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第二十話 時経つは早く

アラスターの座学や体術の訓練を受けている間に3年とちょっとの月日が経ち俺が軍へ行くまで数ヶ月といったところだった。

この三年間はアラスターの元に通い詰め両親と過ごす時間はかなり少なくなっていた。それでもフランツは俺が生き残る可能性が少しでも上がるならと喜んで安くない学費を払ってくれた


寂しいかと聞かれれば実はそうでもない俺は前世で親の愛情抜きに育ってきた。

だから、といってはなんだがそこまでの寂しさは感じない。この世界に来てから彼らに育ててくれた恩は感じても。両親とマリーに持つ感情は同居人という域を出なかった


もちろん身長も伸びて前世で言うところの中一ぐらいの身長にまでなっていた。


正直10歳にしては身長が伸びすぎなんじゃないかと思ってしまうがその辺は家族が俺にうまいものをたくさん食わせてくれたからだと考えよう。そうしよう

体もガッチリとしてきて筋肉もついてきた。


アラスターとの体術訓練も10回に3回ぐらいは引き分けに持ち込めるようになってきたが引き分けると


「絶対に図に乗るんじゃないぞ…油断は目の前にいる敵以上の強敵だ」


って言いながら。毎度毎度、木刀で俺の頭をペシペシと叩いてくる。

こうやって叩かれ続けてこれ以上身長伸びなくなったらどうしてくれるんだ全く



いや、そんなことよりも大事なことがある!顔だ!顔が前世より良くなってる!

ク◯ゥルフ神話trpgで数値化するとAPP14くらいに!これは革新的だ!


((セツメイシヨウ‼︎ ク◯ゥルフ神話trpgにおけるAPP と言うのは!キャラクターの顔面偏差値を表す数値でその最大値は18!その中で14とは!普通より上、いや!もうモテるラインに入っているといっても過言ではないのである!))


そう、そうなのだ。ありがとうク◯ゥルフおじさん

前世の俺はTHE フツメン…モテもしないし嫌われもしないフツーのラインだったからこの進歩はデカい!これだけで生きる意味が生まれてくるというもの


((チナミニ、キミのトモダチのベル君はAPP 17グライダ!))

うるさい、あの子は別格だからいいの

どっか行けクトゥ◯フおじさんめ


そうやって一人ではしゃいでいるとアラスターに頭をしばかれた


「聞いてんのか?お前が聴きたいっていうからこの国の話をしてやったんだ。確かに興味がある戦争の部分が終わったからって帝国の侵略統治の話を聞かなくていい理由にはならないぜ?」

そう言いながら彼は話を続ける


「さて、我が国は軍縮が進んでいたと話したとは思うが。なぜ軍縮派がこれほどに湧いて出てきたかわかるか?」


そう問われた俺は鼻歌混じりに答える

「コルト議員を筆頭とした軍縮派の議員たちが帝国の回し者だったってことでしょう?戦闘が始まる前に姿を眩ましたのがその証拠ですよね」


そう答えるとアラスターは流石だなと呟きながらこう続ける

「正解だ、もちろんそれ以外の平和主義者も多くいたんだろうが軍縮の口火を切ったのは間違いなくこのコルト議員だ。」

「この議員はさぞ厚遇されたのでしょうね」


スパイから一転国家繁栄の英雄か羨ましいことだな。


「いや、そうでもない。現代まで残っている歴史書に何があったか細かくは書かれていないんだがこのコルト議員はこれ以降、どの資料に名前が上がらなんだ」


だとするとどこかで死んだか偽名を使ってるかどちらかなんだろうな

スパイも楽じゃないってことか、世知辛い世の中だねまったく



「この後の帝国の統治は苛烈極まるものだ。住民は今でこそレジスタンスの努力で多少なりとも人権を確保したしお前の親父のように軍人として出世できるようにもなった。」


そこでアラスターは言葉を切り深く息を吐いた


「だがな、占領当時は酷いものだ帝国軍は罪なき民衆を殺し子供は連れ去られ男達は労働力として、使い捨ての兵士として様々な現場に投入され死んでいった」

そんな彼の手は固く握られワナワナと震えていた


まぁ、俺が想像も絶するような何かを見てきたんだろうな。だが今を生きる俺からすれば今が幸せならそれでいい。過去の人間達の恨み節に俺たちを付き合わせないでほしいというのが本音だ


だから未だに戦場に行くということについても半信半疑だし

死ななければなんでもいい。最近アラスターがよくいっているカナリア共和国の復活という理想もどうでもいいと思ってしまえる

なんせ俺は日本の人間でカナリアの人間じゃないからな


そんなことを訥々と考えながら今日も日は暮れていく

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