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第二十話 入り込む

《ハンター視点》


俺は今猛烈に悩んでいる

今目の前には大きな二択が並んでいる。

一つ目はこのままルイの部下として彼が力を持つことを支えること

もう一つはこのまま彼らの機密事項を持ち去って山賊としてやり直すこと


前者は上手くいけば俺も騎士ぐらいにはなれるかもしれない。もしそんなことになれば平民のしかも山賊の出の俺からすればあり得ない大出世だ。

そして、後者。コチラは上手くいけばルイの軍を撃破してあの城の主人になれるだろう。


二択双方にそれなりの利益がある。それゆえにハンターは悩んでいた

そうして悩みながら砦に造られたこれまた即席の櫓門まで1人で歩いていった

「おーい!誰かいるかー?」


するとヤグラの中で寝ていたのか汚らしい格好の男が顔を出した

「なんだ?誰だ?テメェ」

「俺はハンターって言うんだ!あんたらの頭領に話があって来た!」

汚らしい格好の男は首を傾げると後ろに向かって叫んだ

「頭領!ハンターって奴が会いたいってさ!」


そう言うと奥の方からバタバタと音が聞こえてヤグラに大男がのしのしと現れた

「オメェ、ハンターじゃねぇか!生きてたのか!」

なんと、その男はハンターが山賊をやっていた時に頭領と仰いでいた男だったのだ。

つまるところ前職の上司みたいなものだ


「もしかして、グエンさんですか!?」

「おうよ!」

「まさかご無事とは……。」

「あぁ、あのイヴァンとか言う奴に追い散らされた後山賊の多いこっちのシマで仲間を集めたってわけよ!おい、昔馴染みだ。入れてやれ」


彼が部下に命令すると慌てて部下は門を開けた

門はキリキリと嫌な音をたてながらゆっくりと開いた


門が完全に開いて中に入ると山賊達は焚き火を囲んで俺の方をジロジロと見て来ていた

「色々積もる話もあるだろう!ここに座れ!」

そう言ってグエンは自身の隣を示した

「で、では……。」

畏まって俺が横に座ったのを満足そうにグエンは見届けると肩を抱いて顔を覗き込んできた。

「なぁオメェ、イヴァンのガキの所で働いてるってホント?」

そう言いながらグエンの手に力がこもりメリメリと肩にめり込んでいく


「返答次第ではオメェの肩潰すが、どうなんだ?」


俺は冷や汗をダラダラとかきながらも頭は水を打った様にひんやりとしてやけに考えもまとまりが良かった

「えぇ、そうです」

「そうかぁ…じゃあ裏切り者は死んでくれ」

そう言うや否や肩を掴む腕により力がこもっていく

「ですが、それはいいタイミングで裏切る為です」


俺の言葉に腕の力が少し緩んだ

「ほぉ?また山賊に戻るって言うのか」

「えぇ、そうです。それに耳寄りな情報があります」

彼の眉がピクリと動き目は爛々と輝いていた


「言ってみろ。もし使える情報ならお前をまた俺の右腕に戻してやってもいい」

その言葉に周囲の山賊達がざわめく


「元右腕ってこたぁ、あの方は『鳥瞰のハンター』ってことかよ……。」

古株の山賊が呟くと周囲の山賊達にもそのざわめきは伝播していった


「えぇ、奴らの大半は領民兵でまともに戦うことはできません。弓兵も騎兵も少ないですから数だけです」


「ほぉん?なら正面からやりあえばあっという間って事かよ」


「確かにその通りですが、せっかくこの様に素晴らしい砦があるのですから使わないと言うのは勿体無いでしょう」


「なるほどな、この砦には150人の部下がいる。50人でこの砦を守って100人で背後を突けば挟み撃ちってわけだ!素晴らしい!それでこそ俺の右腕だ!」

グエンはバシバシと俺の背中を叩き周囲の山賊達は湧き上がった


「よしテメェら!あの調子に乗ったクソガキを潰すぞ!奴がいなくなればまた山賊働きし放題だ!」

「「おぉ!!」」

その声に押されてグエンは山賊達を率いて櫓門から100人弱の山賊達が森の中へと消えていった。残った山賊達は50人程で普段腕っぷしの強い山賊達にこき使われているのような弱々しい者達ばかりだった


「なぁ、お前らにも話があるんだ」

ハンターはしたり顔で彼らに声をかけた


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