「見ないで……
少女の顔が、悲しみにゆがんだ――
ウツロとアクタを
「雅っ、しっかりして!」
「来ないで、龍子……わたし、わたし……」
いっぽう
「おいっ、お前らも大丈夫か!?」
「柾樹、すまない……」
「ウツロ、この人たちは……?」
当然ながらアクタのほうは、
彼はいぶかり
「アクタと別れたあと、俺をかくまってくれた人たちなんだ。手当てを受けて、食事までご
アクタは言葉に
ウツロを助けてくれた人たちだったとは……
知らなかったとはいえ、
「……そう、だったのか。すまない、その、マサキさん」
「『柾樹』でいいって。それよりお前らのほうが心配だ。あんたがアクタさん、でいいんだよな?」
「『アクタ』でかまわない。俺は大丈夫だから、ウツロを頼む」
「待ってろ、すぐに
南柾樹にはためらいがあった。
だが今後のことを考えれば、いまはっきりさせておかなければならない。
彼はたとえ
「……お前たち、その……兄弟、なんだってな……」
「――!」
ウツロとアクタはびっくりした。
なぜこの場にいなかった彼が、そのことを知っているのか?
「柾樹……どうして、それを……」
ウツロがおそるおそる聞く。
「すまねえ、雅が
事実を
「いや、とんでもない。
アクタは座った
「おい、よせって! なにやってんだよ!? 俺らは
「いや、こうさせてくれ。ウツロが
痛む体をおして、アクタはさらに
「アクタ……」
南柾樹は
彼はまた言おうか言うまいか
だがここで自分が逃げては、アクタの
やるしかない――
そう、心に決めた。
「……こんなこと、言っていいのかわかんねえけど……お前ら、いい兄弟だぜ? アクタ……あんた、最高の兄貴だよ」
アクタは
いま出会ったばかりのこの男が、ウツロと俺のことを
なんてやつだ、マサキ……
彼の頭に浮かぶのは、ひたすらうれしい気持ちだった。
「マサキ……ありがとう……」
アクタはこぼれる涙を
「ウツロ、おめえもな。バカなこと考えるやつだけど、いい弟だぜ? あんまり兄貴の足、
ウツロも
こんなにいいやつなのに、俺は正直、
人の気持ちなんてわからない男だと、そう決めつけていたんだ。
最低だ、俺は――
すまない、柾樹。
そして、ありがとう……
「……バカは
うれしさあまってついウツロは、
実際は感激に
「おい、ウツロ。またヘンな
「うるさい、アクタ。バカはお前だろ? パッパラパーの兄貴め!」
現実は現実だ、しかたがない。
でも、悪くはない現実もある。
兄弟だった――
いいじゃないか、それはそれで。
二人はそんなことを思いながら、
「兄弟」は涙を流しながら、しかし笑顔でじゃれあっている。
いいねえ、なんだか――
目の前の楽しそうなやり取りを見つめながら、南柾樹は
*
「雅っ、しっかりして!」
「
「雅……」
気づかう真田龍子の手を、星川雅は
(『第50話 あわれみ』へ続く)