秋が終わろうとしている匂いがしたら、死のうと思った。
一年中、死にたくて死にたくて仕方がないけれど、冬が近づいて来れば来るほどその気持ちは倍……いや、何百倍にも膨れ上がる。
︎︎
もう既に秋が終わる匂いがし始めているというのに、私はまだ生きている。
「ましろがこの家に来たのも、運命なんだよ」
「うん、めい……?」
「うん、運命だよ。ばあちゃん、神様に孫が欲しいって何回も神社に行ってたんだから。そしたら、神様はこーんな可愛い贈り物をくださって」
幼い頃に植え付けられた運命や神という美化された言葉は、成長していくにつれて醜いものへと変わった。運命など決して綺麗なものではないのだから。
全人類に運命というものが平等に与えられているのであれば、私にこんな運命を与えた神はあまりにも意地悪で、クソ野郎だ。
だから、こうなる運命とか、こうなるはずだった運命とか、死ぬほどどうでもいい。
「ばあちゃんがましろを一番に可愛がってしまうのも、仕方がないことなんだよ」
「うれしかった? わたしが来て」
「そりゃあ、嬉しかったよ。ましろは神様からの贈り物なんだから。だからね、ばあちゃんが孫だと思っているのは──ましろだけなんだよ」
大人は身勝手だ。
勝手な欲望の為に作られて、捨てられて。
そんな大人に振り回されるのは、いつだって子供だ。
けれど私は、そんな身勝手で残酷は祖母が好きだった。
はぁ……と息を吐いても、まだ白い息が出ないことにホッとする。
ずっと夏だったらいいのに。
空気とか、景色とか全て夏がいい。
冬なんて……一生来なくていいのに。
寒いし、防寒したら一回りくらい太って見えるし。冬が似合っているだとか言われても全く嬉しくないし、自分の誕生日だって嬉しいなどの感情が一度だって生まれたことがないし。あの子の誕生日をどういう気持ちで祝っていいのか分からない冬が、私は大嫌いだ。
その大嫌いな冬が、もうすぐ始まろうとしている──。