「行くとこがないなら、うちに来なよ」
お母さんのお葬式の日、初めて会った叔父さんにそう言われた。
物心つく前にお父さんが死んじゃって、ずっとお母さんと暮らして来た。
でもそのお母さんも先月死んじゃった。私の小学校卒業を待たないで。
お葬式にはお父さんの方の親戚が来てくれて、私の今後を話し合った。
どこの家も子供がいたり仕事があるから、私を完全に引き取ることはできない。
数ヶ月ごとに親戚の家を転々とすることに決まりかけた。
でもお葬式に、お母さんの弟2人がきてくれた。私から見ると叔父さんだ。
お母さんに兄弟がいるっていうのは聞いてたけど、会うのは本当に初めて。
家に来るよう言ってくれたのは、お母さんのすぐ下の弟・
そして卒業式の次の日、私は電車に乗ってお母さんが生まれ育った家に向かってる。
窓の外に流れる山がどんどん近づいてくるのにしたがって、お客さんはどんどん降りて行く。
ついに、車両には私1人。
『次は終点、
アナウンスが聞こえて来て、私は網棚に上げてたリュックを下ろした。
リュックのチャックが少し開いていて、そこからするんと1枚のカードが滑り落ちる。
「うわっ、危ない危ない」
慌てて拾い上げて汚れをはらう。
桜の花のカード。病院のベッドで、お母さんが最期にくれた桜の花を押し花にして作ったもの。
お母さんの形見だ。
今度はリュックの奥に入れて、しっかりチャックを締める。
電車がガタンと止まって、ドアが開いた。
『ご乗車ありがとうございました。終点、狐ヶ峰村駅。狐ヶ峰村駅です』