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第二十三話 論功行賞(対山賊戦)

スコットの雄叫びが森の中へ響き渡ると根強く戦っていた山賊達も次々と武器を捨てて命乞いを始めた


「縛り上げろ!」

スコットの命令で兵は嬉々として、跪いた山賊達を一箇所に集めて縛り上げていく



「スコット!戦闘指揮ご苦労、恩賞については追って沙汰する故このまま逃げ散った山賊達の捕縛に移ってくれ」

「承知しました。ただ、あの者は本当に殺さねばならなかったのでしょうか?あれほどの剛の者は中々居ませんぞ」


俺は少し腕を組んで悩むがそれでも首を横に振った

「あいつは領民に反感を持たれすぎた。あの者を登用すれば俺は領民からの信頼を失ってしまう。それに、あぁ言うのは露骨に金払いの良い方に着く。今の様に綱渡りの状況ではいつ裏切られるかわかったもんじゃない」


スコットはその言葉が聞きたかった様で頷いて、兵士を連れて森の中へ逃げていった山賊を追いかけていった。


その後、砦に残って降伏した山賊と合わせて100人ほどの山賊を捕らえた

そいつ等を少し開けた平原に集めて処遇をハンターと話し合う事にした

「こういう捕虜はどうすればいい?」

「そうだなぁ、普通は奴隷として他領に売り払うか懲罰労働者として鉱山労働の二択だな」

俺が頷くとハンターは言いづらそうに言葉を続けた

「ただ、あいつ等はどちらかと言えば仕事がなかったから略奪行為に手を染めた手合いだ。つまりだな、仕事とそれに見合った賃金を払えば従順になるんじゃないかなと思ってはいる……。」


まぁ、コイツも元は山賊で彼らは元同業者だ。彼らに情状酌量の余地を求めるのは仕方がない

「わかった、ではその提案を受け入れる代わりにこの者達をお前の直属の部下とする。扱いづらいだろうがそこは責任を持ってもらう。経費は先程の報酬である金貨を使え。配属先としては新しく作る村になる。いいな?」

ハンターは目を丸くしながら何度も頷いて頭を垂れた


「すまない……。きっと期待に応えてみせる」

「あぁ、ただ今のがお前への今回の恩賞だ」

「構わない。感謝する」

「あぁ、それと!」


ついでに面倒ごとを片付けようと天幕から出て行こうとするハンターを呼び止めた

「なんだ?」

「ハーピー家との交渉の席を用意してくれ。そろそろ顔合わせ程度のやりとりは必要だろ?」

「わかった。任せてくれ」

ハンターは手をヒラヒラと振りながら天幕を出ていった


次に俺はスコットを呼んだ

「さて、今回実戦においては勲一等というわけだが、得たものは少ない。山賊を奴隷化して恩賞も出せなくなった今お前に渡せるものは一つしか残っていない」

俺は先ほど俺たちがいた砦の方角を指差した


「あの砦の主としての権利と知行として村一つの支配権を与える!今後とも直臣武官の先鋒として活躍して欲しい」

「ははぁ!ありがたき幸せにございまする!」

そうして、俺が他の恩賞についても考え始めると何か言いたげにスコットは俺の事を見ていた


「どうした?まだ何かあるのか?」

「えぇ、出来ればこの機に息子を紹介しておこうと思いましてな」

「それはいい、ぜひ連れてきてくれ」

俺の言葉にスコットは後頭部をポリポリとかく


「実はですな。伺いをたてる前にこの陣幕に連れてきてあるのですじゃ」

こいつめ……。俺が断っても紹介する気だったな?

俺は苦笑いしながら頷く


「それでしたら」

そう言って陣幕の外にいそいそと出ていって筋骨隆々の赤髪の若者を伴って戻ってきた

「こちらが倅のブレッドですじゃ。ほれ、ブレッド挨拶しなさい」

「ハッ!お初お目にかかります。ブレッド・シールズでございます」

ブレッドは見上げるほどの長躯で腕の筋肉はその存在感を主張する様に盛り上がっている。顔は精悍という言葉がピッタリで目には野心と闘志を宿している


これは……。俺の事を頼りないと思ったら即座に裏切るタイプだな

スコットが生きている内にきちんと忠誠心を養えるかが重要だ

「うむ、顔合わせの祝いに金貨を一枚やる。武具を揃えるにも入り用だろう。上手く使え」

俺の言葉にブレッドは目を丸くすると片膝をついた

「なんと!是非ともありがたく頂戴致します!」

「うむ、下がってよし」

「「ははぁ」」

親子二人は声を揃えて陣幕から出ていった


それにしても、どうしてウチの家臣はみんなギラついてるんだ…。


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