「お
ウツロの目から
「……なぜ、なぜだ……」
彼は薄れた意識の中、まだそう問いかけていた。
ウツロもまたもとの姿へと戻り、その場にしゃがんで、
「
みんなはウツロが自分たちへ向けて、それぞれ言ってくれたことを理解した。
そしてそれは、ウツロが自分自身へ向けて言ったことでもあり、無理やり言いきかせているのではなく、本心からそう思えたことだった。
ウツロはこのとき、すべての存在を肯定することができたのだ。
自身を
「お師匠様、俺は毒虫だってなんだっていい。毒虫が自分の
ウツロはこのように、決然として言い放った。
似嵐鏡月は少年時代の自分を思い出した。
その解答を必死で
「……どうやらわしは、
鏡月、この能なしが!
貴様は似嵐の
くすくす、鏡月、またお父様に
本当に、ダメな弟よね。
「わしはただ、ほめてもらいたかった……親父に、姉貴に……それだけなのに……」
ウツロは悲痛な気持ちになった。
自分の人生を
だが、彼もまた、弄ばれた存在だったのだ。
「ウツロよ、わしは自分に負けた……だがお前は、お前というやつは……」
似嵐鏡月の顔が
うまく言えないけれど、いい気分だ……
彼は心の中のくもりが晴れていくのを感じた。
「ウツロよ、わしに
「……!」
その言葉にウツロは衝撃を受けた。
「それだけのことを、わしはお前たちにした。人としてあるまじきこと、生きている価値などない……さあ、ウツロよ、頼む……!」
ウツロはアクタのほうを見た。
「……ウツロ、お前にぜんぶ、任せるぜ……」
兄の
「されば、お師匠様……!」
彼は立ち上がり、師に向けて
「お覚悟!」
似嵐鏡月は目を閉じた。
だが、土を
ウツロの
歯を食いしばって涙をこらえる息子の顔が、
「……お師匠様、あなたがここで死を選んだのなら……いままであなたに踏みにじられた者の存在は、なんだったというのでしょうか……?」
「……」
「あなたがなすべきことは……生きて、それらへの
「ウツロ……」
「生きてください、お師匠様……! そしてまた、アクタと三人で、隠れ里で暮らしましょう……!」
これを聞いたアクタは、満足そうに
似嵐鏡月も同様だ。
「……完全に、わしの負けのようだな……そして、強くなったな、ウツロよ……」
「……」
「お前はもう、毒虫などではない……はばたけ、はばたくのだ、ウツロ……!」
ウツロはこらえきれずに、涙をこぼした。
その場にいる全員が、泣いていた。
いままでバラバラだったものを、ウツロがひとつにつなぎ合わせた。
みんながみんな、それがうれしくてしかたがなかった。
もう夜明けか。
しかしそれは、特別な意味での夜明け。
みんながそう思っていたとき――
「……!?」
「な、なんだ、この音は……!」
星川雅と南柾樹は
「地震……いえ、違うわ……!」
「姉さん、何かがおかしいです……! 気をつけて……!」
真田虎太郎は姉・龍子を守った。
「いったい、なんだってんだ、こんなときによ……!」
アクタも
「この感じ……まさか、まさか……!」
「お師匠様、お気をつけください……!」
ウツロも地面に
そして
暗黒の世界と化したその空間。
一本桜がにわかに
みるみるうちに巨大化し、アクタ以外の全員が知る、忘れもしない、いや、忘れることなどできない、あの
「これは、
(『第78話