「
弟の場違いすぎる登場に、姉・
「なん、で……虎太郎が、ここに……?」
「ああ、たいへん……あの『メモ』だわ……わたし、なんてことを……」
ウツロを
それがまさか、こんな最悪の事態を
実際に彼、虎太郎はそのメモを見て、姉たちのあとを追う形で、ここ
しかしそれは、やはり最悪のタイミングで、だった――
柾樹の巨体と雅の髪の毛が、自分を
「ぬうん!」
「うがっ――!?」
油断していた柾樹の体を、彼は勢いよく押しのけた。
「柾樹っ!」
「お前もこうだ、雅っ!」
「きゃあっ!」
星川雅は背中をしたたかに打ち、木の下に転げ落ちる。
「柾樹、雅っ!」
真田龍子が叫んでいる間にも、似嵐鏡月はおよそ考えうる最悪の行動に出た。
「わあっ!」
自由を得た
「うぐぐ……」
山犬の大きな手が、
「虎太郎っ! やめて、似嵐さんっ!」
助けを
「そうはいかんな、お
「あ……あ……」
彼女は絶望のあまり、地面にへたりこんでしまった。
「うぬぬ……」
相変わらず握りしめてくる手に、真田虎太郎は苦しそうにしている。
「虎太郎くん、君も不幸だな、
似嵐鏡月の
しかし真田虎太郎は、その大きな目をカッと見開いた。
「……姉さんに、謝ってください……!」
こんな状況で弟は姉を
その態度に山犬は
「なんだ貴様、姉を守ろうというのか? 貴様のような何の力も持たぬガキが? 虎太郎くん、わしは知っているのだぞ? 君の姉がかつて、君にどんな仕打ちをしたのかをな。それでも君は姉を守るというのか?」
似嵐鏡月は自分と虎太郎を
それゆえ、姉を助けようとする弟の心理がまったく理解できない。
その
「……謝って、ください……!」
真田虎太郎の意志はいっこうにブレない。
山犬・鏡月はますます腹立たしくなった。
「なぜだ、なぜ姉を守る……!? お前を死に追いやろうとした、にっくき姉だぞ……!? そんな者を助ける価値など――」
「謝ってくださああああいっ!」
弟は丸く開いた目を
そして「もうひとりの弟」はついにブチ切れた。
「ならば、こうしてくれるわあっ!」
「虎太郎おおおおおっ!」
ああ、真田虎太郎は山犬の
「あ……」
ショックのあまり姉・龍子は、呼吸のしかたも忘れそうになった。
やっぱり自分は、この男の言うとおり、弟を不幸にする存在……
真田龍子はわき上がる
しかし、そのとき――
「ああ、あれを見て……!」
似嵐鏡月の拳が緑色のまばゆい光に包まれている。
「あれはまさか、虎太郎のアルトラ……!」
南柾樹も驚いてそれを
緑色の光は、ついに山犬の
「イージス……!」
(『第66話 イージス』へ続く)