「
*
「う……」
真田龍子が気づいたとき、彼女は深い、杉林の中にいた。
ただ、真夜中のように、辺りは暗い。
キョロキョロと見回すと、前方に
「ここは……きっと、
彼女は不安と恐怖に
「みんな、お願い……わたしに、力を貸して……!」
真田龍子は
彼女がさらに目を
「ウツロくん――!」
ウツロ、確かにウツロだ。
だが「彼」は、真田龍子が呼びかけても、
それは聞こえていないのではなく、聞こえてはいるのだけれど、応じる気はない――
そんなふうに彼女は感じた。
「ウツロくん、大丈夫!?」
真田龍子はウツロに
「しっかり、ウツロくん!」
ウツロは顔も上げず、ただただ、うなだれているだけだ。
「ウツロくん……」
真田龍子の再三にわたる呼びかけに、ウツロはやっと、口を動かした。
「……誰も、俺のことを、わかってくれない……」
「……」
予想はしていたが、その闇は想像以上に深い――
「……こんなにつらいのに、こんなに苦しいのに……」
「ウツロくん……」
ウツロの主張は、自分本位のもの。
しかしそれは、どんな人間でも
「……苦しい、苦しい……俺は、毒虫だ……俺という存在は、呪われている……」
「……」
苦しいのは誰だって同じ――
真田龍子の頭にはその思いがあった。
しかし、言い方というものがある。
苦しみも個性であるならば、それは名状しがたい事実ではある――
だが、現実に苦しんでいる人間に、その言葉はあまりにも、重すぎる。
「……なんで、なんでだ……なんでこんなに、苦しいんだ……つらい、つらい……こんなにつらいのなら、いっそもう……生きたくなんか、ない……」
「……」
苦しみを次々と
その姿に真田龍子は、なんだかだんだん、腹が立ってきた。
「……苦しい、苦しい……俺なんか、俺なんか、生まれてこなければ、よかったんだ――!」
ぱしんっ!
ウツロの
「めそめそすんなあああああっ!」
(『第71話 愛』へ続く)「
*
「う……」
真田龍子が気づいたとき、彼女は深い、杉林の中にいた。
ただ、真夜中のように、辺りは暗い。
キョロキョロと見回すと、前方に
「ここは……きっと、
彼女は不安と恐怖に
「みんな、お願い……わたしに、力を貸して……!」
真田龍子は
彼女がさらに目を
「ウツロくん――!」
ウツロ、確かにウツロだ。
だが「彼」は、真田龍子が呼びかけても、
それは聞こえていないのではなく、聞こえてはいるのだけれど、応じる気はない――
そんなふうに彼女は感じた。
「ウツロくん、大丈夫!?」
真田龍子はウツロに
「しっかり、ウツロくん!」
ウツロは顔も上げず、ただただ、うなだれているだけだ。
「ウツロくん……」
真田龍子の再三にわたる呼びかけに、ウツロはやっと、口を動かした。
「……誰も、俺のことを、わかってくれない……」
「……」
予想はしていたが、その闇は想像以上に深い――
「……こんなにつらいのに、こんなに苦しいのに……」
「ウツロくん……」
ウツロの主張は、自分本位のもの。
しかしそれは、どんな人間でも
「……苦しい、苦しい……俺は、毒虫だ……俺という存在は、呪われている……」
「……」
苦しいのは誰だって同じ――
真田龍子の頭にはその思いがあった。
しかし、言い方というものがある。
苦しみも個性であるならば、それは名状しがたい事実ではある――
だが、現実に苦しんでいる人間に、その言葉はあまりにも、重すぎる。
「……なんで、なんでだ……なんでこんなに、苦しいんだ……つらい、つらい……こんなにつらいのなら、いっそもう……生きたくなんか、ない……」
「……」
苦しみを次々と
その姿に真田龍子は、なんだかだんだん、腹が立ってきた。
「……苦しい、苦しい……俺なんか、俺なんか、生まれてこなければ、よかったんだ――!」
ぱしんっ!
ウツロの
「めそめそすんなあああああっ!」
(『第71話 愛』へ続く)