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第十六話 祖国の歴史II

ルフェインが自身の指定した位置に向かうと自分以外の連隊長たちが集まっていた



「遅かったですね、ルフェイン大佐」


そう声をかけてきたのは第四連隊の連隊長であるスレイ大佐だった

彼は自慢の反り返った長い軍刀の手入れをしながら一瞥することもせずに

遅刻したルフェインを咎める


「すまなかった、作戦立案に時間がかかってしまってな」

と、ルフェインは素直に謝ってみせる


「ところで作戦も大事じゃが、この軍事行動は議会の承認を得たのかの?」

顔に深い皺を刻んだ軍の古株であるバフリル准将がたずねる


「あー、それについてなのですが議会はてんやわんやで誰も話を聞いてくれませんでした…コルト議員を筆頭に軍縮派はどこかに行ってしまっていませんでしたし残りの議員たちは事なかれ主義で…自分は責任は持たないの一点張りでして」


疲れ切った表情で肩をすくめるルフェインを見て他の連隊長の面々もため息をつく


「普段は威勢ばっかいいくせにこんな時は

てんで役にたたねぇんだから困ったもんだぜ」

ウッツは人一倍大きいため息をつきながら議会を非難する


「まぁ、今はそんなことを話している場合でもないわけですが、敵軍の進軍状況はどうなっているんです?」

「そうだな、第六連隊のバロン中佐がいないみたいだが時間もない、タップ少佐!説明を頼む」

スレイに尋ねられルフェインも気持ちを切り替え副官に説明を求める


上官の命令を受けタップ少佐は説明を始める

「ハッ‼︎斥候の情報によれば敵軍規模は歩兵およそ8万、硬い鉄板のようなもので守られた車両50両の上陸が既に確認されておりさらに沖には巨大な船が6隻ほど控えているようです!」


この報告を聞き各連隊長たちは一様に渋い顔をする

「我が軍歩兵3万に対して8万とはな…いかんともし難いな…」

とバフリル准将が唸る

「ところで、民衆の避難はどうなってる?」

今までいかつい体を縮こませて話を聞いていた第三連隊のサルボ大佐が質問する


「もちろん、避難は済ませ山岳部の方に避難させてる。兵や士官たちの家族も逃がしてあるから安心してほしい」

サルボ大佐はホッとしたような顔を一瞬浮かべまた黙り込んでしまった


「だがよ、そうなってくると俺らの主任務は敵の撃滅が理想なんだろうが、正直なところ敵の侵攻を遅らせるのが関の山だぜ?」


ウッツが柄にもなく弱気な発言をするが誰もそれを咎めようとはしなかった

皆そうなるであろうと理解はしていたし覚悟も決めていたのだ


「そうだとしても、愛する家族達や国民を少しでも遠くに逃す時間ができるなら…

わしは構わない」

子供達どころか3人の孫までいるバフリル准将の言葉は特に重いものだった


「ったくよ、そうなることはわかっていたが言葉にすると嫌なもんだな決死の作戦ってのはよ」

ウッツが肩を落としながらも笑顔を浮かべる

「ふむ、そんなことならキチンと妻子達に別れを告げてくるべきでした。」

スレイも肩をすくめながら笑う


ルフェイン自身も今日この場に来る前に妻や10歳になる息子に会うことをしなかった自分の行動を悔やんでいた


「んで?作戦は?なんか手立てがあるのか?」

「そうだな、作戦というにはお粗末かもしれないが一つだけある」

その場にいた者たちはは興味深そうにルフェインに視線を集中させた


「作戦の概要はこうだ…」


その作戦を聞いた連隊長たちは

あるものは不敵に笑い

あるものは胸に手を当てて考え込み

そしてあるものは寡黙に頷いた


それから誰ともなく天幕を出て各々の隊に帰っていくのだった











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