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第2話

「到着しました!」


 自宅から車で約一時間、市街にある大型ショッピングモールに辿り着く。


 同行者は朔太郎と翔太郎の二人で、理仁や真彩たちから少し離れつつも何かあればすぐに対応出来る距離を保ちながら付いて回る。


「何処から見るんだ?」

「おもちゃ!」

「そうか、ならまずは玩具屋……三階のようだ」

「はやく、はやく!」

「ちょ、悠真、走ったら危ないよ?」

「あれ? さくは?」

「朔太郎くんはお仕事中だから……」

「さく、いた! さーくー!おんぶして!」


 悠真は朔太郎の事を気に入っていて、車では一緒に居たのに店に入るなり姿が見えなくなった事を気にしていたようだが、離れた所に控えていた彼を見つけるなり一目散に走り出す。


「見つかっちまった……。すいません、理仁さん」

「さく! おんぶ!」

「いいから、悠真の好きにさせてやれ」

「分かりました! ほら悠真、乗っていいぞ」

「わーい!」


 そんな訳で結局五人で見て回る事になったのだが、どこか威圧感のある理仁、朔太郎、翔太郎が揃うと心無しか周りが距離を置いていくように感じる真彩。理仁もそれを感じとったようで、


「朔、翔、お前ら二人に悠真の事を頼む。欲しいと言う物は何でも買ってやれ」

「そんな! 一つで十分ですから……」

「遠慮なんてしなくていい。子供の玩具くらい大した額じゃねぇんだから。頼んだぞ、二人共」

「了解ッス!」

「分かりました……それで、兄貴たちは?」

「俺は真彩と他の物を見て回る。二時間後、駐車場で落ち合おう」


 皆でぞろぞろ回るより二手に別れた方が効率も良いのと周りからの視線も気にならないと考えた理仁は、悠真を朔太郎と翔太郎に任せ、自分は真彩と買い物を済ませる事に決めた。


「真彩、何から見るんだ?」

「え、えっと……それじゃあ、悠真の服を見たいので子供服売り場に行っても良いですか?」

「ああ」


 玩具を買って貰える事が余程嬉しいのか、悠真は真彩と別行動になる事を悲しみもせず笑顔で朔太郎たちと売り場へ向かって行き、それを見送り二階へ降りて来た真彩と理仁は悠真の服を見る為に子供服売り場へと歩いて行く。


「おい真彩、ここに子供服は売ってる。見ないのか?」

「いえ、ここのブランドの服はその、値段が結構しますから、別のお店に行こうかと」


 通りがかった子供服店を素通りしようとする真彩を不審に思った理仁が問い掛けると、この店は結構値段がするようで別の店に向かおうとする。


「さっきも言ったが、値段は気にしなくていい。別に高価な物を身に付けろと強制はしないが、一着や二着くらい多少値の張る物を身に付けてもバチは当たらねぇんだ。見るだけはタダなんだから覗くだけ覗いて、悠真に似合う服があれば買ってやれ」


 真彩が遠慮している事が分かっている理仁はどうすれば彼女が遠慮をせずに好きな物を選べるのか、言葉を選びながら口にしていく。


「……ありがとうございます。それじゃあ、少しだけ覗いてみますね。実を言うとここの洋服って良いデザインの物が多くて、悠真にも着せてみたいなって思ってたんです」


 そんな理仁の意向を汲んだ真彩は遠慮してばかりも申し訳ない事に気付き、気を遣わせないよう多少は甘えようと考えを変えた。


 それから何軒かショップを回って子供服や日用品など、生活に必要そうな物を買い込んだ真彩たち。


 真彩が時計に目をやると、そろそろ朔太郎たちと落ち合う時間になる事に気付いた。


「沢山買って下さってありがとうございます。そろそろ時間ですし、戻りましょうか」

「確かに沢山買い込んではいるが、真彩、お前自分の物は全然買ってないじゃねぇか」

「そんな事ないですよ? 必要な物は全て買いましたから」


 理仁の言う通り、見て回っていた時間の殆どは悠真の為の物で、真彩の物と言えば下着や最低限生活に必要な物しかない。


「私の服は持っている物を気回せば十分ですから。みんなもう駐車場に戻ってるかな? 悠真が迷惑を掛けているといけないので戻りましょう」


 けれど真彩は持っている物だけで事足りると言って全く興味を示さず、駐車場へ戻る事になった。

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