「見せてやるよ、わたしのアルトラ、『デーモン・ペダル』を……!」
「ふん、正体を現したね。
よどんだ緑色のボディ、おびただしい数の赤色の足、体育倉庫を埋めつくさんばかりの巨体……
「きゃはは雅! このデーモン・ペダルで
「あ、あ……」
「龍子、あれが朱利のアルトラ『デーモン・ペダル』だよ。見てのとおり、ムカデに変身できるんだ。まったく、おぞましい能力だよね」
星川雅は大ムカデの
「はっ、頭に口がついてるバケモノに言われたくないなあ。さあ雅、行くよっ!」
ムカデの頭部がこっちに突っこんでくる。
「くっ……!」
星川雅はそれをよけ、背後をとった。
「雅っ、後ろ……!」
真田龍子の声にふり返ると、ムカデの
「あがあっ!」
思いきり打ちのめされ、コンクリートの地面に叩きつけられる。
「うぐ、んん……」
「きゃはは、た~のしいっ! あんのをいたぶるのはねえ、雅?」
「ちょーし、乗ってんじゃあねえぞ、朱利いいい……」
「へえ、まだそんな減らず口がきけるんだ。どう、ギブアップする?」
「誰が、するかよ……!」
星川雅はアルトラ『ゴーゴン・ヘッド』で、髪の毛を刀子朱利のほうへしゅるしゅると
「んっ……!?」
なにこれ、心臓が……
「ふふふ、きいてきたみたいだね」
足がいうことをきかない。
彼女はそのまま地面にひれ伏してしまった。
「あーらどうしたの雅? 気が変わったの? 土下座なんてしちゃってさ」
「てめえ、朱利……なに、しやがった……」
ぜえぜえと荒い呼吸をしながら、星川雅は
「毒だよ、ムカデのね。さっき攻撃したとき、しこんでおいたのさ。ちょっと引っかいた程度だけど、効果はテキメンでしょ?」
星川雅は太ももの裏に、ちっぽけな切り傷がついていることに気づいた。
「雅っ……!」
真田龍子がかけよった。
彼女は星川雅を抱きしめ、身を
「ダメ、龍子……このままじゃ、あなたまで……」
「できないってそんなこと! これ以上、雅が傷つくとこなんて見てられないよ!」
「龍子……」
やり取りを
「アホらしい。友情ごっこってゆーの? 真田さん、知ってるんだよ? そいつがあなたのこと、
星川雅を
「お願い、刀子さん。もうやめて、雅を傷つけないで……!」
涙を流すその顔は本心から――
刀子朱利はそれが
「お願い、刀子さん! わたしでいいなら、
真田龍子は決然とそう言い放った。
「ふーん、そう……」
ムカデの触手が後ろから彼女を捕らえた。
「きゃあっ!」
高い位置、刀子朱利と目線のあうところまで引っ張りあげられ、
「どう?
「あああああっ!」
ムカデのおびただしい足が、捕らえた真田龍子を
激痛と恐怖に彼女の顔がゆがんだ。
「さあ真田さん、雅の代わりにわたしに謝ってよ? そうすれば考えてあげないこともないからさ?」
真田龍子は口をパクパク動かしている。
「うーん、なに? 聞こえないなあ」
刀子朱利はムカデの体を尻尾のほうへと近づけた。
「……あなたの負けよ、刀子さん」
真田龍子がそう言ったのを、刀子朱利は確かに聞いた。
「なにを言って……」
刀子朱利の
「あ……」
何が起こった?
これは、雅の
「あっ、があああああっ!」
次の瞬間襲ってきた激痛に、ムカデの巨体が震え、
苦しみあまって、彼女は捕らえていた真田龍子を放してしまった。
「わあっ!」
放り出された真田龍子が落下する。
「ふう、やっぱりバカだよねあなた?」
星川雅――
激突する寸前で真田龍子をキャッチした彼女が、
刀子朱利にはわけがわからなかった。
「雅、なんで……わたしの毒で、動けないはずじゃ……」
胸もとに突き刺さった
「ありがとう龍子。さすがはわたしの優秀な『ペット』。ほめてつかわす」
「うーん、喜んでいいんだか……」
「ま、まさか……」
「いまごろ気づいたの? ずいぶんのんびりだね、朱利?」
星川雅の体がうっすらと光の
「貴様、真田龍子……アルトラを雅に使ったな……!?」
「えへへ」
真田龍子は星川雅の腕の中で頭をさすった。
「そ、あの『友情ごっこ』のとき、龍子が『パルジファル』で、わたしの体に回った毒を吸い出してくれてたってわけ。おわかり、おバカちゃん?」
刀子朱利は歯ぎしりをして
星川雅は真田龍子をやさしく地面へ下ろす。
「て、てめえ、雅いいいいい! ぶっ殺してやる!」
いよいよ鬼の
胸もとからだらだらと、
「あんたの『ぶっ殺す』はもう聞き飽きたって。いったいいつになったら『ぶっ殺す』が完了するのさ? そういうのって、『ぶっ殺したあと』に言ったほうがかっこよくない?」
「うるさい! 死ねえええええっ!」
刀子朱利は引き抜いた柳葉刀を、星川雅へ向け、投げつけた。
だが星川雅はいともたやすく、それをキャッチしてみせた。
「ありがとう、返してくれて」
「ぐぬう、ぐぐぐ……」
大ムカデは体を震わせて
「さあ朱利、フィナーレといきましょうか?」
「雅いいいいいっ!」
刀子朱利はムカデの巨体で突っ込んでくる。
「龍子、放れてて!」
「う、うん!」
破れかぶれの一撃、星川雅はそれを
「バーカ、
「ほんとうにそうかしら?」
星川雅の数が
分身の術よろしく、体育倉庫中、大ムカデの体のいたるところにまで、彼女の姿が映し出された。
「バカな、これは……
倉庫内を埋め尽くした星川雅の『分身』は、
「
(『第15話