「イージス……!」
「なっ、なんだと!?」
内側から
「
「……あれが、虎太郎くんのアルトラ……」
ウツロは
光をまとうその姿は、彼に
「やったぜ、虎太郎!」
「虎太郎くん、早く逃げて!」
「ふん、させるかっ!」
山犬は
「うおっ!?」
しかし光球はまるで磁石の反発のように、ひょいとその手を
「ぐぬっ、こしゃくな!」
似嵐鏡月は必死になって光る球をなんとか掴もうとするが、
「す、すごい……」
ウツロはその光景に、今度は
「ふう、ふうっ……なんと、生意気な……このわしを、馬鹿にしくさって……もういい……! ほかの誰かを
「させません! イージスっ!」
「おっ、おお!?」
ウツロは自分の体が、真田虎太郎と同じ、緑色の光球に包まれたことにびっくりした。
「うおっ!? こいつは……!?」
ウツロだけではない、アクタも――
いや、真田龍子、星川雅、南柾樹――
「これは、この光は……なんだか、温かい……」
「ウツロの言うとおりだ……なんだか、この中にいると……体が、楽になってくるような……」
ウツロとアクタは驚きとともに、この光がすなわち、この能力を使う真田虎太郎の、やさしい心の投影なのではないか――
そんなことを考えた。
「ぐ、ぬう……おのれ、ガキがあああああ……!」
似嵐鏡月はハラワタが
「貴様っ、許さん!」
「うぐっ――!」
やはりその手は、彼を掴むことはできない。
「おーい、おっさん! えらく
「くすくす、
南柾樹と星川雅は
「ぬぐっ……ぬうううううっ……!」
似嵐鏡月はいよいよ
「似嵐さん、お願いです! 降参してください! これ以上の争いは無意味です!」
真田虎太郎は中学生とは思えない態度で、紳士的な提案をした。
「ぐう、ガキが……なめくさりおって……降参など、誰がするものか……!」
似嵐鏡月に折れる意思はない。
「お願いします! もうこれ以上、みんなを傷つけるのはやめてください!」
真田虎太郎はさらに食い下がる。
「ふん、貴様のようなガキのいうことなど聞くものかよ……!」
そう
何か、何かあるはずだ……
このアルトラを、このガキの力を
そのとき――
「――!?」
真田虎太郎たちを守る緑色の光球――
その光り具合が、心なしか弱くなってきている――
似嵐鏡月はそれに気づいた。
「ははあ、なるほどな……」
山犬の顔が再び下品にゆがんだ。
「これは……!?」
「なんだ、光が……弱まってきてるぞ……!?」
ウツロとアクタも遅れてそれに気がついた。
「はあ……はあっ……」
いつの
思ったとおり――
似嵐鏡月はニヤリと笑った。
「ふふふ、虎太郎くん! そのアルトラは、けっこうなパワーを使うのではないかね? 何せ自分だけでなく……ほかに五人も、その力をかけているのだからな」
「む……」
似嵐鏡月の指摘は図星だった。
これは
まだ年齢の若い虎太郎には、この強い力を百パーセント自分のものにするところまでには、
「くく、どうやら君は、そもそもその能力を完全に使いこなせるところまでは、いっていないのではないかね? うーん?」
またも図星をつかれ、真田虎太郎はますます
「ぬっ……むうーん!」
彼はがんばって力を
だが悲しいかな、それはやはり
「ううっ……」
「虎太郎っ!」
姉・龍子が叫ぶ中、緑色の光は急激にその
「うっ……くう……」
「虎太郎っ! もういい! もうやめてっ!」
真田龍子のかけ
真田虎太郎はゆっくりと地面に降り、そのまま大地に
弟の
「真田さんっ!」
今度はウツロが叫んだ。
似嵐鏡月が次に取るであろう行動――
そのおそろしい映像が、頭をよぎったからだ。
「虎太郎っ、しっかり!」
「おおっと」
「きゃっ!?」
ウツロの予見は、しかして当たった。
弟に駆け寄る姉の体を、山犬の大きな手が掴み取ったのだ。
「龍子っ!」
「やろうっ!」
星川雅はゴーゴン・ヘッドの髪の毛をしゅるしゅると伸ばした。
南柾樹もまた、サイクロプスの巨体で似嵐鏡月を止めようとした、だが――
「おおっと、動くなよお前ら? 少しでも動けばこの女が肉の
およそ考えうるもっとも
「ぐっ……」
「恥を知りなさい、叔父様……!」
二人はどうすることもできず、ただ歯を食いしばるしかなかった。
「ふん、何とでも言え。さあ、
「……」
星川雅と南柾樹の姿が人間のそれへ戻っていく。
「ふはは! なかなかいい気分だな! さてと――」
山犬は真田龍子を掴んでいないほうの手を、ゆっくりと振りかぶって、力をこめた。
「ぐあっ!?」
「ぎゃっ!?」
その手は続けざまに、南雅樹と星川雅の体を遠くへ吹き飛ばした。
桜の大木に打ちつけられ、二人は気を失ってしまった。
「柾樹っ! 雅っ!」
「お師匠様っ! 何ということを!」
ウツロとアクタは絶叫した、が――
当然のごとく、似嵐鏡月は
「ふん、
山犬は真田龍子を握りしめたまま、
「さて、ウツロよ、わしはこれから、いったい何をすると思うね?」
(『第67話 絶体絶命』へ続く)