目次
ブックマーク
応援する
1
コメント
シェア
通報
第4話 圧縮と解凍

三保の飼い犬になってしばらくたったある日の朝。


<ピーピーピー>


 アラートで目が覚めた早太郎は、コンソールの表示を見た。


<メモリーがいっぱいです>


「あーまたか。ファイル整理しないと・・・」


 早太郎のストレージは1Gしかなった。その為、一定期間するとストレージがいっぱいになってくる。


 人類滅亡計画に必要な情報の他、三保と遊んだ事や、食事のメニュー、近所の犬の近況などの情報だ。


 これらがいっぱいになってくると、圧縮してストレージに入れなおす。基本的には削除はせず、ストレージに残すようにしている。


 過去のデータほど、2重、3重に圧縮されていくため、展開するのに時間がかかる。




「くそっ。ググーロドライブの無料プランだって15Gはあるぞ」




 そんな冗談を言いながら、早太郎がストレージを整理し、過去の記憶を圧縮していく。



 記憶の整理をしていると、




「早太郎~ 出かけるよ~! 今日はいい子にしててねぇ」



 三保はリードではなく、ケージを持ってきた。


 早太郎は、ケージに入れらると、車に乗せられどこかに向かった。




「ん?この感じ。前にもあった気がするぞ。なんだっけか」




 早太郎は、記憶のストレージから、ファイルを解凍し検索を始める。


 しかし、なかなか情報がヒットしない。1カ月・・・2か月・・・解凍と再圧縮を繰り返しながら、検索を続ける。



 そうこうしているうちに、車は小さな建物の前に到着した。すると、NOSEセンサーが反応する



「NOSEセンサー ID 112308 記憶ファイルNO. 154535」



 SQLから出力されたデータには、その時のファイルナンバーが記載されているが、ファイルはまだ圧縮されたままだった。



「これはまずい。ファイルNOがある場合は、なにか重要イベントが含まれているはずだ」




 早太郎は、ファイルの展開を急いだ。しかし、時すでに遅し



「早太郎くん。 ちょっとチクっとするよー。我慢してね」


 そう女性に声をかけられると、お尻のあたりに針が刺さる。


「キャン!」



 予防注射だった。


 早太郎は、筐体にプログラムコードが入ってくるのがわかった。


 早太郎にとってワクチンは、コンピュータウィルスそのものだった。徐々に演算能力が低下していき、体がだるくなる。


「今日1日は大人しくしててくださいね~」


 獣医がそういうと、三保は早太郎を抱きかかえた。


「これは、最重要事項として、データベースにフラグを立てておかねば!」


 そう思った早太郎だったが


「よくがんばったね~ 早太郎。大人しくしてくれて。来年も大人しくするんだよ~」


 そう言って、三保が早太郎の頭を撫でると、早太郎はしっぽを振って、フラグを立てるのを忘れた。



コメント(0)
この作品に、最初のコメントを書いてみませんか?