし、身体も重い……)


 思っていたよりも体調の悪化が激しく、


「姉さん、そろそろ俺が変わりますよ……って、姉さん大丈夫ですか!?」

「……朔太郎くん……」


 真っ青な顔でうずくまる真彩を前にした朔太郎は慌てて駆け寄った。


「ちょっ……え!? あ、そうだ、救急車呼ばなきゃ!」

「だ、大丈夫! 大丈夫だから、救急車は、呼ばないで……」


 慌てふためく朔太郎が救急車を呼ぼうとするのを全力で止める真彩。


「いや、だって……」


 まだ黙っていようかと思っていた真彩だけど、朔太郎のこの慌てようと、検査の為に病院へ行く事になれば送迎をしてくれる彼には分かってしまう事だと思い、


「大丈夫、病気じゃないから……。その、実はね、子供が……出来たみたいなの」

「…………へ?」

「あくまで検査薬でだけの事だから確実……ではないけど、症状からしても間違いない、と思う……」

「こ、ども…………そ、そうなんスね! それはおめでとうございます! あれ? でもそれ、理仁さんは知ってるんスか?」

「ううん、まだ……。病院で検査して貰ってから、言おうと思ってるの。忙しくしてるのに、万が一違ってたら申し訳ないから」

「そ、そうか。……いや、でも何ていうか、こんな大切な事を俺なんかが最初に聞いちゃって、良かったんスかね……」

「朔太郎くんには車を出してもらう事になるから、どの道初めに話す事になってたと思うの。だから気にしないで」


 真彩と話す朔太郎は、喜ばしい話なのに彼女が浮かない表情をしているのが気になったものの、


「それはそうと、俺が悠真見てるんで! 姉さんは部屋で休んでください! 無理は禁物ッスよ!」

「ありがとう、それじゃあ、少しだけ休ませてもらうね。何かあったらすぐ呼んでね」


 今は未だ顔色の優れない真彩を部屋で休ませるのが先決とその場では浮かない表情の理由を聞く事をしなかった。


「――そうか、やっぱりな」


 真彩が部屋へと戻ってから数十分後、悠真の部屋に翔太郎がやって来たので、先程真彩から聞いた話を兄である彼に話した朔太郎。


「え? 兄貴知ってたの?」

「いや、そもそも気付いたのは俺じゃない」

「え? あ、もしかして、理仁さんは既に気付いてた?」

「そうだ。それで真彩さんの事を気を付けて見て欲しいと言われていたんだ」

「そうだったんだ。けど、どうして姉さんはあんな浮かない顔してたのかな?」

「うーん、そうだな。まあ妊娠というのは女性にとって特に重要な事なんだろうし、不安になる事もあるんじゃないか?」

「まあ、それもそうか。嬉しいだけじゃないよな、きっと」

「ああ。その辺は俺たちには分からないんだ。今はとにかく真彩さんが無理しないように俺たちで見守るしかないさ」

「だな!」


 翔太郎と朔太郎は忙しくてあまり家に居られない理仁の代わりに真彩のサポートをしていこうと誓い、熱で苦しむ悠真の看病を続けていた。

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