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第十六話 外交策

俺とハンターは執務室で地図を前に腕を組んで唸っていた

「商人の治める領地か。どうやら軍事的な野心は無さそうだが一度使者を送らなければならないかもな」

「あぁ、その為にまずは城下の商人達の協力を取り付けるべきでしょうな」

ハンターは執務室の調度品を物珍しそうに弄りながら提言をする


「明日の集会が肝ということか」

「そういうことですな」

「これからの戦は大規模化していくだろうからな。軍資金は膨れ上がっていくだろうし商人達を取り込む事ができるかで俺たちの領地の発展の度合いが決まってくるな」


そして俺はハンターの方を向いてニヤリと笑った

「いい案を思いついたぞ」

「ほう、お聞かせ願いたく」


俺は地図の北、ハーピー家を指差した

「この家は商人の家、つまり交易の販路を求めているのではないか?」

「まぁ、常に強力な販路は求めているのでしょうが許容値限界まで広げていた場合は販路は求めていないでしょうな」

「確かにな、だがハーピー家はつい最近三つ目の城も買収を済ませたと聞く。つまり、影響力の拡大に熱心な上に余力もあるんじゃないか?」


ハンターは腕を組み片眉を上げて頷く

「なるほど?」

「そこで俺たちは北のハーピー家からベートン家の港までの道を示してやればどうなる?」

俺がそこまでいうとハンターは合点がいったとばかりに「ほぉ」と呟いた

「俺たちはその交易路の警備と中継点としての役割を果たすというのでどうだ?」

「ふむ、良案かもしれませんな。しかし、彼らが武力で我らを平定した方が得と判断するやも知れませんぞ?」


俺はその考えを聞いた時思わず額を押さえてしまった

そうだった。この世界は力こそ正義。武力による平定は完全に考えていなかった

確かに彼らがその認識に至ってはまずい。

「なら、一先ずは我らの城の防御力を強化して力技で攻め落とすのは損であると認識させなばならない」

「だな、しかし長く時はかけられません。情報の伝達スピードやハーピー家の戦の準備期間などを加味しても半年が限界かと」


うーん、半年で即席に城を強化する方法か

時間があれば城壁を高くするとか新兵器を研究するとかやりようはあるが半年で何が出来るだろうか

「まずは、ベートン家と我が御家が協力関係にある事を大々的に周知するべきですな。そうすれば我が御家の城二つにベートン家の城一つの計3つの城でハーピー家を牽制できる。それだけで奴らは兵を出す事を躊躇するでしょう」


こいつめ、何気にキャラハン家の事を自分のいえの様に言っているな。それなりに頭もキレるし3年が経っても是非とも直臣として召し抱えたままにしておきたいものだ

そんな事を考えながら俺は頷いて彼の提案に同意する


「そうだな。まずは協力関係の周知のためにエリーとの婚姻の儀をまずは大々的に行う事にしよう」

「それがよろしいかと」

彼は恭しく頭を下げて部屋を退出しようとする


「それと、お前には四つの村のうち一つを知行として与える。今後も俺の家臣として助けてほしい」

俺の言葉に光の速度でハンターは振り返ると即座に腰を落とした

「ありがたき幸せ!今後とも褒美のため…いえ、ルイ様のためにこの身をもってお仕えします!」

俺は彼の言葉に苦笑いしながら退出を促すと彼はもう一度一礼して部屋を出て行った


うーむ、アイツはわかりやすい様な、分からない様な難しい奴だ


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