「森さん、本日はどうか尋常なお立ち合い、よろしくお願い申し上げます」
白装束に着替えた
「姫神さん、なんならいますぐ、この場で切り捨ててもかまわないのですよ?」
全盲の中年剣客の問いかけに、若き剣士はキリっとまなざしを鋭くした。
「それはいたしません。父・
クスリ。
森花炉之介は口角を緩めた。
「はは、やはり確かなもののふ。おそらくは、父上以上の――」
これ以上は情が移ってしまうかもしれない。
そう思索した姫神壱騎は、ここであいさつを済ますことにした。
「森さん、決着は本番にて」
「これは、失礼を……」
やり取りをしている二人のそばへ、見届け人である剣神・
「静香さま」
「ご見聞いたみいる次第にございます」
姫神壱騎と森花炉之介は、同様にひざをついた。
「二人とも、心の準備はよろしいですか?」
「は」
やはり同様に、決心がついていることを表明する。
「ならば、お二人に申し伝えたい儀、これあります」
「と、申しますと……?」
意外な展開に、二人の剣士は何事かといぶかった。
「こたびの試合、アルトラの使用を許可します」
「な……」
彼らの顔が、深い懐疑の心にくもった。