「
ウツロは自身のアルトラの
地の底を何かが
だが、ただそれだけだ。
「……何も起こらんではないか。生意気にハッタリなどかましおって」
「おい、ウツロ。そんなところにいつまで浮いている気だ?
「……」
「
彼はウツロに襲いかかろうとした。
「……?」
首の下に違和感を覚え、似嵐鏡月はそちらに目を向けた。
「ひっ……」
山犬の
彼は
「な、なんだ……? 体がムズムズするぞ……」
似嵐鏡月は全身に感じる奇妙なむずがゆさを不審に思った。
「おい……なんだ、ありゃあ……!」
「
「こっ、これは、ムカデの群れ……ひっ、やめろ、来るな……!」
似嵐鏡月はあまりのおぞましさに動転して、必死でそれを振り払おうとした。
だが、
「これが俺の能力です、お師匠様。『虫使い』―― どうです? 俺にはピッタリだと思いませんか?」
ウツロの言葉など耳に入れる
「……おのれ、ウツロ。こしゃくな
彼は破れかぶれで
「――!?」
足から突然、力が抜けて、似嵐鏡月はその場にひざまずいた。
「ぬ、なんだ……体に、力が入らんぞ……?」
そのまま両手も地面について、彼はすっかり
「ムカデの毒ですよ。生き物の体を
自分の教えた技を自分に使用される――
似嵐鏡月は
だが、いくなんでも一度にこれほど大量のムカデを用意できることまでは、さすがの彼も想定の範囲外だった。
「ぐ、ぬう……ウツロ、よくもわしに、こんな真似を……!」
山犬は「土下座」をしながら、大量の汗を大地に垂れ流している。
「
「――?」
ウツロは星川雅に視線を送った。
「俺は砂時計に似ている……そう言ったね? 永遠に
「ウツロ……」
「欠落している……それはちょうど、欠落した月、
ウツロは天を
「エクリプス……それがいい。この力の名前は、エクリプス……」
(『第75話