そんなこんなで、私は無事狐宮の家族になることとなった。
縁側に腰掛けて、千里さんの持って来てくれたおまんじゅうを食べる。
「葛さんは、お母さんのことをすごく大切にしていたんですね」
「だったら素直にそう言えばいいのに、拗らせてことはに八つ当たりするとか。当主とかいう前に大人げない」
御咲くん、今日はなんだか辛辣……。
「結局、兄貴はめちゃくちゃシスコンだったってことなんだよね」
「シ、シスコン?」
「兄貴は姉さんが大好きだったんだよ。たった1人の妹、可愛くて可愛くてしょうがないのに人間に奪われたから嫉妬してたってこと」
ドタドタと廊下を走る足音が聞こえてきた。
「誰がシスコンだ!」
「ウワサをすればきたきた。シスコン以外のなにものでもないよ」
「兄が妹を想うのは当然だろう!」
真っ赤にして掴みかかりそうな勢いで、葛さんは千里さんに食って掛かっていた。
その横で、御咲くんは冷静にお茶を飲んでる。
「と、止めなくていいの?」
「いつものことだから。それに、兄貴は素直じゃないからね」
「御咲! お前まで兄に向かって……!」
お母さんのおかげでみんな仲良くなったかと思ったけど、ケンカはまだまだ続きそう。
でも、ケンカするほど仲が良いって言うもんね。
「おい」
急に葛さんの視線が私に映った。
「午後は村に出るからな。支度をしておけ」
「え……どこに行くんですか?」
「村の者たちに、お前が新しい姫巫女で、我が家の一員だと挨拶に行く」
驚いてる私に、御咲くんが「良かったな」と囁いてくれた。
頬がポカポカしてくるのが、自分でもわかる。
「行くぞ、ことは」
「はいっ!」
私は狐宮の姫巫女。銀狐です。
おわり