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第二十七話 訓示

前線に近い補給拠点に降ろされた俺たちは仮設された壇上にに向かって、かれこれ1時間ほど整列させられていた。


そう、1時間だ。

おかしいだろ!立ちっぱなしで何をさせるでもなく時間だけがすぎていくのだ。

こんな無意味なことになぜこんなに時間を割けるのかイマイチ理解が及ばない


だが、それ以上に疑問なことがある

今俺たちは5列を形成し各分隊ごとに並んでいる

小隊長とその副長は列から抜け前方に待機しているため今この五列縦隊には43人しかいない、それでいて各分隊ごとに並んでいるため俺たちの列だけ異常に短い


だって、俺たちは3人しかいないのに他の列は10人もいるんだ。はたから見れば立派なイジメだよ全く


んで、問題はここからだ。

なんで俺たちの列の先頭が俺なんだい?

年長者かつ人生経験が豊富そうなルイスの方がいいと思うんだがダメなのだろうか?


「なぁ、ルイス、なんで俺が先頭なんだ?お前が前でもいいだろ?」

流石に大っぴらに話すわけにもいかないのでヒソヒソとルイスに耳打ちすると彼は驚いたような顔をして俺の胸の階級章を指差した。

「君、もしかして自分の階級を今の今まで知らずに来たのかい?ほら胸の階級章を見てごらん」


そう言われて俺は自分の胸を見てみると後ろのルイスのものと少し違ったところがあることに気がついた。


彼のは赤い横線が三本なのに対し俺のものには四本あるのだ


「つまり、これはどういうことだ?」

「つまりですね、あなたは伍長で、この隊の分隊長なんです。」


あぁ、だからコイツは俺にやけに自分を売り込んできたし列の先頭は俺なのか


って、オイオイ、俺が分隊長!?伍長だって!聞いてないぞ!

こんな新米に隊を任せるほど帝国は人材不足だってか!?


「ちなみに、私とベル君は上等兵だね」

なんだって!?ベル君も上等兵待遇なんて、どうなっているんだ

ルイスに関しては彼が本国でそれなりの家の出身っていうのは話を聞けばわかっていたので家の伝手で多少の昇進があるのは頷けるがベル君はなんで昇進を…?



俺とベル君がどちらもある程度昇進してから軍に入れたってことは誰かの差金があるってことだろう。単純に考えればフランツの手回しのような気もするが、流石にあの男が自分の息子に突然部下なんて持たせるだろうか?


じゃあ一体誰が……?



まぁ、現状誰の差金かなんてわからないので一旦置いておこう、そんなことよりも目下の問題は隊の人員不足だろう。

定員10人で構成される分隊に対して俺含め3人しかいないというのは笑えない冗談だ


そうして、しばらくどのようにして隊員を増やすかを考えていると列車の中で見た女性将校が仮設の壇上に上がってきた


すると、壇の下に控えていた小隊長が叫ぶ

「小隊傾注!我らの所属する第五師団第二大隊、大隊長殿より訓示!敬礼!」


その言葉を受け壇上に登った女性将校は話し始める

「ありがとう、リンチ少尉。さて諸君!楽にしていいぞ。私は長い話は嫌いだ!手短に行こう」


その言葉は凛としていて芯を感じさせ一瞬にして兵士たちの心を掴んだように見える

何せ俺の隣の分隊長なんて手を後ろに組みながら男泣きしそうな勢いなんだもん。一体どこの◯塾なんだか


しかし、確かにカリスマ性を感じるその声とその美貌を見れば魅了されてしまうのもやむなしかもな


「まず、この戦争に志願してくれた諸君らの勇気に敬意を表する!だが、ここは諸君らが思うような華々しい戦場ではない。この泥沼の戦線を突破するべく我々は諸君らを駒のように扱い、時に諸君らはヴァルハラを見るだろう!」


そこで彼女は一呼吸置いて続ける

「しかし!それは決して無駄な犠牲ではないことを約束しよう!その犠牲はは祖国の発展の礎となり諸君らの子を!孫を!守る盾となり、より素晴らしい生活を切り拓く剣となろう!」


そう締めくくった彼女の言葉を耳にして軍の規律の守られた兵達は大きな声で歓声を上げることも腕を振り回すこともなかった

しかし、彼らの目には確かに火が灯り、投資をたぎらせているのが背中の肌に直に感じる。


え?おれ?俺はなんとも思わないよ。ルイスも飄々としてるみたいだ

俺らの分隊の中で最も熱に当てられたのはベル君だろう。顔を傾けた時視界の端に映る彼は目を輝かせ闘志をメラメラと燃やしているのがわかる

後で熱を少し冷ましてやらないといの一番に突っ込んでいきそうだ


「それでは諸君の奮戦に期待する」


そう言って彼女は壇上を降りていった



そして大隊長に代わって壇上に登った小隊長は兵達の興奮が冷めるのを少し待ち声を張った

「さて、貴様らこの後は荷を下ろし次第それぞれの任務に移ってもらうからそのつもりで。」


任務?俺たちは何も言われていない気がする


「あぁ、それとルーク伍長の隊は後で小隊指揮所に来るように。以上!散れ!」


ん?特命任務かぁ?これは面倒ごとの予感しかしないな

そんな考えに思い至り後ろの二人に気づかれないようにそっとため息をついた

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