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第98話 冒険者協会探検!

「おい!」

「なんだい?」


カデリアスは友人の呑気な返事にため息をついた。


「どうして、冒険者協会の内部はこんなに入り組んでいるんだ?」


現在、カデリアスとジュリスは薄暗い洞窟、否、先が一向に見えない地下を突き進んでいた。


「侵入者防止のためかな」

「それにしたって、冒険者協会所属の人間が簡単にたどり着けないのはどうかと思うが…」

「いつもは違うんだよ。今はほら、侵入者監禁モードに入ってるから」

「監禁モードって何なんだ?もう少し良いネーミングがあっただろう?」

「まあまあ、そこはどうだっていいじゃないか。幸い、俺はこのモードでも道は把握してるから」

「本当だろうな。さっきから同じ所をグルグル回っている気がするが…」

「とんでもない。気のせいだよ。これでも一応、冒険者協会の中で一二を争う猛者だぞ」

「自分で猛者という奴ほど信用ならない」

「ひどいな。友人に向かって…」


ジュリスはいつもそうだ。

のらりくらりとやり過ごす。

どこまでが本音なのか長い付き合いでも分からない。


「そんな態度だと、あのお嬢さんに嫌われるぞ!」

「ここでクラヴェウスのご令嬢の話はやめろ!」

「誰の事かは言ってないのに…」


コイツ!一回、殴ってやろうか!」


そんな事をカデリアスが考えている間にもジュリスは足を止めない。


「確か、この辺りだったと思うが…」

「何が?」


ジュリスが壁を叩いていけば、魔法陣が姿を見せた。


「記憶は正しかったね」


ジュリスが笑ったのと同時に体が浮き上がるのが分かる。

足元に感触がよぎった瞬間には入口のない部屋へと飛ばされていた。


「ここは?」

「冒険者協会で最も安全な保管庫。入れるのは一部の冒険者だけだ。さて、首輪は…やっぱりないか」


部屋の中央にそなえられた長方形のモニュメントが目に入る。

その上部におそらく、首輪を収めていたのだろう。

しかし、そこはもぬけのからだ。


「やはり、持ち逃げされたか…」

「だから、それはあり得ない。冒険者協会の防犯システムは完璧だし、逃げ出せば魔法の痕跡が残る。いや、この場合は邪力か。うん?分かるか。カデリアス」

「ああ、匂うな」

「さすがはカデリアス…。やっぱり、お前は冒険者の方が似合うと思うぞ」

「その話は何度としたはずだ」

「やれやれ、相変わらず相いれないな」


軽口を叩きあっている間にも視線は部屋の隅々まで見渡していた。

それはジュリスも同じだ。

この部屋のどこかに侵入者が隠れている。入ったのは良いが出られないのだろう。

とんだ間抜けだが…隠れるのはうまいらしい。


「さて、どうする?冒険者様?」

「ここは少し荒技で行くかな」

「お前が本気を出したらこの空間、壊れるじゃないか?」

「大丈夫だよ。この部屋は魔法の耐久に何より力をかけているから」

「それに本気は出さないさ。何せ、お前がいるからな」


その言葉と同時にジュリスは自分の体の倍はある大剣を出現させ、思いっきり振り下ろした。

部屋中にまばゆい光が立ち込めた。


闇に隠れている者の邪力を跳ね飛ばし、光の中へと引きずり出すように…。


その賊の姿はカデリアスの目にもはっきりと映る。

顔は布で隠れた真っ黒な装束を身にまとった謎の人物。


「一人か…」


だが、手練れである事は見て取れる。何より、素早い。

ジュリスの攻撃を寸前のところでかわしている。

カデリアスは二人の様子を眺めていた。


さて、どうするか?


俺は刑事で戦闘狂ではない。だが、それでも幼少期から訓練は受けてきた。

それこそ、相手を殺す事に特化した物だ。


しかもそれは…。


カデリアスは手練れの人物の隙を伺っていた。

そして、その時はやってくる。

両手の指先を揃えて、意識を集中させる。

その力の矛先はターゲットへと移す。

侵入者の頭上に紫色の陣が出現し、押しつぶした。

何が起きたのか分からない様子だが、顔にかぶせてあった布がはぎとられ姿がさらされる。

それなりに若い男だ。


「なぜ、冒険者協会に邪力を使う者が…」

「一緒にするな。これは邪力とは異なる」


まあ、魔法とも違うがな。だが、コイツに言った所で違いが分かるはずもない。


「お前は何者だ!首輪はどこへやった」


ジュリスが剣先を侵入者へと向ける。


「知るか!隠したのはお前達の方ではないのか?」

「何を言っている!」

「俺が来た時にはすでにも抜けの空だった。全く、とんだ無駄足だったよ」


カデリアスは侵入者の襟もとを掴む。


「嘘を言うな!」

「逃げられないのに今さから嘘を言ってどうする?」


余裕を装う侵入者だが、その言葉は真実だと直感がそう告げていた。

警官としての経験もあるかもしれない。


「お前達こそ、賊が入る事が分かっていたのか?」

「何?」

「首輪が収められていた場所からは魔法の気配がする。さすがは冒険者協会。鼻が利く」

「本当にお前が盗んだのではないのか?」

「なるほど…。お前達も何も知らないのか?魔法協会に裏切り者がいると言う事か…。それとも…」


ニヤリと笑った侵入者だが、


「うっ!」


突然、苦しみだし、うめき声をあげながら、意識を失った。

咄嗟に脈を図るが、動いてはいない。


自決か?


それとも失敗した時のための保険として命を絶つ邪力を込めていたのか。

何もかもが謎だ。しかし、今はそれは重要ではない。


「冒険者協会に裏切り者がいる?」


ジュリスは冷静だった。

モニュメントに視線を移し、手で触っていく。

奴の指先はとても敏感だ。探知に向いている。


「この魔法の気配は…」

「どうした?」


ジュリスの目が鋭くなったのに気づく。


「まだ、信じたくはないよ。まずは確かめてからだろう」

「じゃあ、戻るか」

「ああ…。これが公になれば、冒険者協会の歴史上稀に見る大スキャンダルになるかもしれない。現役の冒険者で未だかつて裏切り者が出た事はないからな」


それは本当か怪しいが…。

仕方がない。

これは窃盗事件だ。

最後まで付き合うしかない。

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