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第一話 ステキな異世界

俺が意識を取り戻した時に広がっていたのは綺麗な木目調の天井だった

病院は白い清潔感のある天井かと思っていたが、最近の病院はオシャレだ

そういうこともあろう

しかし、なるほどこういう時にあの名言は使うわけだ


(知らない天井だ…)


だが、口に出すことは出来なかった

妙だな…口を思うままに動かせない

事故の後遺症だろうか?


だとしたら大問題だ!俺は口に出さないと物事の思考がまとまらない

「独り言の坂田」と呼ばれるほどに俺の独り言は多かった。それが原因で初恋でフラれる程度には…だから2度と恋愛などすまいと拗らせて女性のそばにいること自体が怖くなってしまった。まてよ、確か意識が残っていた時に佐々木先輩が俺のこと好きって…


いやいやいや、何かの間違いだそんなわきゃない。おおよそ俺を跳ねた奴の勘違いだろう


今になって腹が立ってきた今にそいつを突き止めて裁判を起こして本物のワ◯ップを決めてやるんだ


そのために俺はさっさとこの体を直さないと行けない

そのためにはまずはナースコールを押さなきゃな


そう思い手を動かすがどうにも可動域が狭いように感じる

まぁ、あれだけ視界が二転三転したんだ体がすぐに動かせないのも納得できる。しばらくは医者が様子を見にくるのを待とうか

しかし、寝返りも打てないのは不便なものだ

そうしてしばらく待っていると

立派な口髭をたくわえたスーツ姿の男性が入ってきた


きっと彼が医者に違いない

そう思った俺は必死に手を伸ばして目覚めていることを伝えようとする


男は驚いたような仕草をした後嬉しそうに言葉を発して後ろに向かって誰かをしきりに呼び立てた…ように見える


なぜ確信が持てないのかといえば彼の言葉がわからないからだ

これでも義務教育は受けそれなりの会社に就職した身だ、英語やそれに似た言語なら断片的にはわかるはずだ…しかし彼の言っている言葉の意味はさっぱりだった

俺が跳ねられたのは日本のはずだ

たとえ俺が相当な重症で意識がないうちに日本ではないもっと医療の発展した国に移送されたのだとしても

流石に先進国はどこも医療に関してはその国の言語もしくは英語を使うことが多かろうということは想像に難くない

だとすれば


ここはどこだ…?


そこへ修道士のような服を着た女性が入ってきた

馬鹿な…看護師が修道士だと…いったいいつの時代だというのだ


驚きはまだ続く俺はその女性に軽々と抱きかかえられ持ち上げられてしまったのだ

この女性が相当な力持ちでもない限りそんなことはあり得ない…そう、俺が赤ん坊でもない限り…


その時やっと俺は一つの考えに辿り着いた

認めたくない事実だった…もし認めてしまえば俺、いや坂田 俊朗は死んでしまったことになるのだ

あの新作ゲームを開封することなく俺を跳ねやがった何処の馬の骨かもわからないやつに復讐をすることもなくあのクソ親父を見返してやることもなくあっけなく死んだのだ…

その事実に気づいた時俺は大声をあげて泣いた



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