朽木桜斎
現代ファンタジー異能バトル
2024年09月01日
公開日
155,998文字
連載中
「人間って、何だろう?」
十六歳の少年ウツロは、山奥の隠れ里でそんなことばかり考えていた。
彼は親に捨てられ、同じ境遇・年齢の少年アクタとともに、殺し屋・似嵐鏡月(にがらし きょうげつ)の手で育てられ、厳しくも楽しい日々を送っていた。
しかしある夜、謎の凶賊たちが里を襲い、似嵐鏡月とアクタは身を呈してウツロを逃がす。
だが彼は、この世とあの世の境に咲くという異界の支配者・魔王桜(まおうざくら)に出会い、「アルトラ」と呼ばれる異能力を植えつけられてしまう。
目を覚ましたウツロは、とある洋館風アパートの一室で、四人の少年少女と出会う。
心やさしい真田龍子(さなだ りょうこ)、気の強い星川雅(ほしかわ みやび)、気性の荒い南柾樹(みなみ まさき)、そして龍子の実弟で考え癖のある真田虎太郎(さなだ こたろう)。
彼らはみな「アルトラ使い」であり、ウツロはアルトラ使いを管理・監督する組織によって保護されていたのだ。
ウツロは彼らとの交流を通して、ときに救われ、ときに傷つき、自分の進むべき道を見出そうとする――
<作者から>
この小説には表現上、必要最低限の残酷描写・暴力描写・性描写・グロテスク描写などが含まれています。
細心の注意は払いますが、当該描写に拒否感を示される方は、閲覧に際し、じゅうぶんにご留意ください。
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第0話 召喚
「すばらしい! この、魔王桜の力さえあれば……」
BC(紀元前)399年、古代ギリシャ。
神殿を埋めつくす巨大な「桜の木」に向かい、白衣の巫女は金髪を振り乱し、両手を高く広げた。
「このディオティマが、全知全能に……オリュンポスの神々すら、蹴散らせる存在に……」
顔面を切り裂くように、口角がつり上がる。
一本の枝が触手よろしく忍び寄ってきて、巫女の額をぐさりと貫いた。
「知恵が、力が……わたしの中に、流れこんでくる……!」
「魔女」は笑いが止まらない。
「ふふっ、ふははははは!」
この女・ディオティマが、この物語の主人公・ウツロと出会うのは、このときから2000年以上経過したのちであった――