「
「……!」
ウツロは
その
それがウツロには
「……ゴミ捨て場の、生ゴミの山の中に、捨てられてたんだとよ。それを
のどが
言葉どころか呼吸すらおぼつかない。
南柾樹の両目から、ほほを切り裂くような涙が落ちる。
「ケンカ、盗み、変態の相手……生きるためなら、なんでもやったさ。人殺しだってな……」
もはや思考すらあやふやになってくる。
俺はなんてことをしでかしたんだ。
この男の触れてはならない部分に、触れてしまったのだ。
気が遠くなる中、南柾樹は
はじめはまだ冷静だったが、話しているうちに自分の過去が
こうなったらもう、
「あるときそのじいさんが、その辺の不良どもにフクロにされてな。当然、俺は切れて、そいつらをぶっ殺してやるって、ケンカをしかけたのさ」
すでに彼は自動的にしゃべっているようだ。
「だけど
魔王桜――
彼も出会っていたのか。
いや、アルトラ使いだと
「俺はアルトラ使いになった。で、最初に何をしたと思う?」
ヘラヘラと薄笑いは激しくなる。
ウツロは目の前にいる少年が、
「俺を襲ったその連中を、八つ裂きにしたのさ……アルトラの力でな。頭も腕も
彼はやにわに口を
「でもな、肉の
南柾樹はしばらく、小刻みに震えていたが、少し落ち着いて、やっと
「そのゴミ捨て場ってのがな、
彼は体を
「ま、そんな過去があるわけ。だからな――」
涙をぬぐって、ウツロを見た。
「おまえみたいなやつを見てると、ムカつくんだよ。世界で一番、自分がかわいそうだなんて思ってるやつ。そういうやつって、ほんとは自分がかわいくて、しかたねえんだ」
何も言い返せなかった。
南柾樹は
「わかる?
彼はにわかに両手を
そのまま馬乗りになって、その首を締め上げる。
「苦しい……苦しい……俺は、呪われてる……バケモノだ、俺は……」
ウツロは激しく
自分のひとりよがりで、俺はいったい、何人の人間を傷つけてきたのだろう?
そんなつもりじゃなかったんだ。
でも、俺にそんなことを言う資格など、ない。
ごめん、ごめん……
真田さん、柾樹……
「なんで、泣くんだよ……?」
ウツロがその悲痛な表情で流した涙に、南柾樹はわれに返って、両手の力を抜いた。
「バカにしやがって、あわれんでるだろ?」
ウツロは
しかし
こんなやつにわかってたまるか、俺の苦しみが――
「そんな目で、俺を、見るなよ……」
あまりにも
南柾樹は自分の
だからこそウツロを否定することは、ほかならない、自分自身を否定してしまうことになる。
その事実が彼には
ゆっくりと、その手を放す。
「……わりい」
ウツロの
南柾樹も同様だ。
二人は言葉にこそ出さないけれど、お
「これでわかっただろ? 俺は、おまえが思ってるとおりの存在さ。俺の存在は、間違ってるんだ」
南柾樹はよろよろと立ち上がって、おぼつかない
間違った存在――
彼は自分を
わかっている、南柾樹はわかっている、が――
それは
鏡に映したような二人の少年。
互いに憎み合い、傷つけ合わずにはいられない。
それはむしろ、互いのことを理解しすぎているがゆえの宿命だった。
人生なんてサーカスだ。
きっと見えないところで、誰かが誰かをゲラゲラと、
そんなものだ、人間なんて――
ウツロはそんなことを考えながら、なんだかばかばかしくなって、
(『第35話