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 一つ問題が解決したと思えば、また新たな問題が増える。


 でも、もう考え込んでいる時間はなさそうだ。麗華が姿を現して、瑛斗は眠ったままになってしまった。


 まさか、こんなことになるとは思っていなかった。これはもう、僕の手に負えない状況だ。これ以上は、どうしたらいいのかが分からない。


 僕は社長室のドアをノックした。


「どうぞ」


「失礼します……」


 ドアを開けて目が合うと、神原社長は眉間にしわを寄せた。


「また辛気臭しんきくさい顔をして。どうせ、仕事のことじゃないんだろう?」


「えぇ、まぁ……そうですね」


「ここは一応、会社なんだけどねぇ。いつから、あんたの相談所になったんだい?」


「分かっています。分かってるんですけど、解決しないと、仕事にならないんです」


「全くこの子は! ……早く座りなさい」


 神原社長は大きなため息をついた。なんだかんだと言いながらも、いつも話を聞いてくれるので、ありがたい。


「それで? 護符はちゃんと渡せたのかい?」


「はい。奥さんにお願いして、身につけさせるようにしてもらいました」


「それなら、良かったじゃないか」


「そうなんですけど……。実は昨日、友達の家にいる時に、あの女性が現れたんです。夢の中よりも禍々しい気配を感じて、予想以上の化け物だと思いました。信じられないかも知れませんけど……あの女性は、人間の魂を、子供に与えていたんです……」


「なんだって? 子供に与える……?」


 神原社長は顔をしかめた。


「はい。子供は普通の霊なんです。だから、何もしないと……死んだ時の状態に、戻ってしまうんだと思います。顔が半分潰れて、首は折れ曲がった状態だったので。でも、人間の魂を食べさせたら、怪我が治ったんです。崩れて行くのなら分かるんですけど、治るなんて、普通はありえませんよね?」


「姿は魂の状態にもよるけど、生きている人間のように、回復はしないさ」


「そうでしょう? 魂を抜くだけでもありえないのに、それを持って帰って子供に与えるなんて……。完全に化け物ですよ」


「魂を持って帰るって……どうやって持って帰るっていうんだ」


 ——そう。普通はそんなことはできないはずなのだ。肉体から離れてしまった魂は彷徨さまよい、その内に成仏するものだと思っていた。でも麗華は、その魂を、自分の元に留めておくことができるようだ。


「あの女性は、アンティークのランタンみたいなものに入れていました。最初は、ガラスが青いのかと思っていたんですけど、大きな蛍みたいな感じの、青い光の玉が飛んで……」


「それが、人間の魂だったと」


「はい」


「そんなのは聞いたことがないよ。それに、なんで、その青い光の玉が、魂だと思ったんだい?」


「あの女性が、そう言ったんです」


 僕が答えると神原社長は、ふぅん、と鼻を鳴らす。


 実際に、目にした僕が信じられないことだと思ったのだから、こんな話をされても困るだろうな、とは思う。


「魂入れの儀式はあるけど、それは物に魂を宿らせるものだから、少し違うような気がするねぇ……。魂入れを応用したものなのか……。どちらにしても、吐き気がする程、気持ちが悪い話だよ。それと、その女の家は、普通の家ではなさそうだね。何かの、呪術を使うような家だったんだろう」


「僕も、そう思います。子供と一緒にいるために、自ら死んだと言っていましたから。それと、ちょっと困ったことが起きて……」


「まだこれ以上、何かあるのかい?」


 神原社長は、苦いものでも噛み潰したかのように、顔を歪ませた。

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