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第三十話 現着

俺たちがトラックを降りると視界に入ってきたのは慌ただしく動き回る将兵達だった


「そっちの貨物は3番搬入口に!」

「いつまでチンタラやってんだ!積み込み終わったら仕分けだ!」

「食料と武器弾薬は最優先だ!嗜好品は後回しで構わん!」


延々と弾も撃たずに睨み合いを続けている前線とは大違いだ。

兵士たちは下士官から左官級に至るまで各人が下は長ズボンを捲り上げ、上はタンクトップ一枚という格好で汗をダラダラと流しながら仕事をしている


「こちらです」

俺たちを案内してきた兵士はトラックの運転席から降り手招きして案内してくれる



彼についていくと少し大きめの天幕に通された

天幕の中は湿気と熱気とがこもっており、お世辞にも長居したい場所とはいえなかった

その奥で小さな床几に腰掛けウンウンと唸る巨漢の姿があった


ってかなんだあの巨漢。漫画でしか見たことない筋肉のつき方してる

流石に範◯刃牙みたいなどんな筋トレをすればそこに筋肉がつくんだ?みたいな感じではないが、終◯のワルキューレに出てきそうな筋肉はしてる。

正直言って化け物だろアレ、幽霊とかよりもよっぽどこいつの方が怖え


俺たちを案内した兵士は一歩前に出て敬礼をする

「失礼します!バラト大佐!ルーク伍長以下、分隊員の皆様をお連れしました」

すると巨漢はツルツルの頭をパッと上げこちらに向くと眉間にこめていた力を少し緩めぎょろりと俺たちを睥睨した

「あぁ、ご苦労。下がってよし」

「ハッ、失礼致します」


思いのほか彼の声は冷静なもので想像していた熱血漢のような印象は受けなかった

ただその反面腹の底に響くような荒々しい声でもあった


「伍長、足労願って悪いな。任務の内容は聞いてるか」

「ハッ、ネズミ退治と聞き及んでおります」

「あぁ、そうだ。だが、ただのネズミと侮るなよ?逃げ足もはやけりゃ人も殺すぞ」


俺の返答を聞くとバラト大佐は顎を撫でながら見定めるように俺の目を見つめてくる


「ただの物資をちょろまかす小ネズミではないのですか?」

「先日まではな。だが昨日の夜、便所に立った憲兵のやつが朝になって死体見つかったのよ。胸の真ん中を短刀でぶすりだ。ま、憲兵なんてのは、はなから大嫌いだからいい気味だけどよ」


(おいおい、そんな物騒な話聞いてないぞ。あくまで簡単なネズミ退治じゃないのかよ)

そう心の中で文句を垂れたが、そんなことはおくびにも出さず済ました顔で答える

「それは物騒ですね。よほど大きな歯を持ったネズミとみえる」


するとバラト大佐は片眉をあげ不敵に笑ってから言葉を続ける

「そこで、諸君らには件のネズミの捕縛ないし駆除を頼みたい」

「その任、謹んで拝命いたします」


俺のその返答を聞き、彼は満足そうに頷きニコリと微笑んだ……ように見える

正直、あの巨漢具合で微笑まれても猛禽類ににらまれている様にしか見えない


「あぁ、早速だが夜の哨戒の任についてもらう。それまでは宿舎を宛てがうから、そこで移動の疲れを癒してくれ。」

「ハッ!それでは失礼いたします」

「頼んだぞ」


俺たちは天幕を出るとまず重い荷物を下ろすために宿舎の方に向かった。


宿舎は一見すると学校のようになっており、教室のようなところに寝具が置かれ廊下にあるトイレは兼用だった。


「意外と清潔なようにみえるね。トイレもあんまり匂ってこないし」

とルイスは嬉しそうに独り言を漏らす

確かに住み心地はそれなりに良さそうだった


「で、どうする?夜までの間は自由行動だけど」

「私はこの補給基地の散策に行ってくる。使えそうなものがないかも見てこよう」

「僕は少し寝るよ、移動が多くてもうくたくただよ」

なるほど、ルイスはまだまだ元気なようだ。

俺もルイスと一緒に散策に行こうと思ったが、俺も久々に沢山移動したから疲れた


「俺もここで休むよ」

「そうか、なら私は一人で行ってこようかな」

と、少しルイスは寂しそうにしながらもドアを開けて出ていった


たまにはベルくんとお昼寝も悪くない

そう思って彼の方を見るともうすでに自分のベッドに陣取り寝息を立てていた



俺は少し苦笑いでため息を吐くと2段ベッドの上の段に登りカーテンを閉めた




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