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第十話 イヤな知らせ

その日の朝も俺はベルに会いに行くためにこっそりと家を抜け出し

ベルとひとしきり話した後、両親が起きる前にこっそりと家の前まで戻ってきた


恐る恐る扉を開けてリビングまで行くと父親のフランツが腕を組んで座っていた

父親って言うとよそよそしいかもしれないが、俺からすればフランツはいつも家にはいない上に帰ってくる時間も俺たち家族が寝てからだ。休日は遊んでくれるしこの国の歴史を語ってくれるので好きではある。しかし正直なところ父親というより養ってくれている同居人といったところか


母親のサラも工場仕事が忙しく俺が乳離れしてからは帰ってくる時間はフランツほどではないがとても遅い。

もちろん俺が赤ん坊の頃は愛情たっぷりには育ててくれていたし、今も暇さえあれば構ってくれているが、もし俺が前世の記憶を持っていなければ寂しいと思ってしまったかもしれない。


俺が前世の記憶があってよかったよかった


マリーはといえば黙々と家事をこなしては昼ごろになると自分の部屋にこもっている

特に詮索しようとは思わないが、話し声が聞こえてくるから電話線でも引いてあって彼氏と通話でもしてるのかな?まぁ、彼女も25になったばかりのの裏若き乙女だものな彼氏の1人や2人いてもおかしくはあるまい


それで、そのフランツが食卓の彼の席に座って目を閉じて腕を組んでいるのだ

俺の未来がみえる!見えるぞ!この後俺はこっそり外出してたことを追求されるに違いない…!

と、敵の動きを見切った三下のようなことを思いつつそっと自分の席に着く


するとフランツが口を開いた

「ルーク、母さんとマリーを呼んできなさい。大事な話がある」


え、そんなにオオゴトにする話かな!?ちょっと我が子が朝活して帰ってきただけじゃない!そこまでオオゴトにしなくても…別に朝帰りってわけでもなしに…


「えっと父上、そこまでのお話ではないのではないですか…?」

「ダメだ、連れてきなさい」

するといつもは「それもそうか」と言ってくれるフランツは今日は優しくはなかった

「はい…」


オワッタ、完全にオワッタ


絶望しながら母さんとマリーを起こしに行くと2人はまだ支度をしていたが至急来てほしいと言うと最低限の身だしなみですぐに駆けつけてきた


全員が席についたことを確認して話し出す

「こんなに朝早くから集まってもらったのは、他でもないルークについてのことだ」

やっぱり朝無断で外出してたことだ

そう思い俺はぎゅっと目をつむった

だが、次のフランツの言葉に今度は家族一同が息を呑んだ


「ルークには10歳になり次第、軍に志願してもらう」

その言葉から1番最初に立ち直ったのは母親のサラだった


「あなた!何考えているの!?10歳なんてまだ子供ではないですか!それを戦場に行かせるだなんて!あなたは軍の中で発言権もそれなりにあるはずじゃない!なんとかやめさせ…」


「ダメだ」


俺はその時改めて、あぁ俺の父親は軍人なんだと思った。

底冷えするような声の圧、目には見えないが確かにそこにある闘志

有無を言わせる気のない姿勢だった

普段から嫁の尻に敷かれているような男だが、きっと何か成したいことがあるんだろう。不器用ながらに愛していた息子を戦地に送ってもなおやらなければいけないことが


まぁ、俺自身は別に構わないと思ってしまった

前世の俺はあんなクソみたいな親を持っていたとしても親不孝だったしな

この立派な親のために戦場に行くというのも悪くないのかもしれない


そんなことを思っていると母さんが俺に問いかけてきた

「ルーク、あなたは戦争に行ってもいいの?嫌なら嫌って言ってもいいのよ、あなたはまだ子供なんだから」


俺が答えようとするとマリーが割って入ってくる


「坊ちゃんは戦地に行く必要なんて無いです。この国の法律じゃあくまで志願です。坊ちゃんは徴兵年齢に達するまでは戦場になんて行かなくていいのです。」


2人はそう説得してくれる、確かに戦場に行かないのも一つの親孝行かもしれないでもそれでは後悔するのではないだろうか。

そう悩んでいると


「ルーク、こんなこと父親として言っちゃいけないことだってのは十分にわかってる

でも、それでも頼むしかないだ。頼む」


そう言って椅子から立ち土下座した

俺はハッと目を見開き覚悟を決めた



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